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2025.06.06
ゲスト講義実施報告(筑摩書房 取締役編集局長 伊藤大五郎様)
「プロフェッショナル・ワークショップ(メディア)」(担当教員:白戸 圭一先生)の授業にて筑摩書房 取締役編集局長の伊藤大五郎様をお招きし、講義をしていただきました。

伊藤氏は講義冒頭で、出版業界の現状について説明しました。出版物の売上高のピークは1990年代半ばであり、紙の雑誌の販売数が近年激減している一方、コミックを中心とする電子書籍の売り上げが急増しているために、2010年代に入って以降の出版物の総売り上げ額はほぼ横ばい状態であるといいます。

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今回の授業は公開授業としたため、プロフェッショナルワークショップ(メディア)の受講生のみならず、出版業界に関心のある受講生外の学生らも聴講しました。
伊藤氏の講演に先立ち、本授業担当者の白戸から受講生に対し、ゲストの伊藤氏がこれまでに白戸が執筆した書籍の編集を3度にわたって担当した優れたベテランの書籍編集者であることを紹介しました。
伊藤氏は講義冒頭で、出版業界の現状について説明しました。出版物の売上高のピークは1990年代半ばであり、紙の雑誌の販売数が近年激減している一方、コミックを中心とする電子書籍の売り上げが急増しているために、2010年代に入って以降の出版物の総売り上げ額はほぼ横ばい状態であるといいます。
続いて伊藤氏は編集者の仕事について、自らが編集したいくつかの書籍を例に挙げながら、丹念に説明いただきました。とりわけ、どのような書籍を作りたいかのテーマ設定と、筆者の発掘が重要であるとの説明は興味深く、学生らは熱心にノートを取っていました。
実際の編集作業で使用した書籍の初校ゲラを示しながら、編集者が筆者とのやり取りを通して本を作り上げていく過程を紹介し、学生たちに編集や校正の仕事の面白さを伝えました。
講義の最後に伊藤氏は、出版社はテレビ局や新聞社に比べて規模が小さく、新卒者の採用が少ないことから、就職産業や大学のキャリアセンターを利用した一般的な就職活動では入社が難しく、個人的人脈の開拓や中途入社を前提とすることが大切であると述べました。
「編集者に必要なことは、よく本を読んでいることだけ。本を作りたいという思いがあれば、新卒で出版社に入るのではなく、むしろ様々な社会人としての経験があった方がプラスになることが多い」という伊藤氏の話は、学生たちに強い印象を残したと思われます。
2025.06.05
ゲスト講義実施報告(国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所 二瓶 直樹様)
「Introduction to the United Nations 」(担当教員:石川 幸子先生)の授業にて、国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所で戦略パートナーシップ・アドバイザーとして現在ウクライナ支援を担当している二瓶 直樹さんを講師にお招きして、以下のように3部構成の授業を行って頂いた。

1. UNDPの役割と機能
2.ウクライナ支援
3. 国際機関で働くには
二瓶氏自らのキャリアパスを説明しながら、国際機関で働くための準備と心構えについて学生に話をしていただいた。

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通常UN機関の長を事務局長(Director General)と呼ぶのに対し、UNDPのヘッドだけは、Administratorと呼ばれるのは何故かという問いは興味深かった。これは、第2次世界大戦後のマーシャルプランのAdministratorがそのままUNDPの初代のヘッドとなった際に、そのままAdministratorという称号を使用することを決めたからという経緯であった。UNDPは、貧困削減と不平等の解消、ガバナンス、レジリエンス、環境、エネルギー、ジェンダー平等の6分野に焦点を絞って活動している。
現在、同一国で活動する複数の国際機関の調整役を務めるResident Coordinator Officeを運営している。学生からは、国際機関間の活動は重複しているのではないか、また、これに伴って国際機関の統合が進むのではないかとの質問が出た。
2.ウクライナ支援
ウクライナとロシアの戦争は、①現在進行中で死傷者が増え続けており、②地雷とUXOによる土地の汚染が問題となっており、③人々の強制移動が膠着状態にあるという特徴がある。各国の支援の中でも2024年末にバイデン政権は多額の援助資金を出しているが、これは、トランプ政権になった後には何が起こるか分からないという前提に基づいている。
UNDPは、被害状況の評価と、復旧復興を担当している。ウクライナは、農業とテクノロジーの分野で大きなポテンシャルを持っており、それらを復興に役立てることが重要となると説明があった。
3. 国際機関で働くには
二瓶氏自らのキャリアパスを説明しながら、国際機関で働くための準備と心構えについて学生に話をしていただいた。
2025.06.03
ゲスト講義実施報告「ウクライナ情勢と日本にとっての意味」(元外務省・ウクライナ特命全権大使 松田邦紀様)
「日本外交論 」(担当教員:山本 忠通 客員教授)の授業にて、元外務省・ウクライナ特命全権大使の松田 邦紀様をゲスト講師としてお招きし、「ウクライナ情勢と日本にとっての意味」というテーマでご講演いただきました。



