学校法人立命館と株式会社エスプール 障害のある方の「できる」を広げる、職場づくりの仕組みを共同研究~「良い職場環境」の整理を起点に、約5,200人の就労を支援する企業の現場から行動分析~
学校法人立命館(所在地:京都府京都市、総長:仲谷善雄)と株式会社エスプール(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:白川儀一)は、2026年7月1日に「連携協力に関する協定書」を締結し、障害のある方の「できる」を広げ、活躍につなげる職場づくりの方法を解明する共同研究を推進しています。
このたび、共同研究の第一段階として実施した「良い職場環境とは何か」の探索的分析を終え、今後、支援者の具体的な行動と障害のある方の能力発揮との関係を明らかにする研究へと進めます。
背景:障害者雇用を取り巻く環境の変化 「雇用する」から、その先の環境づくりへ
2026年7月から民間企業における障害者の法定雇用率が2.7%に引き上げられるなど、障害のある方の雇用を取り巻く環境が変化しています。雇用の確保に加え、一人ひとりの特性や希望に応じて能力を発揮し、成長できる「雇用の質」が求められています。
エスプールでは、障害のある方の就業を支援する「わーくはぴねす農園」の運営などを通じ、多くの企業・障害のある方の就労を支援してきました。約5,200人の障害のある方が働く農場の現場(就労定着率92%※)では、働く中でできることが増え、成長につながる事例が数多く生まれています。一方で、その背景には本人の努力だけでなく、管理者や職場による「関わり方」や、職場環境が大きく関係すると考えられるものの、これまで現場の経験や個々の判断に委ねられている部分もありました。そこで本研究では、障害のある方の「できる」が広がる要因を、本人だけでなく「支援する側」の関わり方に着目して分析を行います。
この研究に共同で取り組むのが、行動分析を専門とする立命館大学総合心理学部の中鹿直樹教授です。中鹿教授は、障害のある個人のQOL向上やキャリア支援を研究し、特別支援学校の生徒の職場実習やキャリア支援、支援者の行動変容などについて研究してきました。こうした行動分析の知見を、障害のある方の就労環境における具体的な関わり方の分析に生かします。
※就労定着率の定義・算出時点:入社1年後の在籍率、2025年11月時点
研究の目的と道筋:「支援する側」の行動に着目し、「できる」が広がる仕組みを明らかに
本研究では、エスプールが運営する全国の農園のうち3カ所を研究のフィールドとして、管理者や職場など「支援する側」の具体的な行動と、障害のある方の「できる」の広がりとの関係を明らかにすることを目指します。
さらに、そこで得られた知見を、特定の担当者の経験や勘に依存せず、他の職場でも活用できる仕組みとして整理します。それにより、障害のある方の能力発揮や成長、キャリア形成につながる再現可能な職場づくりのあり方を明らかにします。
研究の第一段階として、まず、障害のある方の就労を支援する農場での聞き取り調査を通じて「良い職場環境」の要素を整理しました。今後はそれを基に、管理者(農場長)による障害のある方への指導場面の観察・再現を通した行動分析や、障害のある方・支援者の行動における課題と職場環境の関係を分析します。研究によって得られた知見は、手順書やワークシートなどに落とし込むことで、多くの企業の現場で活用できる仕組みとして整理し、社会実装へとつなげていきます。
立命館とエスプールは、障害のある方一人ひとりのウェルビーイング向上と、誰もが活躍できる共生社会の実現に向けて、連携を深めてまいります。
学校法人立命館 総長 仲谷善雄 コメント
立命館は学園ビジョンR2030に「DE&Iを実現する学園」を掲げ、一人ひとりの尊厳と多様性が大切にされる社会を目指して、障害学生支援や特例子会社「立命館ぷらす」の運営などに取り組んでまいりました。本研究は、エスプールとの共創により、障害のある方の「できる」を広げる環境を行動分析学で解明する挑戦です。その成果を広く社会と共有し、障害のある方が能力を十分に発揮できる共生社会の実現に貢献してまいります。
株式会社エスプール 代表取締役社長 白川儀一 コメント
エスプールは、障害者雇用支援を通じて、約5,200人の障害のある方の就労を支えてまいりました。現場では、周囲の関わり方ひとつで、人の「できる」が大きく広がる場面に数多く立ち会ってきました。本研究は、この現場の実践知を、立命館との共創により科学的に解き明かし、誰もが実践できる形で社会にお届けするものです。障害のある方一人ひとりが能力を発揮し、いきいきと働ける社会の実現に貢献してまいります。
研究の詳細
共同研究の概要
名称:『共創型産学連携による障がい者のウェルビーイング向上に向けた未来づくりプロジェクト-障がい者の「できる」の拡大とキャリア形成の仕組みづくり-』
期間:2026年7月〜2027年9月
内容:行動分析に基づく、障害のある方の能力開発とキャリア形成に関する研究
体制:学校法人立命館(立命館大学総合心理学部 中鹿直樹教授 ほか)、株式会社エスプール
2026年10月13日時点での共同研究の途中経過について
<調査の概要>
2026年7月、エスプールグループで農園事業を運営する株式会社エスプールプラスにおいて、農場長を含む社員を対象に、約60分の半構造化インタビュー調査を実施しました。「良い職場環境とは何か」という問いに対して得られた語りを、KJ法により分析しました。その結果、書き出した71枚のカードから共通点や関係性ごとに21のグループが生成され、それらをさらに大きく4つの要素に整理しました。
<整理された「良い職場環境」の4つの要素について>
- I.企業理念から派生した「良い職場」のイメージ
