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SGH 東京平和研修を実施

2017.08.07

Super Global High School (SGH)
SGH東京平和研修報告

                       

SGH東京平和研修を実施しました

 

81日(水)~83日(金)の3日間にわたり、SGH東京平和研修を実施しました。GLコース・GJクラスから10名が参加した、SGH企画「夏季平和三研修」の第二弾です。

事前学習では、JICA(独立行政法人国際協力機構)、JANICNPO法人 国際協力NGOセンター)、難民支援協会について、さらに今回交流する渋谷教育学園渋谷中学高等学校との社会課題に関するディスカッションについて、テーマリサーチやディスカッションの練習など入念に繰り返しおこない研修に臨みました。

1日目午後からはJANICを訪問しました。その活動内容についてご説明いただいたのち、ワークショップを実施していただきました。ワークショップでは、ベトナムで破傷風により亡くなってしまう男の子の話を題材に、どうして亡くなってしまったのか、その原因はなぜ起こってしまったのかを追求していきました。問題群を社会的や経済的な原因などに分類しながら整理・分析していき、その後このようなことが起こらないようにするにはどうすれば良いのかということを、プロジェクト名をつけたうえでグループ毎ごとに考え、SDGsのどの目標を目指すか、誰にどのような活動をするのかなどを発表し、共有しました。夜の振り返りミーティングでは、上記プロジェクトの検討を再度したうえで、バージョンアップさせたプロジェクトを発表しあうディスカッションを行いました。1日目から世界の社会的課題について深く考え、議論することができました。

2日目は、まずJICA地球ひろばを訪問しました。SDGs仕様にリニューアルされた地球ひろばの見学をしたのち、ゴミ問題を改善し環境教育を推進するためバングラデシュに派遣されておられた元青年海外協力隊員の佐藤様から体験談をお聴きしました。バングラデシュの国民性、日常生活や習俗などを具体的に説明していただき、生徒たちはそれらを身近に感じることができたようで、非常に関心を持って質問などをしていました。

午後には、ネパールでコミュニティ開発ボランティアとして協同組合に関わる活動をされていた元青年海外協力隊員の伊藤様に、ナマズ池があるまちを観光客が来る魅力的な街にするためにどうすればいいのかをグループで考えるワークショップを実施していただきました。生徒たちはどのようなまちにしたら観光客が集まり、また環境のために良いのか、意見を出し合ってまちをつくっていきました。それぞれの発表を聴きながらわかったことは、各々が自分たちのまちづくりを第一に考えた結果、それがとなりまちにとっては良くないことをもたらしてしまったということでした。自分たちの地域だけに目を向けるのではなくて、都市間の共生を意識することの重要性を学ぶことになったのでした。伊藤様からは、映画『ダーウィンの悪夢』の東アフリカのビクトリア湖に繁殖した巨大魚ナイルパーチの例からもご説明していただきました。いきいきとグループワークに取り組んだ生徒たちも、深く考えこんでいるようでした。

夕方からは、認定NPO法人難民支援協会(JAR)の田村様にお越しいただき、日本における難民受け入れの状況やJARの活動紹介を中心に1時間半にわたってご講演いただきました。多くの質問にも丁寧にお答えいただき、途中からはともに考えるディスカッションのようになりました。数々の具体的事例をあげていただきながら、祖国を追われた社会的弱者である難民の窮状と受け入れの際に求めるハードルの高さの問題や、マイノリティーがマジョリティーを変えていくことの難しさなど、移民制度システムのあり方や日本の移民受け入れスタンスについて知り、考えることができました。多文化共生社会には未だなり得ていない現在の日本において、現役大人世代の次に社会を担う生徒たちは、自分たちの責任の重さを痛感したようでした。

夜の振り返りミーティングでは、特に学びの多かったこの1日でそれぞれが考えたことを披露しあい、JICAでのワークショップの再検討をし、SDGsに関する改めての学習と発表、そしてJARの方の話を受けて自分たちにできることは何かを考え、研修後にどのようにして行動につなげていくのかという具体案について検討しました。

 3日目は、渋谷教育学園渋谷中学高等学校を訪問し、“Model G7 Summit 2017”と題してGender inequalityについて、英語ディスカッション・交流を行いました。

渋谷教育学園渋谷中学高等学校と本校に加え、渋谷教育学園幕張高等学校、雙葉高等学校、広尾学園高等学校、頌栄女子学院高等学校、桜蔭高等学校、洗足学園中学高等学校、かえつ有明中・高等学校、本郷高等学校、お茶の水女子大学附属高等学校の計11校が参加、30名以上の規模で実施しました。

グループに分かれて自己紹介と他己紹介のアイスブレイクののち、渋谷教育学園渋谷中学高等学校卒業生でハーバード大学入学予定生、東京大学生OG2名によるプレゼンテーションがありました。UNICEFとドイツ連邦政府が主催したJ7(ジュニアセブン)サミット2015の日本代表の活動で安倍晋三首相に面会し成果報告をしたことや、進路選択に関わって学んだことを日常生活に活かすこと、さらに、世界を知って日本に貢献したい強い決意などを語っていただき、生徒たちは食い入るように聴き入っていました。

その後いよいよ本格的に始まった今回の“Model G7 Summit 2017”は、昨年度より開かれ今年度が第二回目で、企画から運営まですべて渋谷高等学校の生徒が行っており、彼女たちのバイタリティーに驚きました。20175月イタリアで開催されたG7タオルミーナ・サミットの成果を受けて自分たち世代にもできることはないのかと考え、そのうちの不平等の撲滅にフォーカスして”Gender inequality”を今回のテーマにしたということでした。日本語も交えながらではありましたが英語ベースのディスカッションが始まると、帰国生が多くを占める参加者のなかで本校生徒の3年生は状況に対応しながら参加し、時には議論のイニシアティヴを取っていましたが、1年生はそのスピーチスピードについていけず、内容を聴き取ることに精一杯で、その雰囲気に圧倒され体がこわばる状況でした。しかし、自分なりのペースで努力し、各グループメンバーの温かいリードも手伝って徐々に議論に参加していくことができました。様々な小テーマについてのディスカッションを経て、”What can we do to change them? Do we even have to”(そのような不平等の現状を変えるために私たちは何ができるのだろうか?そもそも変える必要はあるのか?)という問いが立てられ、それについてグループでポスターを作成しプレゼンテーションすることになりました。各グループの個性が現れた発表となりましたが、英語での5分間のソリューション発表は全メンバーがプレゼンし、具体的な提言も出されました。

「自分がわからなかったら黙ってしまわないでわからないとハッキリ言うこと。変なプライドは捨てる。何より大事なことは、素直に学ぶこと」。今回、本校生徒にとっては日本のトップレベルの学校が集う英語によるディスカッションに参加したことで、成果以上に課題が多く見つかったかたちとなりました。しかし、このような場で真の多様性社会のあり方やグローバルリーダー像を改めて深く見つめることができたことや、多くの「失敗」を経験することで様々な気づきと、自己を向上させようとする強い意志が芽生えたようでもありました。

 原宿の雑踏にもまれながら帰路につき3日間の研修を終えましたが、社会課題について直接お話を聞いて知り、そしてそれに向き合い解決策を考えていく。さらに、同世代の人たちとの共同作業を通して他者理解・自己理解を深めていき、身近なことから実践していく。愚直に、地道にそれらを繰り返していくことによってしか、その先の理想的な未来は到来しないのかもしれない。もちろん、その未来での主役は彼ら彼女たち。そう信じて本校SGH事業を進めていきたいと思います。