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【SSH】高校2年生SSコースを対象にSS Challengeを実施しました

2021年02月12日 高校
1月27日(木)、高校2年生のSSコース生徒(理系選択生徒)173名を対象に、SS Challengeを実施しました。この企画は日常の授業では経験できない、企業や研究者の方からのお話を聞いたりワークショップを行なったりする取組です。
 例年は校外へ出て、研究所や大学、企業を直接訪問させていただいて実施していましたが、今年度は校内での実施となりました。現在のようなコロナ禍において、対面でのコミュニケーションや実験等の授業実施が難しい状況下にありますが、「高校生に科学や技術の魅力を伝え、自ら考え、学ぶ場を設けたい」という本校の願いにご賛同いただいた研究所や大学、企業の方々にご協力いただき、実施することができました。オンラインで実施したものと、感染症予防に十分配慮をして対面で実施したものがありましたが、次のような5つの講座に分かれての実施でした。

【プラズマの世界】オンラインで実施
 指導:核融合科学研究所 高密度プラズマ物理研究系 吉村信次先生

<事前の講座説明>
 宇宙における物質の基本的な状態である“プラズマ”について学びます。「プラズマとは何か」から始めて、宇宙でのプラズマ応用、未来のエネルギー源として期待される核融合発電、プラズマを使った医療や農業まで、幅広いプラズマの世界を知ってほしいと思います。本来、プラズマは学部4年生から大学院生で学ぶテーマなのですが、今回の講義では難しい数式は使いません。プラズマが拓く未来について考えてみませんか?
 
<当日の様子>
 プラズマに関する基礎知識だけではなく、プラズマの発見にまつわる歴史の話や最先端の研究の話なども聞くことが出来ました。オンラインでの講座でしたが、参加型のクイズも入れてくださり、岐阜県に太陽よりも熱い温度を実現することに成功しているというような興味関心を引くようなお話も交えながら話してくださったので、生徒は楽しく聞くことが出来て大変刺激になりました。

<生徒の感想から>
  • 今まで物理や化学の1つの分野が、こんなに深いとは思っていませんでした。プラズマについて、何も知らなかったけど、今回の講義を受けて、プラズマとは、高温になることでバラバラになり、表れるものの集合体だと知ったことが一番の驚きでした。特に、オーロラや雷が落ちる瞬間に走る電流など、低い温度だと肉眼で光をみることのできる、身近なところにあるというのが、面白かったと思いました、普段生活している中でも、よく見ると面白い謎がたくさんありそうだなあと感じました。
  • 講座を受けるまでプラズマについて全く知らなかったけど、太陽やオーロラなど身近なものもプラズマであると知って、原子や分子だけでなくプラズマも私達の生活にかかわっているのだと改めて感じた。地球温暖化などを防ぐためにも新たな発電の形としてプラズマを利用していることにも驚いたし、色々な国が協力して行っていてすごく興味深かった。再生可能エネルギーと同じかそれ以上の役割を果たしていると知れてよかった。
  • まったくプラズマのことを知りませんでしたが、少しだけ知識がつきました。もっと難しい内容だと思っていましたが、私達の習っている事の延長線上の事だったのでさらに興味がわきました。一番印象に残ったのはオーロラの出来方についてです。すごく面白くて、そんな仕組みでオーロラができていたのかと驚きました。すごくためになる講座で、宇宙についてもっと知りたいなとも思えました。
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【嗅覚のしくみと香り体験】
 指導:大阪大学大学院 生命機能研究科 倉橋隆先生 竹内裕子先生

<事前の講座説明>
 嗅覚は五感の中でも未知の点が多い。これは匂いを感じる線毛が直径100nmほどの超微細構造であるので、実験が極めて難しいためである。私達は生きたままの線毛内の分子を記録・解析する研究を進めている。本ワークショップでは、嗅覚受容の分子機構、嗅覚マスキングと産業応用例、匂い順応の機構に関して概説し、植物からのエッセンシャルオイルなどの好ましい匂いサンプルで、これらについて体験していただく予定です。

