研究拠点Ⅲ 生産年齢人口減の克服センサ・マイクロマシンがつなぐ、革新的サイバーフィジカルシステム(CPS)モデルの医療健康分野への展開。

日本がSociety5.0 社会を目指すためには革新的CPSモデルの構築が不可欠です。また、日本の生産年齢人口(働き手)の減少は大きな課題であり、それに対して医療・健康の研究が寄与することが求められています。本プロジェクトでは、センサ・マイクロマシン技術によって、それらの課題をつなぎます。つまり、「センサ・マイクロマシン技術を活かして医療・健康分野での革新的CPSモデルを構築し、生産年齢人口が減少を続ける社会に役立てる」。それにより、持続可能な地球共生型社会の実現に貢献することを目標としています。

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「革新的CPSモデルの構築」、「生産年齢人口減少課題への貢献」、
「日本のモノづくりの再生」。3つの大きな課題に挑む。

あらゆるモノがインターネットに接続される現代社会において、日本が掲げるSociety5.0社会を実現するには、サイバー空間と実世界(フィジカル空間)を連携させる「サイバーフィジカルシステム(CPS)」によって、どのような新価値を創出できるかが問われています。一方で、日本における生産年齢人口(働き手)は1995 年をピークに急激なペースで減少を続けています。そのことが産業・経済をはじめ社会全体に大きな影響を及ぼすことは必定で、生産年齢人口(働き手)に対して医療・健康の研究がどう寄与できるかが問われています。
また、長年にわたって日本の繁栄を牽引してきた工業力・技術力、いわゆる“モノづくりの力”について、かつて世界をリードした分野においても国際的な競争力の低下が問題視されています。技術はあっても新しいデバイスやサービスの創出にうまくつながらない、といった状況をいかに打破して日本のモノづくりを再生するかが問われています。
本プロジェクトは、こうした3つの社会的課題を背景にしています。すでに多方面からの取り組みが始まっていますが、本プロジェクトでは、革新的なCPSを構築(課題1)することで、医療・健康の面から生産年齢人口(働き手)減少の課題に寄与する(課題2)ことを目指します。その際、サイバー空間と実世界(フィジカル空間)をむすぶために、センサ・マイクロマシンというモノづくりの力(課題3)を活用します。
具体的には、「生産年齢人口(働き手)への対策」、および「生産年齢人口(働き手)が減っても持続可能な産業への対策」という2つのターゲットを設定し、アプローチします。立命館大学は、サイバーとフィジカルのインターフェイスとなるセンサやマイクロマシンに関して、世界的な研究開発力を有しています。この強みを最大限に活かし、「生産年齢人口(働き手)への対する対策」では、生体の健康状態(フィジカル)とコンピュータ・インターネット(サイバー)をつなぎ、「働き手の健康寿命延伸」というテーマに挑みます。また、「生産年齢人口(働き手)が減っても持続可能な産業への対策」では、培養生体モデル(フィジカル)とコンピュータ・インターネット(サイバー)をつなぐことで、「創薬/機能性食品分野の生産性向上」というテーマに挑みます。

新製品・サービスの創出から社会実装までを目指して、
経営学・工学・健康科学・薬学などが、新たな形で融合。

本研究プロジェクトの特長は、先進的な製品・サービスを創出するだけに留まらず、文理融合によって新たなマネジメント手法を取り入れ、社会実装まで視野に入れるところにあります。マネジメントを専門とするグループと、「働き手の健康寿命延伸」と「創薬/機能性食品分野の生産性向上」に焦点を当てる2つのグループ、さらにキーテクノロジーのセンサ・マイクロマシンを研究開発するグループ。4つが有機的に連携し、独創的な研究を推進します。

まず徳田グループは、プロジェクト全体のプラットフォームをデザインするなど、マネジメントを行います。すべてのグループリーダーも参加し、まずは“私たちがありたい姿”(理想のライフスタイル)を描き、Society5.0における革新的CPSへと結びつけていくことから始めます。経営学の徳田、MOT(技術経営)の後藤に加え、心理学、法学の専門家も結集。各分野の知見を集め、社会からサービス、製品まで多様なフェーズで価値を発揮するCPS デザインを研究し、新たなCPS モデルとして「社会的価値システム・デザインモデル」を構築。その革新的CPS モデルを視野に入れて、各グループが研究を推進することにより、社会実装可能性の高い製品・サービスの開発を可能にします。
また、医療健康分野に適応されるCPS の性能を評価するための国際標準規格の構築にも取り組みます。本研究プロジェクトから生み出す製品・サービスを世界標準として普及させるためにも、世界に先駆けて日本のアカデミア発「医療健康分野のCPS の性能評価」の国際標準規格の構築を進めます。

藤田(聡)グループは、スポーツ健康分野の研究者を中心に、「働き手の健康寿命延伸」に関わる研究に取り組みます。いわば“CPS上のデータを駆使して健康増進を図る”ことがテーマ。まず、小西グループが開発するセンサ・マイクロマシン技術を活用して身体活動量や唾液、汗、血液に含まれるタンパク質などの生化学データを取得し、身体活動量や栄養状態を把握する新しいウェアラブルデバイスを開発します。さらにそれを使って一人ひとりの健康状態を把握するオーダー・メイドのモニタリング・フィードバックシステムの構築に挑みます。これが実現すれば、個別健康データを基にした運動栄養介入プログラムの作成や遠隔での運動指導も可能になります。次に、働き手の労働の質を高めるため、「からだ活性化」を可能にする手段の開発を進めます。焦点を当てるのが、間葉系幹細胞です。藤田(聡)はこれまでの研究で、間葉系幹細胞を投与すると骨格筋肥大を導く細胞内シグナルが亢進することを見出しています。本グループでは、さらに温熱刺激によってレジスタンス(抵抗)運動による間葉系幹細胞の活性化を高め、筋損傷の回復を促進できるかを検証します。

