教員紹介
‐TEACHER‐
春日井 敏之教授
- 担当科目
- 「臨床教育の理論と方法」、「実践教育特殊講義」、「教育実践高度化演習」、「教職専門研修」他
教師という仕事のやりがいとは?
教師という仕事は、広義には「対人援助職」といえます。これは、他者を助けるという営みであり、学校教育だけではなく、福祉、心理、医療、司法、家庭、地域など、様々な分野・領域で他者を助ける仕事はあります。同時に対人援助という仕事は、他者を助けながら助けられている仕事でもあります。こうした双方向の関係が形成されたときに、やりがいを感じ、援助している他者からもエネルギーをもらいながら、仕事が継続できるのではないでしょうか。
そのなかで、学校教育における教師の仕事は、「かけがえのない未熟さ」を抱えた発展途上の子どもたちと関わる点に大きな特徴があります。一方では、教師も様々な未熟さを抱えた発展途上の存在です。教師が良かれと思って設定する援助の枠と、子どもや保護者が求める援助の枠には、しばしばズレが生じます。この点を真摯に自覚しながら、お互いにわかり合おうとする努力を続けていくことが、子どもと向き合うことであり、深いやりがいにつながっていくと考えています。
担当科目を受講することで、どのような力が身につくのか?
臨床教育学は、1980年代から1990年代にかけて、いじめ、不登校、校内暴力、学級崩壊、少年事件など、子どもをめぐる諸問題が噴出し、学校や家庭における新たな対応が求められる状況のなかで、新しい学問として誕生しました。教育人間学と臨床心理学を母体としながら、教育学と福祉学、社会学、発達諸科学などとの横断領域に実践的な課題解決の道筋を求めてきました。
私は、教育人間学、臨床心理学に加えて、教育現場に立脚した当事者たちの手による「実践教育学」が、臨床教育学の一つの母体となっていく必要があるのではないかと考えています。それが「教育現場に立脚し、実践や経験を重ね、経験知としてその意味を問い直すなかから、当事者が協働して臨床教育学を構築していくことができないのか」という問いにつながっています。
受講生のみなさん方には、①学校内外における教育をめぐる諸課題の本質に迫る理論的研究、②学校内外における教育をめぐる諸課題の解決を図るための実践的研究、③学校、家庭、地域などにおける援助を担う当事者としての教員、保護者、青年の主体形成・自己変容に関する当事者研究、といった視点から「教育実践探究論文」に取り組んでいただけることを期待しています。
教職研究科(教職大学院)を目指す方へメッセージ
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- ■学部生へ
- これから教職を目指す若い学部生のみなさん方にとって、青年期における挫折や失敗などは、長い人生から見れば「誤差」の範囲にすぎません。現役で採用試験に合格できた人もいますが、合格できなかった人もいるでしょう。私は、その差がものすごく大きなものであるとは考えていません。より大切なことは、どのような環境にあっても学び続けるという姿勢を持ち続けることであり、挫折や失敗も含めて、自身の体験を意味あるものとしていくことではないでしょうか。
「子どもを理解する」とはどのようなことなのでしょうか。「問題を解決する」とはどのようなことなのでしょうか。私自身は、こうした問いにこだわってきました。こうした本質的な問いを大切にしようとしたときに、教育現場で学ぶのか、教職研究科で学ぶのかの選択に、大きな差は無いと考えています。いずれの学部生のみなさんにとっても、教職研究科は、深い意味を探究する教育・実践・研究の場とチームを提供したいと考えています。
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- ■現職教員の方へ
- 学校現場で、「時速100キロで走りながら、車間距離は50センチ」といった超多忙な日々を過ごされている方は、少なくないのではないでしょうか。新しい課題も増えるなかで、目の前の仕事に追われ、子ども達とじっくり味わったり振り返ったり、実践を意味付けたりする間もないような状況があります。教職研究科では、現職教員の院生のみなさんには、学部の頃に学んだことや学び足りなかったことを深めるだけではなく、学校教育現場で培われてきた実践を対象化し、そこから理論化を図りながら、実践教育学を構築していく主体となっていただくことを期待しています。
例えば、次のような点を課題にしていただければと考えています。①「一回性の体験」である子どもとの出会いや実践のなかで、自分に大きな影響を与えたエピソードを辿り、どのような気づきや変化があったのか、体験の意味について経験知として明らかにしていく。②自分が困難を抱え失敗したような実践を、どのように凌ぎくぐってきたのか。そのとき誰に助けてもらい、何を得たり失ったりしたのかなどについて明らかにしていく。③困難だけではなく、子どもたちとの出会いや実践のなかで、楽しかったり、うれしかったり、励まされたりした双方向の体験をふり返り、そこには何が起きていたのか明らかにしていく。