安心して働ける場の提供と存在承認に加え、一人ひとりが目標を持ち、成長や可能性を感じられること。そして、農園の活動を通じて外部とつながりながら価値を生むこと。さらに、共に働く社員の側にも「障害者雇用という枠を越えて一人の仲間として評価する」という変化が生まれることが示唆されました。
- II.現場の必要性から派生した「良い職場」のイメージ
画一的な運用ではなく状況に応じて柔軟に仕事や仕組みを変えること、現場だけに責任を負わせず組織として支える体制、現場の声を吸い上げながら改善を続ける文化の重要性が示唆されました。
- III.現場の困難さ
安全管理や安定した仕事の確保、作業のルーティン化など、理想の実現過程には現実的な制約が伴うことも率直に語られました。
- IV.未解決の課題への向き合い方
関係者それぞれが考える「良い職場」は必ずしも一致しません。認識の違いをなくすことだけを目指すのではなく、対話を続けながら向き合い続けること自体の重要性が示唆されました。
<本分析の性格について>
本結果は、KJ法による質的分析から得られた整理・示唆であり、「良い職場」の最終的な定義や統計的な実証を示すものではありません。今後の現場観察・行動分析により、具体化を進めます。
<中鹿教授からのコメント>
今回のインタビュー調査結果を踏まえると、「良い職場」とは、試行錯誤を重ねながらより良い環境をつくっていく職場であると言えます。また、さまざまな困難が生まれ、新たな工夫が必要となる農園のような場が重要であることも示唆されます。新たな工夫や取り組みは、時に既存の価値観と衝突することもありますが、その矛盾に向き合い、試行錯誤を重ねることが、本質的な価値の創出につながっていきます。そして、一人ひとりの社員がこうした循環の中で自ら考え、主体的に役割を担える状態こそが、「良い職場」の一つの姿だと考えられます。
行動分析学では、人の「できる」は本人の力だけでなく、周囲の環境や関わり方との相互作用の中で成り立つと考えます。今後は農園での観察と分析を通じて、現場で積み重ねられてきた関わり方を具体的な行動として可視化し、再現可能な形に整理していきます。あわせて、ご本人が「できる」ための条件を記録・継承し、職場が変わっても力を発揮できる仕組みづくりに取り組みます。これにより、障害のある方のキャリア形成とウェルビーイングの向上につなげてまいります。
名称:『共創型産学連携による障がい者のウェルビーイング向上に向けた未来づくりプロジェクト-障がい者の「できる」の拡大とキャリア形成の仕組みづくり-』
期間:2026年7月〜2027年9月
内容:行動分析に基づく、障害のある方の能力開発とキャリア形成に関する研究
体制:学校法人立命館(立命館大学総合心理学部 中鹿直樹教授 ほか)、株式会社エスプール
<調査の概要>
2026年7月、エスプールグループで農園事業を運営する株式会社エスプールプラスにおいて、農場長を含む社員を対象に、約60分の半構造化インタビュー調査を実施しました。「良い職場環境とは何か」という問いに対して得られた語りを、KJ法により分析しました。その結果、書き出した71枚のカードから共通点や関係性ごとに21のグループが生成され、それらをさらに大きく4つの要素に整理しました。
<整理された「良い職場環境」の4つの要素について>
- I.企業理念から派生した「良い職場」のイメージ
安心して働ける場の提供と存在承認に加え、一人ひとりが目標を持ち、成長や可能性を感じられること。そして、農園の活動を通じて外部とつながりながら価値を生むこと。さらに、共に働く社員の側にも「障害者雇用という枠を越えて一人の仲間として評価する」という変化が生まれることが示唆されました。 - II.現場の必要性から派生した「良い職場」のイメージ
画一的な運用ではなく状況に応じて柔軟に仕事や仕組みを変えること、現場だけに責任を負わせず組織として支える体制、現場の声を吸い上げながら改善を続ける文化の重要性が示唆されました。 - III.現場の困難さ
安全管理や安定した仕事の確保、作業のルーティン化など、理想の実現過程には現実的な制約が伴うことも率直に語られました。 - IV.未解決の課題への向き合い方
関係者それぞれが考える「良い職場」は必ずしも一致しません。認識の違いをなくすことだけを目指すのではなく、対話を続けながら向き合い続けること自体の重要性が示唆されました。
<本分析の性格について>
本結果は、KJ法による質的分析から得られた整理・示唆であり、「良い職場」の最終的な定義や統計的な実証を示すものではありません。今後の現場観察・行動分析により、具体化を進めます。
<中鹿教授からのコメント>
今回のインタビュー調査結果を踏まえると、「良い職場」とは、試行錯誤を重ねながらより良い環境をつくっていく職場であると言えます。また、さまざまな困難が生まれ、新たな工夫が必要となる農園のような場が重要であることも示唆されます。新たな工夫や取り組みは、時に既存の価値観と衝突することもありますが、その矛盾に向き合い、試行錯誤を重ねることが、本質的な価値の創出につながっていきます。そして、一人ひとりの社員がこうした循環の中で自ら考え、主体的に役割を担える状態こそが、「良い職場」の一つの姿だと考えられます。
行動分析学では、人の「できる」は本人の力だけでなく、周囲の環境や関わり方との相互作用の中で成り立つと考えます。今後は農園での観察と分析を通じて、現場で積み重ねられてきた関わり方を具体的な行動として可視化し、再現可能な形に整理していきます。あわせて、ご本人が「できる」ための条件を記録・継承し、職場が変わっても力を発揮できる仕組みづくりに取り組みます。これにより、障害のある方のキャリア形成とウェルビーイングの向上につなげてまいります。



