【世界初】放熱性に優れたSiC上への新パワー半導体r-GeO2薄膜の結晶成長に成功 ― 新しい結晶成長手法 Phantom SVD (ファントム局所的気相成長) 法によりr-GeO2パワーデバイス実現へ大きく前進 ―

2023.09.26 NEWS

【世界初】放熱性に優れたSiC上への新パワー半導体r-GeO₂薄膜の結晶成長に成功 ― 新しい結晶成長手法 Phantom SVD (ファントム局所的気相成長) 法によりr-GeO₂パワーデバイス実現へ大きく前進 ―

 総合科学技術研究機構の金子健太郎研究室(金子健太郎 教授/RARA フェロー)とPatentix株式会社(所在地:滋賀県草津市、代表取締役:衣斐豊祐)は、共同で、次世代半導体材料として注目される「ルチル構造二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)」をPhantomSVD(ファントム局所的気相成長)法によって、SiC上に製膜することに世界で初めて成功しました。
 Patentix株式会社は、2022年12月に創業した立命館大学発の半導体ディープテックベンチャーです。共同創業者でありCTOを務める金子教授/RARAフェローが開発した新しいパワー半導体材料であるr-GeO2の半導体基板・パワーデバイスの研究開発を進めています。
 この成果は、2023年9月18日~21日にポーランドのワルシャワで開催されている、ヨーロッパ最大の材料学会である「European Materials Research Society (E-MRS)」のFall Meetingで理工学研究科の清水悠吏(Patentix株式会社取締役兼務)により発表され、酸化物半導体パワーデバイスの開発で問題になっていた、基板の低い熱伝導率という課題に対して放熱性に優れたSiCを用いることで解決できる可能性を示す大きな成果となりました。また、金子教授/RARAフェローは招待講演者としてr-GeO2研究のこれまでの成果と今後の展望について講演を行いました。

1.概要

 ルチル構造二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)は、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)と比べてさらに大きなバンドギャップをもつため、r-GeO2 によるトランジスタやダイオードは高耐圧、高出力、高効率(低損失)という優れたパワーデバイス特性を備える事が期待されています。r-GeO2 パワーデバイスの開発は日本が世界をリードしており、Patentix株式会社では2022年12月会社設立以降、r-GeO2 エピウエハの研究開発を進めております。
 また、Patentix株式会社では、独自に開発したPhantomSVD(ファントム局所的気相成長)法を用いて製膜しており、PhantomSVD は、安全安価な原料を用いることができコストパフォーマンスに優れています。また、従来の霧(ミスト)状にした溶液を用いるCVD法とは異なる原理で結晶成長が可能であり、より安全・安心な薄膜合成が可能となります。

2.今回の成果及び今後の予定

 立命館大学およびPatentix株式会社は、共同で、次世代半導体材料として注目される「ルチル構造二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)」をPhantom SVD(ファントム局所的気相成長)法によって、SiC上に製膜することに世界で初めて成功しました。この成果は、2023年9月18日~21日にポーランドのワルシャワで開催されている、ヨーロッパ最大の材料学会である「European Materials Research Society (E-MRS)」のFall Meeting で理工学研究科の清水悠吏(Patentix株式会社取締役兼務)により発表され、酸化物半導体パワーデバイスの開発で問題になっていた、基板の低い熱伝導率という課題に対して放熱性に優れたSiCを用いることで解決できる可能性を示す大きな成果となりました。今後は、r-GeO2 薄膜の電気特性評価や膜中に存在する欠陥評価等を行い、高品質なr-GeO2 エピ製膜技術の開発を進めてまいります。

Si(111)/3C-SiC(111)上に成長したルチル構造r-GeO2 の写真。 写真の説明:Si(111)/3C-SiC(111)上に成長したルチル構造r-GeO2 の写真。左端の未成長部は膜厚測定のためにマスキングした跡。
構造の説明:Si(111)基板上に製膜した<111>配向3C-SiC 薄膜の上にr-GeO2 の製膜を行った。

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