Voices for future leaders修了生紹介

9期生

福井 彰一

福井 彰一Fukui Shoichi

株式会社竹中工務店
経営企画室 企画部 副部長

立命館西園寺塾を通じてのご自身の変化や成長について

西園寺塾第9期の修了式を終えた今、私が西園寺塾での日々を振り返るたびに感じることは、今回の学びの機会を通して、私自身の仕事への向き合い方や他者への接し方、そして物事の考え方が変わったということです。その変化は、他者からの見た目には気が付かないほどの僅かな変化かもしれません。しかし、その変化は日々積み上がり、大きな変化へとつながると確信しています。なぜ確信とまで言えるのか。それは、2月18日の修了式のこと。3名の塾生が、修了式に際し、挨拶をされました。一人一人の個性が溢れ、厳粛な場であるはずの修了式も、9期生の自然体が引き出されていたと感じました。その理由は、多くの人と共に学ぶ喜び、楽しさへの確信。そして、その学びを仕事に活かそうとする覚悟がありました。私にとってこの確信と覚悟こそが、日々の変化につながっていくのだと信じています。
中島隆博先生が、講義のなかで「問いを切り出す」ということを仰いました。問いを切り出し、考えに、考えぬき、そして覚悟を持つということだと私は受け止めました。そこから私なりのキーワードとしてまとめたのが、「問いを切り出し、覚悟を持つ」という言葉です。ただ、覚悟を持つには、考えて、考え抜かねばならなりません。そこで思い出されるのは、中島隆博先生から、講義のなかで教えていただいた「人の頭を借りて考える」ということです。覚悟を持つには、考え抜く必要がありますが、それには、自分一人の思考では不十分なのです。視点、視野、視座いずれをとっても、たった一人のものよりも、複数の目で見ることで、見えてくることもあるのだと思います。そう考えると、確信と覚悟をもつ仲間が二十人もできたことは大きな変化です。この大きな変化の影響を受けた私の日常での小さな変化が積み重なり、それがまた、他者への大きな変化へとつながるのではないかと思うのです。私が西園寺塾を志望した理由も、このあたりの学びと変化への渇望が根源にあるのかもしれません。そして、その渇望は今、満たされるとともに、新たな知の探究へと私たちを誘ってくれるのです。

特に印象に残っている講義・フィールドワーク・出来事はどのようなことでしょうか。また、その理由についてお教えください。

  1. 中島隆博先生の講義
    前期と後期の2回の講義と後期の講義での往復書簡。1年に満たない期間にもかかわらず、学びの意味と自分自身の変化を感じさせてくれたのは、中島隆博先生の2回の講義を通じたやり取りと後期の講義での往復書簡である。前期の講義で与えられた「人の頭を借りて考える」ということを、以後の講義のそれぞれの場面で他の塾生の主張・意見を見聞きするなかで自分にはない視点を得られたこと。特に思考の奥行きの様なものが出来たと感じられたことは西園寺塾一つ一つの講義を総体として意味あるものにしてもらえたと感じている。また、後期講義(最終講義)での自分自身との往復書簡は、認める際には気恥ずかしいと感じていたが、改めて、客観的に…それは中島先生の仰った「自分の頭を人の頭にようにして考える」行為を通じて、西園寺塾での学びの棚卸しが出来たように感じた。
  2. 細谷雄一先生の講義
    西園寺塾での学びの刺激には様々な種類があり、どれも得難い経験となった。しかし、そのなかでも、昨年来続くロシアによるウクライナ侵攻をはじめとする混沌とした国際政治の最前線で研究や発信をされている細谷先生の講義は、貴重な場であった。加えて、課題図書に挙げられた『戦後史の解放Ⅰ 歴史認識とは何か』(著:細谷雄一)では、ロシア・中国・韓国・イスラムと日本を取り巻く国際政治を様々な地域、民族・宗教・文化等の視点で見る一連の講義の総決算の様な内容で、改めて各講義を担当された先生方の仰る「冷静に相手国の情報を得る」ことや「自国の歴史だけではなく、相手国の歴史を、データをもとに相対的に見る」ことの意義を教えていただいた。この視点はビジネスにおいても有用である。
  3. 京都フィールドワーク
    歴史と伝統に培われた京都の凄みを感じられたフィールドワークであった。そのなかでも、私自身が建設業に従事していることから、清水寺や仁和寺の建築や仏教美術を伝承する取り組みが印象に残っている。私が従事する現代の建設業において、時間軸が長いとはいえ、40年から50年程度のスパンで考えることが多い。古い伝統建築を対応することもあるが、たいていの場合は数十年で解体と新築を繰り返すことが多い。それに対し、清水寺や仁和寺での取り組みは、使用する木材を植林し、そこから伐採加工し、使用するまでの200年から300年単位の時間軸の長さがある。加えて、長くなったとはいえ人の人生、100年程度に対し、数百年スパンの計画を立案し、維持し続けていることに改めて、歴史と伝統を守り抜くという矜持を感じる。

今後の夢や目標を教えてください。

私自身の時間を公私という意味で、仕事と個人の2つの軸で考えてみたいと思います。

まず、仕事軸では、いま従事する仕事を通じて、業界全体の底上げや活性化につなげていきたいと考えています。まだまだ妄想レベルですが、想いを共有できる仲間を増やして、社会に好影響を与えてきたいと思います。

一方の個人軸としては、その活動を充実したものにするために、西園寺塾での学びの継続をしていきたいと考えています。当面、同じ9期生の皆さんと定期的な学びの場として、輪読会や企業ミュージアム視察を企画する予定です。今年で開講10年を迎えるため、これまでの受講生の皆さんとの知見の交換の場を持つことが出来ればと考えています。様々な変化が起こり、その変化が加速度的に進む世の中になり、一個人、一企業では十分な対応が出来ない状況になっています。その変化に流されず、また、後追いではなく、乗り越えていくための経験と知識の統合ができるのが、西園寺塾のつながりだと思います。公私ともに学びを軸に有意義な時間にしていきたいと考えています。

未来の西園寺塾 塾生にメッセージをお願いします。

西園寺塾は、揺るぎない学びの場づくりへの想いがあり、その想いのもとに著名な講師の先生方、その価値を共有できる仲間、そしてその学びをしっかりとサポートいただける事務局の方がおられます。これまでの経験と知識をアップデートさせる場として存分に活用してください。ともに学び、ディスカッションできる日を楽しみにしています。新たな問いを切り出す仲間の登場を心待ちにしています。