Voices for future leaders修了生紹介

5期生

吉川 昌孝

吉川 昌孝Yoshikawa Masataka

京都精華大学
メディア表現学部
学部長

  • 株式会社博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 所長
  • 京都精華大学メディア表現学部 学部長

立命館西園寺塾を通じてのご自身の変化や成長について

50歳を過ぎて全く新しい集団のなかに身を置き、錚々たるビジネスマンである同期とともに、新しい知や刺激的な体験と格闘する。そのためには、常に「正味の自分での真剣勝負」をする必要がありました。これまでの経験や現在の肩書きだけではとてもクリアできませんでした。毎週、どうにかその高いハードルを越えながら、同時に考えるようになったのは、そもそもの自分の持ち味や価値観、ひいてはこの人生で何をなすべきか(天命)ということです。私が立命館西園寺塾の経験を通じて得たものは、「自らが立命するための起点」のようなものだったと思います。
この年齢にして、一気に自分をゼロ回帰させ、自分なりの未来の生み出し方にまで目を向けさせたられたこと、これが西園寺塾に通った1年間の自分に起きた大きな変化でした。

特に印象に残っている講義・フィールドワーク・出来事はどのようなことでしょうか。また、その理由についてお教えください。

  1. 開沼博先生による「福島フィールドワーク」
    ⇒ 「日本の未来課題をリアルに体感」
    奈良・九州・京都を含め、すべてのフィールドワークが刺激的でしたが、特に福島は日本社会の未来課題を現在実感するという意味で、これからを考えていくうえで最も示唆的でした。
    近現代の未来の象徴(原子力発電所)が地震による事故によって、日本社会の将来課題を露呈するというパラドックス。映画のセットのような人口減少後の社会の姿。未来の日本社会を考えるにあたって、最もリアルに「今」を実感できるフィールドワークでした。バスのなかでの先生の解説も、その時々の風景とシンクロして、目には見えないもう一つのリアル(XR)を感じることができました。
  2. 山口周先生「ビジネスにおけるアートとサイエンスのリバランス」
    ⇒ 「21世紀の経営に必要な鉄壁なフレームワークの獲得」
    「データドリブンにより正解はコモディティ化」「アート、サイエンス、そしてクラフト(経験主義)による19世紀から21世紀の整理」「KPIの呪縛は問題の本質を隠ぺいする」「イノベーションを起こしたいと思ったイノベーターなんていない」「解決策(How)ではなく課題(Why)を創る」「リーダーシップを支援するフォロワーシップの重要さ」など、これからの組織運営・企業経営に必須のキーワードをわかりやすい事例とともに提言いただきました。
    いくつかのフレームやキーワードは、自分の仕事でもフル活用しています。さらに、この授業を受けたからこそ、11月の京都フィールドワークでの華道・香道・茶道などを「美意識を鍛える」場として実感することができました。
  3. 山下範久先生「資本主義の行方を考える」
    ⇒ 「社会を駆動する我々の動議付けの再設定こそが今求められている」
    立命館西園寺塾に通塾するにあたって、当初最も期待していた「俯瞰的視点の獲得」に対して、最初から徹底的に応えてくれました。50年・200年・500年というスパンで資本主義を捉え直し、それぞれの時代の大義名分がその進化を後押ししたことなど、巨視的視点~グローバルヒストリー的な再定義の有効性を強く感じた授業でした。
    現在の資本主義の行き詰まり、富の集中について、社会資本の活用とベーシックインカムによって排除する際のアフォーダンス発想にも通じる新たな視点は、1年の間での最大の「目から鱗」体験でした。この授業が初頭にあったおかげで、その後1年間、常に俯瞰的・超長期的な視点で物事を見る癖がついたと思います。

今後の夢や目標を教えてください。

3つあります。①はインプットの目標、②は具体的な領域、③はアウトプットの目標です。

  1. 常に知識のアップデートをするため、学ぶ環境を創って学び続けること。
  2. ポスト広告、ポストマーケティング、ポストメディアについて世に提言すること。
  3. ②の考えを基に、新事業開発や組織変革など具体的なアクションを起こすこと。

未来の西園寺塾 塾生にメッセージをお願いします。

「職住近接」ならぬ「働学毎週」が立命館西園寺塾の特徴の一つ。日常ビジネスを完全に分断して学びに集中する留学や休職通学などとは違い、立命館西園寺塾は、働きと学びが1週間のなかで繰り返されます。昨日学んだことが今日の働きの場に活用され、今日の働きの場での経験や気づきが、明日の学びの深みをさらに増す、そんな感覚を何度も実感するはずです。知らないうちに仕事に対する構えや視座が大きくなっていきます。
正直、ほぼ毎週の課題図書読破とレポート作成、講義の受講とその後のまとめレポート作成というサイクルは楽ではありません。綿密なスケジュール管理なしでは脱落しかねません。ただそれをクリアできるようになるころには、セルフマネジメント力も大きく向上しているはずです。
なにより、この1週間のサイクルを毎週毎週繰り返すことで、インプット欲求とアウトプット欲求の両方が刺激され、目の前の仕事に対してはもちろん、自分の殻を破るような新しい挑戦をすることにも役立つはずです。変化の激しい時代だからこそ、学びは一生必要になり、知はアップデートし続けなければならないと実感しています。
是非頑張って、自分の視野や視座を広げていってください。