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2022.07.12

【レポート】ウェンディ・パールマン教授(ノースウェスタン大学)のご来学とイベント報告

池端蕗子(衣笠総合研究機構 准教授)

 このたび(2022年6月)、米国のノースウェスタン大学から、ウェンディ・パールマン先生が来学なさいました。その様子をお伝えいたします。

 パールマン先生は、ノースウェスタン大学政治学部の教授であり、パレスチナやシリアの人々の社会運動について綿密な現地調査、インタビュー調査に基づく研究を進めていらっしゃいます。

 以前からご希望なさっていた来日がコロナ禍により阻まれていましたが、このたび立命館大学アジア・日本研究所の招聘により渡航が叶いました。本企画では、立命館大学国際関係学部及び中東イスラーム研究センター(CMEIS)の末近浩太教授が受入教員を務めました。そしてパールマン先生と同じ歴史的シリアを研究対象としてきた私(池端)が、企画責任者を務めさせていただきました。パールマン先生の京都滞在中には毎日のように同行させていただき、道中ではたくさんの貴重なお話を聴かせていただく機会に恵まれました。

 パールマン先生には、まず衣笠キャンパスに訪問していただき、招聘元の小杉泰アジア・日本研究所長から、ご滞在中の日程についてお話をいただきました。中東政治は小杉先生のご専門でもあるので、話がとても弾みました。

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ディスカッションをするパールマン教授(左)と小杉泰教授(右)

 朱雀キャンパスにて、徳田昭雄副総長を表敬訪問された際には、パールマン先生の現在のご専門であるシリア難民研究の話題から、アジア地域における移民・難民・ディアスポラ全般に話題が広がり、さまざまなディスカッションが行われました。そして今後もノースウェスタン大学と立命館大学とが積極的に交流事業を進めていくことについて、改めて約束されました。

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徳田昭雄副総長(右)を訪問するパールマン教授

 パールマン先生には立命館大学のキャンパス訪問をしていただき、さまざまな先生方と交流を行っていただきました。

 大阪いばらきキャンパスでは、政策科学部の森裕之教授、吉田友彦教授、フィトリオ・アシャルディオノ助教と面会し、これまでのノースウェスタン大学との交流を含めて、国際的な研究交流・成果発信のあり方など、さまざまなお話をいただきました。

 衣笠キャンパスでは、末近浩太先生を含め国際関係学部の先生方の研究室を訪問していただき、限られた時間の中でしたが、研究内容について熱いディスカッションが行われました。

 びわこ・くさつキャンパスでは、立命館大学と地域の連携のあり方について紹介いただいた後、理系分野の先生方からも刺激的な研究紹介をいただきました。

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茨木キャンパスを訪問するパールマン教授

 アジア・日本研究所では、この度のご来日に合わせて、2つのイベントを開催しました。
その1つ目が、パールマン先生のご著書『シリア:震える橋を渡って』(2019年、岩波書店)のブックローンチイベントでした(6月9日開催)(https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/news/article.html/?id=294
)。本書はシリア難民の方へ行ったインタビューからたくさんの声を拾い上げたもので、2019年には日本語訳も出版されました。参加者からはパールマン先生のインタビュー調査の手法などについて、たくさんの質問が集まり、とても貴重な質疑応答となりました。司会の私にとっても、非常に有意義な会となりました。

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ハイブリッド形式で行われたブックローンチの様子

 2つ目のイベントは、6月12日に開催された国際シンポジウム"Syrian Refugees in Their Calamities, Survival, and Future Lives: A Japan Roundtable"でした(https://www.ritsumei.ac.jp/research/aji/news/article.html/?id=295)。パールマン先生から基調講演をしていただいた後、5名の若手研究者が研究発表を行いました。私自身の発表も含めて、若手研究者の発表全てに対してパールマン先生から丁寧なコメントをいただき、これからの研究の指針となるエンカレッジングなご指摘をいただくことができました。ディスカッサントとしてお招きした中東研究者の大庭竜太先生(獨協医科大学)、吉川卓郎先生(立命館アジア・太平洋大学)、錦田愛子先生(慶應大学)、溝渕正季先生(広島大学)からも非常に有意義なコメントをいただき、盛会となりました。

 パールマン先生は初めてのご来日とのことで、京都市内の観光にもお連れいたしました。三十三間堂、清水寺、南禅寺、平安神宮などに訪問し、その合間にも研究やご自身の中東経験についてお話をたくさん伺うことができました。パールマン先生が日頃研究をどのように進めていらっしゃるのか、ノースウェスタン大学で担当していらっしゃる授業内容はどのようなものか、統計調査に基づく量的研究がますます主流となっているアメリカで質的調査に基づく政治研究を続ける意義や、若手研究者のキャリアについてなど、こちらが質問することに何でも気さくにお話しくださり、私自身の研究の話を聞いていただくこともでき、とても貴重で楽しい時間となりました。

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京都散策するパールマン教授(中央)。Dr.桐原翠(右)とDr.望月葵(左)とともに一枚。

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パールマン教授と筆者(池端:右)

(2022.7.4記)