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講義では、ウクライナ戦争の本質、戦争の全体像、戦況、停戦・和平に向けた外交努力、ウクライナの内政、日本にとってのこの戦争の意味、といった内容についてお話いただきました。
2024年までウクライナで外交の最前線に立たれていた松田様のお話は大変分かりやすく、リアルなウクライナの状況を解説いただきました。
国際関係学を学ぶ学生達にとって、専門家の方から実際のお話を伺うことができた今回の講義は大変貴重な学びの機会となりました。
2025.05.30

国連の役割と国際協力の課題として、国際情勢の変化やドナー各国内の問題が高まる傾向のなかで、多国間主義(マルチラテラリズム)が危機的な状況にあるとの認識が披露されました。国連80周年という節目の年を迎えるところ、国際協力が国際社会から厳しい視線をうける現状が指摘されました。


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ゲスト講義実施報告(国際連合開発計画 駐日代表 ハリアジッチ秀子様)
「国際連合入門」(担当教員:石川幸子先生)の授業にて、国際連合開発計画 駐日代表のハリアジッチ秀子様をゲスト講師としてお招きし講義を行っていただきました。
他方で、ウクライナ戦争や気候変動、またアフガニスタンやミャンマーでの支援事例を紹介しながら、国連開発計画が提唱してきた「人間の安全保障」を追求するうえで、国連の活動は依然として重要な役割を担っていることが説明されました。
また国連開発計画が取り組むさまざまな課題――SDGs(持続可能な開発目標)、紛争、分断化する社会、緊急人道支援、気候変動など――とともに、近年の課題であるAIとデジタルガバナンスについても、途上国における普及とその含意についての議論も紹介されました。
最後に、学生からの質問にこたえるかたちで、国連でのキャリアについて、国際貢献の方法やキャリア形成が多様化している実態が紹介され、そのうえで若い世代への期待とともに示唆に富むアドバイスをいただきました。
2025.05.30
ゲスト講義実施報告(共同通信社 福留佳純様)
「プロフェッショナルワークショップ(メディア)」(担当教員:白戸圭一先生)の授業にて、共同通信社の福留 佳純様をゲスト講師としてお招きし、講義を行っていただきました。

福留さんは通信社の役割や仕事の流れ、一日の過ごし方などについて、パワーポイントを使用しながら説明いただきました。とりわけ、2024年元日に発生した能登半島沖地震の被災地に地震発生直後にカメラマンとして取材に入った経験について、自身が撮影した多数の写真を見せながら詳細に語っていただきました。

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授業の冒頭、本授業担当者の白戸から受講生に対し、ゲストの福留さんが本学部を2022年3月に卒業後、共同通信社に就職し、現在はカメラマンとして勤務していることを説明。福留さんには仕事の魅力や記者の日常、就職活動体験などについて語ってもらいました。
また、在学中の就職活動に関しては、志望動機や入社後に取り組みたい業務等について考えを深めるよう、配布資料を使いながら受講生たちにアドバイスしてもらいました。
福留さんは通信社の役割や仕事の流れ、一日の過ごし方などについて、パワーポイントを使用しながら説明いただきました。とりわけ、2024年元日に発生した能登半島沖地震の被災地に地震発生直後にカメラマンとして取材に入った経験について、自身が撮影した多数の写真を見せながら詳細に語っていただきました。
学生たちから福留さんには、被災地の住民取材の経験などについて多数の質問が寄せられました。福留さんは、能登半島沖地震で家族を亡くした人々へカメラを向けることの難しさ等について語りつつ、報道には「伝えること」だけでなく「事実の記録と継承」という役割があることなどを一つ一つ丁寧に説明いただきました。
そのうえで「震災の取材では、被害者に感情移入してもらい泣きしそうになる時もあるが、そういう時にこそ強い職業意識に徹して冷静に事実を記録することがジャーナリストの役割だと思う」と後輩にあたる学生たちに語り掛けました。
福留さんの被災地取材の体験を織り込んだ話には強い説得力があり、学生たちは長時間にわたって熱心に質問をしていました。
2025.05.22


