2020.09.01 NEWS

新型コロナウイルス感染者への差別に反対する声明

 日本、世界において、新型コロナウイルスへの対応は長期化しており、感染防止を図っても、それを完全に封じ込めることは極めて困難な状況にあるといえます。そのような状況にあって、第一線で奮闘されている医療従事者をはじめとする関係者の皆様には、深い感謝とともに敬意を表します。他方、社会に目を転じますと、感染への恐怖心からとはいえ、医療従事者の方々、予期せず感染された方やそのご家族、さらに所属組織・団体等に対する、偏見や差別ともいえる言動が止みません。まず、日本人であれ外国人であれ、基本的な人権を尊重するという民主主義の下での健全な思考が、新型コロナウイルスによって蝕まれていることに、危惧の念を抱かずにはいられません。また、感染の可能性は誰にでも、どこにでもあり、感染者への誹謗中傷による抑圧は、周囲に感染を拡大させるリスクをも生じさせることを、我々は認識しておかねばなりません。
 大学の役割は、混沌とした社会であっても、新たな価値や意味を人々に提案して社会を動かす、そのような人材を世に送り出すことです。コロナウイルス禍においても、学生の生命と安全を守ることを最優先し、オンライン形式によって授業を継続しました。研究についても、感染防止策を徹底した上で、部分的に実施を進めています。課外自主活動においては、感染防止にもとづく運営方針を主体的に確立した団体から活動を再開してきています。また、学生個々人に対しても、感染防止の意識を高め、取り組みを徹底するよう、機会を捉えて指導を行っています。大学は教育・研究・課外自主活動を通して、新型コロナウイルス感染症に対する理解を深め、世界と社会に目を向け、社会との関係を考え、学生が主体的に判断し適切な行動をとれるよう力を尽くします。
 新型コロナウイルスは、我々が地球規模で行ってきた移動と世界中の人との膨大なコミュニケーションに大きな影響を与えました。コロナウイルス禍で世界や社会が分断の危機にある一方、共通の課題として連携と協調を模索することも始まっています。さらなる地球規模での持続可能性に関わる脅威に対しても、世界と日本の平和的・民主的・持続的発展に向けて国際社会は連帯する必要があります。
 人の権利を尊重し、あるがままでいることを認め合うこと、それが、新たな時代を切り拓く挑戦を重ねる上で大切にされるべき自由の意味だと思います。立命館大学および立命館アジア太平洋大学は、立命館学園として建学の精神「自由と清新」を共有し、立命館大学は「平和と民主主義」を教学理念に掲げ、立命館アジア太平洋大学は「自由・平和・ヒューマニティ」、「国際相互理解」、「アジア太平洋の未来創造」を基本理念に掲げています。両大学は、学問研究の自由に基づき、人類的諸課題の解明と社会共生価値の創造に向けて、長期的視点から大学や大学教育のあり方を捉えなおし、複雑化する社会諸課題に取り組んで参ります。

2020年9月1日
学校法人立命館総長・立命館大学学長 仲谷善雄
立命館アジア太平洋大学学長 出口治明

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