藤田(聡)グループによる、働き手の健康寿命延伸のための生体モニタリング実験。

藤田(聡)グループによる、働き手の健康寿命延伸のための生体モニタリング実験。

藤田(卓)グループは、薬学的視点から、「創薬/機能性食品の生産性向上」に寄与する研究開発を担い、2つのテーマに挑みます。これらは、いわば“細胞を使った医療健康CPSモデルの研究”です。
1つ目のテーマは、iPS 細胞技術を用いた生体機能チップ「Organon-a-chip(OoC)」の開発です。OoC は、細胞を培養し、組織・臓器を微小環境で模倣できることに加え、複数の微小臓器を連結すれば、臓器間の相互作用や応答をリアルタイムに観測することも可能になります。そのために、これまで小西グループと連携し、マイクロアクチュエータを利用した人工腸管や人工血管システムなどの生体模倣システム(MPS)を構築してきました。これらを活用し、医薬品開発で医薬品候補化合物の消化管吸収性などを評価するスクリーニングシステムのデバイスを開発し、実用化を目指します。
2つ目のテーマとして、OoCを活用して、機能性食品を摂取した際の肝機能や筋細胞機能の応答性、運動(電気刺激)による筋細胞の応答が肝臓に及ぼす影響を自動でモニタリングするスマートスクリーニング技術の開発も試みます。

藤田(卓)グループは、生体機能チップ「Organon-a-chip(OoC)」を研究開発し、バイオモニタリング研究への活用を目指す。

藤田(卓)グループは、生体機能チップ「Organon-a-chip(OoC)」を研究開発し、バイオモニタリング研究への活用を目指す。

小西グループは、革新的CPSモデルのためのセンサ・マイクロマシン技術を開発する工学グループで、藤田(卓)、藤田(聡)両グループの研究を技術面から支えます。センサ・マイクロマシンは、CPSのブリッジ的役割として生体とのインタフェースを担うエッジデバイスに位置付けられます。遠隔運動指導に伴う生活習慣のモニタリングに必要なエッジデバイスを開発し、藤田(聡)グループの研究に活用。生体モニタリング(センシング)技術を用い、いつでもどこでも生体情報を取得できるウェアラブルマイクロマシンを実現します。またマイクロマシンチップ上に生体反応系や培養細胞組織を構築するOoC 技術を活かし、藤田(卓)グループと共に薬物や機能性食品の消化系や血管系の動態を分析するバイオハイブリッド型エッジデバイス・システムの構築にも取り組みます。

工学系と医薬系の研究者が協働し、バイオハイブリッド型エッジデバイス・システムの構築にも取り組む。

工学系と医薬系の研究者が協働し、バイオハイブリッド型エッジデバイス・システムの構築にも取り組む。

単なるDXを超えて、新たな価値を創出するCPSへ。
人口・年齢構成の変化という人類共通の課題への貢献を目指す。

この研究拠点には、長い期間をかけて築き上げてきた基盤があります。2012年からの第2期R-GIROにおいて「ものづくりによる医療健康技術革新研究拠点」として、小西をプロジェクトリーダーとして工学、薬学、スポーツ健康科学の研究者が集まり、マイクロ・ナノテクノロジーからロボティクスまでの高度なものづくり科学技術を医療・健康領域に生かすことを目標に、活動をスタート。続く2016年からの第3期R-GIROでは、「工学、薬学、生理学の融合が生み出す“からだを活性化する”新技術」をテーマに、より具体的に、「筋機能」を中心に人のからだを活性化するデバイスや技術の開発に挑みました。今回の第4期R-GIROにおいては、そうした基盤を活かしながら、新たにマネジメントを専門としシステムデザインを行う第1グループを置くことで飛躍を図ります。
これまでの研究拠点においても社会実装を目指した取り組みは行われてきたものの、出口としてのビジネスマーケティングの議論にとどまる傾向がありました。本プロジェクトでは、それを大胆に転換。第1グループにおいて、技術的知見による「あり得る姿」、文系知見による「あるべき姿」から、社会的価値を満たしELSIをクリアした「ありたい姿」を導き出す議論を異分野融合で行うことから始め、そのデザインのもとに第2〜4グループが社会実装・社会貢献を目指した研究を行います。
そうした新たな視座、手法により構築された新しいCPSは、単なるDX(デジタル・トランスフォーメーション)の域を超えて、総務省の目指す「人間の生命保護を前提にサイバー空間とリアル空間が完全に同期する社会へと向かう不可逆的な進化によって新たな価値を創出する」ことへの答えとなり、Society5.0 のためのイノベーションモデルとなる可能性を持っています。この研究により、人口・年齢構成の変化という人類共通の課題を解決し、地球共生社会の実現への貢献を目指していきます。

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【終了】立命館大学-UBC ジョイント・シンポジウム
15th Joint Symposium of Ritsumeikan University and The University of British Columbia

日時:3/17(金)13:00-17:20 (open 12:30)
場所:Large Conference Room,ROHM PLAZA 5F, Biwako-Kusatsu Campus(BKC), Ritsumeikan University

【終了】小西聡プロジェクト グループリーダー徳田昭雄教授が担当するシンポジウムのご案内

日時:2023年2月10日(金) 13:20-16:25(懇親会 17:00-18:30)
場所:立命館大学 大阪いばらきキャンパス A棟2階・中ウイング2階 AC231   オンライン:Zoomウェビナー