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ゲスト講義実施報告(前UNHCR駐日事務所代表 Dirk Hebecker様)
「Introduction to the United Nations」(担当教員:石川幸子先生)の授業にて、前UNHCR駐日事務所代表で、現在は、UNHCRを定年退職して日本国内で複数の大学の講師として活動しているMr. Dirk Hebeckerをゲスト講師として招聘し、World in Turmoil – Record Displacement (How today’s world deals with the global refugee crisis)というテーマで講義を行っていただいた。
まず、現在の難民・IDP問題について話を進める前に、直近の課題として2期目のトランプ大統領の政策によって既に多くのグローバル課題が負のインパクトを受けているとの指摘があった。特に、Hebecker氏の専門である難民及び移民問題については、難民の受け入れ数が落ち込んでいることに加え、移民についても本国への送還を行っているなど、基本的人権を軽んずる行為が大統領令の下で行われていることを危惧する発言があった。
また、USAIDの廃止措置、及び国際機関への拠出金の減額措置によって、世界中の人道支援活動が予算削減の影響を受けて、十分な支援ができない状況に陥っているとの指摘があった。米国がSecurity, Climate, Inequality, health, Radicalizationという世界が直面する課題に対して、後ろ向きの姿勢を取り始めたことで(WHOやパリ協定からの離脱等々)、また、貿易関税の上乗せなど、世界の趨勢に逆行する政策のために、世界中が政治的、経済的に混乱に陥っていると述べた。
このように、現在の世界を俯瞰する作業を行った後、今回のテーマであるDisplacementについては、戦争、国内紛争、自然災害、環境破壊、貧困など、様々な要因によって引き起こされることが説明され、現在、難民と国内避難民(IDP)を併せて2024年6月時点で難民の数は1億2千万人となり、世界で13番目に多い人口の国と同数だとの指摘があった。
これは、世界人口の69人に一人が難民であるということを示している。難民は、米国や欧州などに押し寄せるというイメージがあるが、現実は75%が途上国や中進国で庇護されており、国際的支援は難民の肥後国に対しても急務である。または難民には国際機関からの支援の手が差し伸べられるが、IDPについては、未だ国内で政府の統制下にあるので、国際機関が支援できない場合も多く、彼らがおかれた状況は、押しなべて難民よりも悲惨であるとのこと。
講義後、学生たちからは、トランプ政権下でのDisplacementの行方、また、ソーシャルメディアによる情報操作等について多くの質問があった。
2025.05.21


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ゲスト講義実施報告(JICA海外協力隊 古野公大様)
「専門演習」(担当教員:嶋田晴行先生)の授業にて、JICA海外協力隊で少林寺拳法指導のため東チモールへ派遣され、本年4月に帰国されたばかりの古野公大氏に、協力隊隊員としての現地での活動の様子に加え、ご自身のこれまでのキャリア形成についてお話しいただいた。
そもそも教育分野に高い関心を有していたことから、教育大を卒業後に小学校の教員を経験され、今後は民間企業へ就職される予定の古野氏の経歴と経験は、協力隊などの国際協力分野の知見を深めることに留まらず、活発な質疑応答を通してもゼミ生の就活やキャリア形成にとって参考となるものであった。
2025.05.21
ゲスト講義実施報告(AI System Research Co. Ltd, Japan Leong Kuan Yew様)
「応用情報処理」(担当教員:植松大輝先生)の授業にて、AI System Research Co. Ltd, JapanのLeong Kuan Yew様をゲスト講師としてお招きし、ご講演いただきました。
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応用情報処理では学部生が卒業論文に必要なコンピュータスキルを習得することを目的としています。これらのツールは日々進歩しており、ただ単に使い方を覚える事よりも、新しい機能を独力で学ぶ力を養うことがより重要になります。
昨今のChatGPTに代表されるような生成系AI(人工知能)をベースとしたツールの発達と普及により、WordやExcelの使用法さえもAIツールを通じて飛躍的に効果的な学習が可能になりつつあります。
こういった現状を踏まえ、京都市内の日系企業にAIの専門家として勤務するDr. Leon Kuan Yew氏を招聘し、「AIとは何か」という基礎から「AIツールの効果的な使い方」、最新のAIツールの開発事情などをテーマに講義して頂きました。
(ゲストは英語話者であるため、担当教員が適宜通訳を担いました)
2025.05.16


