Japan Super Science Fairを3年ぶりに対面開催

 11月1日から5日間にわたり、立命館高等学校において今年で20回目を迎える「Japan Super Science Fair(JSSF)」を開催しました。世界18カ国・地域の35校から生徒・関係者約250人が集まりました。新型コロナウイルスの影響で、対面での開催は3年ぶりとなりました。

 JSSFは、2002年に始まったスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の一環で開催、立命館高等学校も指定校の一つです。SSHは、文部科学省が理科・数学教育を重点的に行う高等学校等を指定する制度です。指定を受けた高等学校等は、先進的な理数教育を実施するとともに、高大接続のあり方について大学との共同研究や、国際性を育むための取り組みを推進します。JSSFのような企画は、SSH指定校ならではの取り組みといえます。JSSFは、これまでに延べ約3,800人の生徒が参加。半数以上が海外からの参加によるもので、高等学校等における国際的な科学技術人材の育成に大きく貢献してきました。

仲谷善雄総長
仲谷善雄総長
東谷保裕校長
東谷保裕校長
鈴木陽太さん
鈴木陽太さん

 JSSFでは、科学者による講演や大学や企業の研究室の視察などを行いました。また、生徒たちは地球科学、環境学、化学、物理学、数学などの分野毎にプレゼンテーションやポスターセッション、問題解決型のワークショップなどを実施。いずれの発表も学術的な専門性が極めて高く、生徒や教諭からは多くの質問が寄せられ、活発な意見交換、学術交流が行われました。

 初日、仲谷善雄・立命館総長が基調講演を行い、新製品を作るために、潜在的な顧客のニーズをどのようにデータとして収集するかについて、ビジネスの観点から科学について語りました。講演の中で仲谷総長は、自身のビジネス経験なども交えながら、「新しいアイデアの敵」である無意識のバイアスを排除することが重要であると説明しました。また、研究は好奇心から生まれるものである一方、社会的な活動であり、そこには常に社会的な責任が生じることを生徒らに伝えました。

 また、二日目には、各研究分野で活躍する大阪大学の甲斐歳惠教授、佐伯和人准教授、京都大学の伊福健太郎教授、ロジャー・ウェンデル准教授の4人の科学者が登壇。甲斐教授は生殖細胞から卵への成熟過程と、生殖細胞ゲノムの保護について、佐伯准教授は月探査の現状と、月探査用近赤外線カメラの開発、伊福教授は光合成の基本原理と食料・物質生産への応用、ウェンデル教授は宇宙を構成するニュートリノについて講演しました。講演の中で、研究室で行われている複雑な科学の多くは、元々は高校で学習するような単純なアイデアから生まれたことを紹介。未来の科学者たちにエールを送りました。

甲斐歳惠教授
甲斐歳惠教授
佐伯和人准教授
佐伯和人准教授
伊福健太郎教授
伊福健太郎教授
ロジャー・ウェンデル准教授
ロジャー・ウェンデル准教授

 さらにJSSFは、科学技術に関する学術交流だけでなく、生徒同士の文化的な交流を図る機会にもなりました。初日のアイスブレイクでは、日本の折り紙などを使ってそれぞれの生徒たちが自己紹介しました。またサイエンス・ディスカッションやサイエンス・ワークショップなど、学校や地域の違う生徒がグループに分かれて話し合ったり、作品を制作して競い合うなど、さまざまな企画を通じて交流しました。JSSFがきっかけとなり、その後もSNSなどを通じて生徒たちは親交を深めており、次世代の科学技術を担うグローバルなネットワークがJSSFを通じて形成されました。

 2年連続のオンライン開催を経て3年ぶりの対面開催、そして20回目の節目となる今回は、長期にわたりJSSFを主催してきた立命館高等学校にとっても大きな挑戦でした。生徒実行委員会のメンバーに対面開催を経験している生徒はおらず、手探りの中で準備を始めました。委員長の鈴木陽太さんを中心に、研究発表、Scienceなど7つのパートに分かれ、それぞれのメンバーが創意工夫しながら、参加する生徒たちをもてなしました。

 初日の挨拶で、東谷保裕・立命館中学校・高等学校校長は「JSSFが "チームで科学的問題を解決し、研究成果を共有し、有意義な議論を行い、学校間の強い絆を築く "」と語りました。立命館高等学校の生徒たちは、まさにその言葉通り、さまざまなディスカッションや発表を通じて、多様性を生かして知見を共有し、チームで解決策を導き出すといった経験を重ね、5日間で大きく成長しました。また主催校の生徒として、世界から集まった生徒や教諭らと交流する中で、学校の枠を超えた連携、強い絆を築くことができました。

 立命館高等学校は、今後もJSSFを通じて、生徒たちの科学技術に関する知見や国際的な人的ネットワーク形成などを図りつつ、日本、そして世界の科学技術人材の育成に貢献してまいります。

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