立命館大学スポーツ健康科学部の藤田聡教授らの研究チームは、ポーラ化成工業株式会社と共同し、40-50代の女性を対象とした運動介入で、 有酸素性運動と筋力トレーニングの両方が皮膚の弾力性と真皮構造を改善させること、特に筋力トレーニングは真皮の厚みを増加させ、若々しい外見に貢献する可能性があることを世界で初めて明らかにしました。 本研究成果は2023年6月23日22時(日本時間)に、米科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。

【本研究のポイント】

  • 有酸素性運動と筋力トレ―ニング(レジスタンス運動)は、どちらも皮膚老化を改善
  • 特に、筋力トレ―ニングは加齢によって薄くなり見た目の若々しさに関連する真皮の厚み※1まで改善
  • その機序として、運動による血中成分の変化と、それによる真皮の細胞外基質※2( ECM ; Extracellular Matrix)の増加が関与していることを解明

研究成果の概要

 有酸素性運動と筋力トレーニングは、どちらも皮膚老化の指標である皮膚弾力性と真皮構造を改善し、その機序として運動による血中成分の変化が皮膚の重要な層である真皮のECM(細胞外基質)を増加させることを明らかにしました。 さらに、筋力トレーニングは加齢によって薄くなっていく真皮の厚みも改善することも解明。その機序として、筋力トレーニングによって血中の炎症性ケモカイン(CCL28 とCXCL4)が減り、 その影響で真皮のECM の一種バイグリカン※3が増えるためであることも突き止めました。

研究の背景

 運動は脳や筋肉の老化に対してアンチエイジング効果を示しますが、皮膚に対してどのような効果をするかについてはよく分かっていませんでした。 特に、筋力トレーニングの皮膚に対する効果については世界的にも先行研究がなく、そのメカニズムも不明でした。

研究の内容

 40-50代の女性61名を有酸素性運動の群と筋力トレーニングの群に分け、4か月間に渡り週2回の運動を行っていただきました。 試験の前後で皮膚計測、採血、体組成測定、運動パフォーマンスの評価などを実施し、運動介入による変化を解析しました。 また、運動前後に採取した血液の成分解析や、血液サンプル(血漿)が培養真皮線維芽細胞の真皮ECM の遺伝子発現量に与える影響を解析することで、運動による皮膚老化改善メカニズムの解明を試みました。

社会的な意義

 本研究により、筋力トレーニングが健康だけでなく美肌にとっても良い作用があることが科学的に示されたことで、運動を始めるきっかけや継続するモチベーションとして役立つことが期待されます。

研究者のコメント

 本研究から、運動のメリットがまた1つ明らかになりました。本研究成果をきっかけに運動をする人が増え、年齢を重ねても健康で美しく、彩りある人生を歩む人が一人でも多く増えることを願っています。

論文情報

  • 論文名: Resistance training rejuvenates aging skin by reducing circulating inflammatory factors and enhancing dermal extracellular matrices
    (レジスタンス運動は血中の炎症因子を減少させ真皮の細胞外基質を増加させることにより皮膚の老化を改善する)
  • 著者: Shu Nishikori (立命館大学スポーツ健康科学研究科、ポーラ化成工業株式会社 フロンティアリサーチセンター) Jun Yasuda(立命館大学スポーツ健康科学研究科 ※研究実施当時 )、 Kao Murata(立命館大学スポーツ健康科学部 ※研究実施当時)、 Junya Takegaki(立命館大学スポーツ健康科学部 専門研究員)、 Yasuko Harada(ポーラ化成工業株式会社 フロンティアリサーチセンター)、 Yuki Shirai(ポーラ化成工業株式会社 フロンティアリサーチセンター)、 Satoshi Fujita(立命館大学スポーツ健康科学部 教授)
  • 発表雑誌: Scientific Reports
  • 掲載日: 2023 年6 月23 日(金) 22 時(日本時間)
  • DOI: 10.1038/s41598-023-37207-9
  • 掲載URL: https://www.nature.com/articles/s41598-023-37207-9

用語説明

※1 真皮の厚み:真皮の厚さは顔のシミ、シワ、たるみ、見た目の若々しさに関連する。

※2 真皮の細胞外基質:コラーゲン、ヒアルロン酸、プロテオグリカンなど。

※3 バイグリカン:プロテオグリカンの一種。バイグリカンを持たないマウスは真皮が薄くなるとの報告あり。

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