スタートアップ企業の投資取引急増と診断薬の特許増加の関係を明らかに

2018.04.19 NEWS

スタートアップ企業の投資取引急増と診断薬の特許増加の関係を明らかに

医薬品産業にもクローズド・イノベーションからオープン・イノベーションへの新潮流

 立命館大学テクノロジー・マネジメント研究科・児玉耕太准教授の研究室などの研究チームは、近年スタートアップ企業に対する投資取引が急増しており、その投資により、特に診断薬に関する関連技術の特許が増加する傾向を確認しました。この成果は、Drug Discovery Todayで発表されました。

 新薬の開発は成功確率が低く、長期にわたる投資が必要です。特に最近では、これまで創薬の中心であった低分子化合物は開発され尽くしたといわれており、新薬の創出は困難になってきました。そのような現状の中で、各製薬会社は新たな創薬の種を大学やバイオベンチャー(スタートアップ)に求めていると言われています。

 従来の医薬品は、たとえば胃がん、肺がんなど臓器毎に診断され、その疾患に対する薬剤を処方する非効率的な手法が一般的でした。しかし、昨今の科学の進歩に伴い、患者個人の遺伝子や分子レベルでの診断が可能になると同時に、病気の原因となる分子が同定され、特効薬が開発されるようになりました。その結果、患者の血液、組織、尿などを診断薬によって適切に診断し、それぞれの発症機序に基づく治療薬を処方する個別化医療、精密化医療が誕生しました。これにより製薬会社は研究開発費を削減でき、医者は各患者に対して最適な薬物治療が行えるようになり、結果として医療費の削減に繋がることが期待できます。

 一方で、個別化医療医薬品の開発には、診断薬と治療薬を同時に開発する必要があるため、外部とのコラボレーションやオープン・イノベーションがこれまで以上に必要になると言われています。しかしながら、どのような社外取引が重要かについての研究はこれまでなされていませんでした。児玉准教授、テクノロジー・マネジメント研究科博士後期課程・牧野智宏さんらは、企業を中心とした社外取引に関するデータベースを用いて、この分野の長期間にわたる全世界の戦略的取引(提携、買収、投資)について調査し、他の先進的医薬品開発と比較することで、個別化医療医薬品の開発に特徴的な外部取引を調査しました。

 その結果、近年スタートアップ企業に対する投資取引が急増しており、その投資により、特に診断薬に関する関連技術の特許が増加する傾向が確認されました。さらに関連スタートアップ企業144 社の社外提携(R&D ライセンス,マーケットライセンス)、買収、投資、特許、論文を対象に相関分析、重回帰分析を実施した結果、R&D ライセンス契約の数が投資の指標になっていることが示唆されました。従来、特許情報が投資家の投資指標になるといわれてきましたが、個別化医療医薬品開発においては投資家が積極的にスタートアップ企業の知的財産形成を加速させている可能性が示唆されました。今後、本業界は投資家とスタートアップ企業の関係が重要な鍵を握ると予想されます。

発表論文 “Strategic R&D transactions in personalized drug development”
著者:児玉耕太(テクノロジー・マネジメント研究科・准教授)、牧野智宏(テクノロジー・マネジメント研究科・博士後期課程)、林 永周(講師、経営学部)

児玉耕太准教授
児玉耕太准教授
牧野智宏さん
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