<当日の様子>
 嗅覚を理論と実験で学びました。一度嗅いだニオイはわずか1秒程度の短時間で感じなくなる順応や、あるニオイが他のニオイを感じさせなくするマスキングについて、各自が実験して体験するとともに、先端的な研究成果を交えた講義により理解を深めました。また、香水が西洋社会で必要とされた理由や、消臭技術などニオイの産業への応用について、科学的な視点から説明いただき、受講生はニオイの奥深さに引き込まれた講義でした。

<生徒の感想から>
  • 嗅覚は普段使うものだけど、まったく意識したことがなくて、初めて知ることが多くてすごく面白かった。消臭剤などでどうして匂いが消えるのかがずっと気になっていて、それを理解することができた。香水が匂いを消すために作られたものだというのは知っていたけれど、何で匂いを匂いで消すんだろう?と気になっていて、匂い自体に消臭効果があるってことは初めて知った。
  • 匂いはいつも当たり前に存在しているように感じるが、様々な分野(生物、化学)につながっていてとても面白かった。また、実際に3種類の匂いを嗅いでみたり、嗅ぎ方の違いでの実験を行うことができたので、より分かりやすかった。
  • 今回させていただいた3つの実験のうち、1番最後に行ったマスキングの実験が特に衝撃的でした。今まで、複数の匂いを嗅いだときに片方しか感じなくなったりするのは単純にその匂いの強弱の問題だと思っていましたが、特定の成分にチャネルでブロックする効果があると知り、思った以上に私たちの体は複雑なのだなと思い知りました。今の私の知識ではよく理解できないところもあったので、改めて生物と化学の知識をつけてからもう一度話をききたいです。

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【半導体の技術で社会を変えていこう!】オンラインで実施
 指導:ローム株式会社

<事前の講座説明>
 普段はあまり耳にすることのない「半導体」。実は、日々の暮らしの様々なところで活躍しているのです。そして、ロームは、半導体の技術を使って、皆さんの生活、そして社会をより良くするための事業を行っています。今回の講演では、会社紹介含め、半導体とは何なのか、そして、社会のどのような面でロームの半導体が活躍しているのかをデモ機を用いながら皆さんに学んでいただきます。また、その後のワークショップでは「センサの技術でコロナ対策を考えよう」をテーマに、講義で学んでいただいた半導体の技術を活用した社会課題の解決のアイデアをグループで導き出し、最後には全チームに発表いただきます。

当日の様子>
 「半導体の技術で社会を変えていこう!」というテーマで、ロームという企業について、および同社の製品のひとつであるセンサについて学んだあと、「センサを使ったコロナ対策を考えよう!」というグループでの活動を行いました。16種類のセンサカードのなかから、各グループで使うセンサを1枚ルーレットで決め、残りのセンサは、何を使うかは自由で、2種類以上のセンサを使うことにして、コロナ対策として役立つアイデアを考え、そのアイデアをポスターにまとめて、発表しました。「温度センサや赤外線センサを活用してペットの健康を守るシステム」「ベッドを自動移動できる仕組み」「人の密度の高まりを検知して自動で注意喚起放送を流す」といったさまざまなアイデアが生まれました。

<生徒の感想から>

  • まったく関係ないと思えるものでも、発想次第では有効活用できるということを知った。自分はどんな分野に進むのかわからないが、こんなふうに発想やアイデアをたくさん出して有効活用していくことが必要になってくるのだと知りました。
  • いろいろなセンサがあり、それらを組み合わせることで、自分達でもコロナに対する対策を考えられると思った。
  • 今回の講座で色々なことを考えることができました。センサがたくさんのところで活躍していることを知れて、おもしろかったです。グループワークでも色々アイデアを出しあえて、楽しかったし、おもしろかったです。身近なところでも、私が使っている時計もセンサがたくさん入っているので、助かっているし、もっと探してみたいと思いました。

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【謎解きiPS細胞 〜細胞を見分けよう!〜】オンラインで実施
 指導:京都大学iPS細胞研究所(CiRA) 国際広報室 和田濵裕之先生

<事前の講座説明>
 私たちの体は、200種類以上の細胞が、何十兆個も集まってできています。iPS細胞は体中のあらゆる細胞に変化することができると言われています。この講座では、iPS細胞を始めとした幹細胞研究を紹介します。また、皆さんで話し合いながら、iPS細胞からできた様々な種類の細胞の顕微鏡写真を見て、どういう細胞なのか見分ける謎解きをしていただきます。最後は正解のない課題にも挑戦していただきます。