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ゲスト講義実施報告(元キャリア外交官 二階堂 幸弘様)
「プロフェッショナルワークショップ」(担当教員:石川幸子先生)の授業にて、元キャリア外交官の二階堂幸弘様をゲスト講師としてお招きし講義を行っていただきました。
講義の冒頭では、受講生二人でペアを組んで英語で自己紹介を行った後、クラス全員に向けて自分が組んだペアを英語で紹介する(その際には必ず相手を褒めること)というエクササイズを行った。終了後、「外交も結局は人と人とのつながり」であり、自己紹介には聴く相手が聞きたいと思う内容を盛り込むことが重要であり、相手に質問することはコミュニケーションの機会を提供するものであるという二階堂氏ご自身の経験に基づいたアドバイスがあった。
次に、ご自身の外交官人生における仕事の内容や勤務地のお話を中心に自己紹介があった後、日本外交の目的(日本の国益を守って高める、及び世界平和に貢献する)と日本外交の最近の特徴(日本及び日本文化を世界に紹介すること、国民のための国民による外交など)について説明があった。
二階堂氏が考える外交とは、一言でいえばDiplomacy for the people by the peopleである。日本文化については、外国の日本に対する関心の変化に伴って、対象が車や家電といった物から文化を経て心や自然に変化しており、行動様態も鑑賞から参加・体験型に変化しているとの指摘があった。これらの変化に対して、日本側では対応するメカニズムと人材の不足が課題となっているとのこと。最近では、日本企業支援も外務省の仕事となっており、以前はご法度であった特定の企業支援も現在は積極的に行っている。また、外交の仕事には日本国内のパートナーとの協力関係が必須であり、JICA, 国際交流基金、JETRO, JNTO等との連携協力によって幅広い分野に対応しているとの説明があった。
将来、外交官をはじめとする国際社会での活躍の場を模索している学生のためにも、在外公館の種類と業務内容、大使館の組織、外務省職員の待遇と採用など、学生たちが就職との関係で知りたい内容について、給料の話題等も含めてざっくばらんな話があった。
最後に、二階堂氏ご自身の経験から、どんな相手もリスペクトし、ユーモアのセンスと笑顔を持ち、日本と日本文化を知ることが重要であると学生たちにアドバイスを行った。また、長期的視野に立って、将来、修士号を取得することを勧めるとのことであった。Q&Aセッションでも学生たちからは多くの質問が投げかけられ、外務省職員を目指す学生にとっては、多くの情報とモチベーションが得られる授業であった。
2025.05.15



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ゲスト講義実施報告(編集者・ライター 早川タダノリ様)
「日本文化・社会論」(担当教員:山口智美先生)の授業にて、編集者・ライターの早川タダノリ様をゲスト講師としてお招きし、講義を行っていただきました。
テーマは「『いただきます』と日本文化」。
冒頭では「日本人は清潔好き」「日本人は礼儀正しい」といった日本文化にまつわる定型的な言説が取り上げられました。これらはいわゆる「日本文化論」としてさまざまな書籍や記事で語られることが多いのですが、早川先生はそれらが「日本」や「日本人」という広範な主語で語られる点(いわゆる「主語がデカイ」問題)、そして多くが明確な根拠を欠いていることを指摘されました。
続いて、そうした日本文化論の代表的な事例として、誰もが知り「食育」などの文脈でもしばしば言及される「いただきます」の慣習が取り上げられました。
「いただきます」の起源については、縄文時代にまでさかのぼるとする説などさまざまな言説が存在しますが、歴史的な研究に基づいて検証すると、実際にこの表現が全国的に普及したのは戦後のことだということです。この事例を通じて、早川先生は「創られた伝統」がいかにして生まれ、そこにどのような論者のメッセージや価値観が込められるのかを分析しました。ただ単に「伝統は作られたものだ」と指摘するだけでは不十分であり、それがどのような意図や主張とともに流布されているのかを読み解く姿勢が重要であると結論づけられました。
日常的で誰もが親しんでいる「いただきます」という慣習を題材としながら、日本文化論が陥りがちな一般化の危うさや、伝統とされるものが構築されたものである事例など、具体的かつ丁寧に考察する本講義は、学生にとっても非常にわかりやすく、これまでの自身の思い込みや受け取ってきた「常識」を見直す契機となる、大変刺激的な学びの機会となりました。