
国際関係学部で多様な人々と出会い、専門家からキャリアについて話をきく機会を持てたことが、今の私に繋がっていると思います。
ウォルシュ(田中)佑依 さん
国連調整官事務所 タイ事務所(2011年度卒業)
2011年度に国際関係学部を卒業。総合商社で5年間勤務した後、NGOでのミャンマー駐在、在ミャンマー日本大使館での勤務を経て、イギリスの大学院で開発学修士号取得。国際開発NGO勤務を経て、2022年6月より国連調整官事務所(UNRCO, UN Resident Coordinator office) タイ事務所でコーディネーションオフィサーとして勤務中。
これまでのキャリアと現在のお仕事を選んだ理由を教えてください。
ウォルシュ高校生の時、研修旅行で訪れたベトナムで、物乞いをする子供に出会ったことがきっかけで、この業界に興味を持ち始めました。当時、私は将来何がしたいのかわからず、やりたいことが見つからないということが辛いと思っていました。しかし、物乞いをする子供に出会い、「目の前にいるこの子は、恐らく教育も満足に受けられておらず、そもそも選べる将来の選択肢が限りなく狭まれている」という事実に愕然とし、いかに自分が恵まれた環境にいたのかということを思い知らされました。同時に、努力や苦労もせず、今の環境に生まれた私ができること、やるべきことは何だろう?と考え始めたことがきっかけです。
その後、大学在学中に1年間休学し、ケニア、バングラデシュ、インドでのインターンやボランティアを経験し、新卒ではビジネスを通して途上国に関わりたいという想いで、三井物産株式会社に入社し5年間勤務しました。退職後はNGOに転職し、ケニア難民支援事業に従事した後、ミャンマーに移り、NGOや日本大使館にてODA(政府開発援助)業務を担当しました。
2019年よりイギリスのサセックス大学院に入学し、開発修士号を取得後、再度NGO勤務を経て、現在JPO(Junior Professional Officer)という制度で、国連調整官事務所にて勤務しています。
現在のお仕事について教えてください。
ウォルシュタイ・バンコクにあるUNRCO(国連調整官事務所)にて勤務しています。UNRCOは、国連事務総長の代理である常駐調整官の指揮のもと、数多くある国連機関が一丸となりより高い成果を発揮することを目指して様々な業務を行っています。タイのUNRCOでは、タイ国内の支援を行う21の国連機関の取り纏めや、タイの「持続可能な開発計画枠組み」の作成とその遂行にまつわる様々な業務、民間企業との連携、政府や市民団体との対話など、業務は多岐に及びます。私は、数多くある国連機関との連携や、タイ国内での国連の活動がどのようにジェンダー平等と女性のエンパワーメントに貢献しているかを調査・報告する業務などを行っています。
UNRCOでの業務の難しさは?と聞かれると、UNRCOはいわゆる「支援の現場」からは遠く、自分たちのしている業務が実際にどのように裨益者に貢献しているかが見えづらいという部分になるかと思います。一方で、数ある国連機関を取りまとめる立場にいることもあり、ハイレベルな会合が多くあります。私にとっては、今までメディアの中の世界だった国連の「現場」で働いている、そんなワクワク感が仕事をする上でのやりがいの一つとなっています。
仕事で役立っていると感じられる国際関係学部での学びや経験を教えてください。
ウォルシュ1回生時に基礎演習という少人数制のクラスで、3-4回生ではゼミでの活動を通じで多くのグループワークを経験しました。グループワークでは、一つのテーマに関しそれぞれ異なる考え方を持つチームメイトと一つの成果物を作り上げるという過程を多く経験し、仲間と熱い議論を戦わせたことは本当にいい思い出で今でもよく覚えています。仕事でも、一人で完結できる仕事はほぼなく、様々な方面とのコミュニケーションや同僚との議論を通じて一つの成果物を作り上げなくてはなりません。相手に不快な思いをさせずに、異なる意見を持つ人々それぞれの意図をくみ取りながら成果を出すというのは、仕事において必要不可欠な能力です。その礎となる体験を多く国際関係学部で積めたことはとても素晴らしい経験でした。
また、立命館大学には、留学プログラムや任意で受講できる語学の講座なども多くあり、私もメキシコでの5週間の語学プログラムに参加したほか、TOEFL講座も受講しました。私はもともと英語がそんなに得意ではなかったこともあり、TOEFL講座は本当に役に立ち、実際にスコアもかなり上がったことを覚えています。
また当時のノートや資料は、卒業後も大切に保管し何度も見返していたほど、役に立つものでした。就職活動の支援もとても手厚く、OB/OG名簿を利用して先輩のお話をたくさん聞かせていただいたり、キャリアセンターの方に何度も模擬面接の練習に付き合っていただいたりなど、大学の支援を多く利用させていただいたことが、就職活動で希望の仕事につけたことにつながったと思います。
卒業されて感じる国際関係学部の魅力は何だと思われますか。
ウォルシュ入学当時から世界の不平等をどうすれば解決できるのかということに興味がありましたが、卒業後のキャリアについては明確なイメージが持てていませんでした。そんな中、国際関係学部の教授には、途上国の現場で豊富な経験を積んできた方や、国連機関での勤務を経験されていた方などがおり、大学主催のキャリアセミナーでNGOに勤務をしているOGの講演を聞く機会があったこと等、それまでの自分には接点のなかった人々と出会い、話す機会を持てたことが、今の私に繋がっていると思っています。
また、国際関係学部では英語で開講される講義を受講することができ、英語の授業で英語でのプレゼンを経験することができるなど、日本にいながら英語で学ぶことのできる機会が多く用意されていました。海外からの留学生も多く在籍しており、留学生との交流を通して異文化コミュニケーションを学ぶこともできたことも貴重な経験でした。
後輩学生、国際関係学部を目指す受験生へメッセージをお願いします。
ウォルシュ自分の夢が見つからない、将来何がしたいのかわからない、と感じている学生は非常に多いと思います。私自身、高校時代に世界の不平等の問題に興味を持ったとは言え、それを本当に仕事にしていけるのか、また途上国支援と言ってもおそらく何万通りともいえるほどのかかわり方がある中で、自分はどの分野で関わっていきたいのかがわからず、思い悩んでいた時期も多くありました。
自分の進むべき道がわからないというのは、学生に限らず、社会人でも実に多くの人が抱える共通の悩みともいえます。(社会人でも、「今の仕事は本当に自分に合っているのだろうか、本当は他にもっとやりたいことがあるのではないのか」と悶々とする人は周りを見ていてもとても多いです)。自分は何が好きで、何が向いているのか。これは実際に足を踏み入れてみて、体験してみないとわからないことです。失敗を恐れず、様々な体験をして、その体験を経て少しずつ自分の目標や夢へと向かう階段の一段一段を積み上げていく。その階段は曲がりくねっており、まっすぐ一本に伸びる階段ではないと思いますし、目指す方向が途中で変わっていくことも大いにあると思います。先が見えず模索している時期は多くの人にとって楽なものではないと思いますが、この階段を少しずつ目指す方向へと積み上げていく作業こそが人生そのものなのだと思いますので、是非その過程を楽しんでいただけたらと思います。
また、少しでも興味があれば、「自分にはできない」と諦めないで、とりあえず行動してみることです。私自身、学生時代は国連なんて手の届かない夢の世界のように思っていました。しかし自分の興味関心に従い、行動を続ける中で今の自分にたどり着いていきました。是非皆さんも、自分の心の声に耳を傾け、周りに流されずに、興味関心のままに突き進んでみてください。
2023年12月更新
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