教員紹介
‐TEACHER‐
沼田 あや子教授
- 担当科目
- 「SEL(社会性と情動の学習)の実践的アプローチの現状と課題」、「臨床教育の理論と方法」、「教育実践高度化演習」、「教職専門研修」他
教師という仕事のやりがいとは?
学ぶという営みを通して、子どもに幸福感をもってもらえることだと思います。子どもたちの記憶には断片として残るくらいの、瞬間的な幸せであっても、それは彼らの人生を支えていきます。私がスクールカウンセラーをやっていた時に、授業を通して心が元気になっていく子どもたちを見てきました。勉強が苦手で生活態度が悪いと見られていた中学生が、ある数学の先生だけは好きと言うので、理由を聞くと、「わからないことを教えてくれるから」と言いました。わからないことがわかるようになるということは、彼らの心が不安から自由になることなのです。現代の教師は多くの業務を求められていますが、「わからないことを教えてあげる」こと、その価値はもっと評価されて良いと思います。
担当科目を受講することで、どのような力が身につくのか?
子どもたちを、目標に向かって仕上げていく対象ではなく、一つひとつの「いのち」として見る視点を身につけてほしいと思います。私たちの身体は唯一無二なのですから、物事のとらえかた、心が向かう方向、表現のしかたもひとり一人違います。どう違うのか?これらの理解には心理学の知見を使います。科学的な視点を用いると現象を整理して考えることができます。そして、経験を意味づけながら紡ぐナラティヴ(物語)もひとり一人違います。これは少し詩的な読み解きが必要です。ナラティヴの視点は人を相手にする仕事を下支えします。唯一無二のその子のいのちがどんなものなのか、見つめる練習をしましょう。日々の業務に追われていると忘れがちになる視点ですが、「いのち」として見ると、教師の気持ちも楽になると思っています。
教職研究科(教職大学院)を目指す方へメッセージ
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- ■学部生へ
- 教師を志す皆さんは、思春期から青年期にさしかかった年齢かと思います。まだ成長の途中にあるのに、教壇に立つと「先生」として振る舞わなければなりません。弱みを見せてはいけないと思うこともあるでしょう。しかし、人を相手にする仕事は、わからないことは「わからない」、不安なことは「不安です」と言えることが大切です。大学院は、「わからない」ことが褒められる不思議な場所です。わからないと認めることから探求が生まれるからです。問いを深く探求した経験は、どんな環境に置かれても変わらない自分の芯をつくるような気がします。それが大学院の良さです。共に学ぶ仲間に、堂々と弱音を吐き、教員を頼りながら、一緒に学問しましょう。
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- ■現職教員の方へ
- すでに経験を積んだ皆さんは、どのようなキャリア発達のステージにいるのでしょうか。一般的には、20代は専門性を高め新しいものを生み出す時期、30代~40代は現状維持かキャリア変更を考える時期、50代以上は技術・関心を広げ後進に助言する時期と言われています。前に進む、技術を上げる、やれることが増える、という右肩上がりの変化ばかりが発達ではなく、違和感や不全感で立ち止まってしまうのも発達のステップです。大学院で見聞きすることは、経験として知っていると感じることが多いかもしれません。しかし、経験があるだけでは宝の持ち腐れです。これまで積んできた経験を整理して、分析して、新しい理論を生み出すことを目指しましょう。そのためには、自分を開き、本や仲間から学び、自分が変容していくことを楽しんでください。