<当日の様子>
 iPS細胞に関する講義を受けた後、細胞の画像を見て、その細胞がiPS細胞なのか、iPS細胞から分化させた細胞かを当てるクイズに挑戦したり、iPS細胞が全能性の細胞であることを証明するためには、どのような事が言えれば良いのかという、まだ正解がない問いに関して班で考えました。マウスを使ったiPS細胞は胚盤胞に注入して、生まれたマウスがiPS細胞由来の細胞を全身に持っていれば、注入したiPS細胞は全能性を有すると言えますが、ヒトで同じことはできません。どのようにすればヒトiPS細胞が全能性であることを証明できるのか、現在も模索されています。「正解がない問い」に取り組むことで、深い思考ができたのではないかと思います。一般的にも良く耳にするようになったiPS細胞ですが、このワークショップを通して、生徒たちが正しいiPSの知識を得ることができたと思います。


<生徒の感想から>
  • 今回の講座で、何かを観察して分析することの難しさや面白さが改めて分かりました。iPS細胞に関しては前から少し知っていたけど、詳しくは知らなかったので、とても良い機会となりました。iPS細胞について、これから調べていけたら良いと思いました。
  • 部位によって細胞の形、並び方が全く違うということをMission 2を通して学びました。写真を注意深く観察すれば、こんなにもたくさんの情報を得ることができるのだと感心しました。iPS細胞が現在、世界中の猛威をふるっているCOVID-19の解明に活用されていることにはかなり驚きました。ヒトはみなたった1つの受精卵(細胞)からできているという言葉になぜかハッとさせられました。
  • ニュースでよくiPS細胞の話を耳にしましたが、実際にどんな役割をもったどんな形のものかを知らなかったので、分かってよかったです。iPS細胞にはたくさんの可能性があることを知り、これからも新たな使い方がわかって人の役にたつ未来が広がっているなと感じました。iPS細胞の考え方のもとが、受精卵にあることがとても興味深かったです。生物のなぞは、倫理観によって実験が難しいことも多いことが分かりました。

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【Robotics×Neuroscienceで新しいロボットのコントロール方法を考えよう】
 指導:立命館大学 理工学部 岡田志麻先生

<事前の講座説明>
 「心の中で思った通りに機械を操ることができれば」,「自分の動作を模倣するようにロボットを動かせたら...」と考えたことはありませんか。Roboticsの分野ではこのような技術はBrain-machine interfaceやBrain-Computer Interfaceと呼ばれており、特に生体工学という分野で取り扱われます。生体工学では、脳の情報(脳波)や筋への命令(筋電図)、身体の動作を計測する新しいセンサの開発や計測した信号の制御利用についての研究を行います。本講では、大学で実施している最新の生体工学研究の紹介をしたのちに、実際に自身の生体生理信号でモノを動作させる体験をしていただきます。

<当日の様子>
 筋肉が収縮する時に出る微弱な電気信号を利用して車を制御するワークショップに取り組みました。ロボットは生物を模倣して作られることが多いので生物との親和性が高く、人間と機械が情報をやり取りするヒューマンインターフェースが重要であるというお話を聴いた後で、車の製作と筋電をコントロールするソフトの調整に分かれて取り組みました。出来上がった車を筋肉に力を入れることで操作して、与えられたコースを走らせるタイムレースを行いました。

<生徒の感想から>
  • 生体学と工学は全く別のものだと思っていましたが、分野が違う学問もつながっているということに驚きました。僕の班は上手く作れて良かったです。
  • 筋肉の動きでロボットを動かすという観点がとても面白く、様々なことに応用できそうだなと思いました。大学の学生さんや先生はもっと高いレベルの面白そうなことを研究されているんだろうなと思うと今まで自分の中であまり興味がなかったロボット関連のことにかなり関心を持つことができました。
  • ロボットを動かす時に筋肉を調整するのが難しかったです。コースを走らせることが成功した時、達成感があったのですごく楽しかったです。ロボットを一つ作るのにもすごく大変なんだと実感できていい勉強になりました。1位がとれて良かったです。大学生の方々にも丁寧に教えてもらえました。

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