研究室は「科学技術教育」と「科学技術研究」の場である、をモットーに、日夜教育と研究に取り組む。教育においても研究においても主役は学生であり、教員は学生が自分を磨き、仲間と教えあい、研究成果によって人の役に立つこと、を支援することを目標にしている。
また、国際化にも力を入れており、研究室が世界から学生が集まり世界へ学生が出ていく「疑似海外」となることを目指している。
当研究室の名称は「ナノバイオエレクトロニクス研究室」であり、主な研究分野は、ナノスケール半導体デバイス工学、集積回路技術を応用したバイオケミカルセンシング、バイオケミカル燃料電池解析、の三つです。一番目の「ナノスケール半導体デバイス工学」とは、数ナノメートル(数十億分の1メートル)程度の電子デバイスでの物理を解明することにより、コンピュータの性能向上に役立てる研究です。近年の電子機器で不可欠なトランジスタとよばれる半導体デバイスは非常に微細であるため、電磁気学や量子力学を駆使した特性解析が欠かせません。この研究では、極微細トランジスタの特性をコンピュータシミュレーションによって予測していきます。二番目の「集積回路技術を応用したバイオケミカルセンシング」とは、電子機器で用いられる集積回路チップを用いて、生体や化学物質を測定する研究です。数100ナノメートル程度のトランジスタを組み合わせた電子回路を設計し、そのような複雑な回路を多数搭載した数ミリ四方のチップを作製し、それによって血液・尿・唾液などに含まれる化学物質を検出します。このようなチップによる医療検査や健康管理を可能にするため、今までにない低価格・高性能・超小型の検査デバイスを目指しています。
日本をはじめとする世界の国々では高齢化が着実に進行し、低価格で高品質の医療を提供することが今後の最重要課題の一つとなります。私たちは研究を通してこの問題の解決に貢献したいと考えています。最後の「バイオケミカル燃料電池解析」では、生物が体内で行う化学反応を人工的に作り出すことで、食品などに含まれる糖分やアルコールから発電する方法を研究します。このようなバイオ燃料電池で生じる現象をコンピュータシミュレーションによって予測し、企業での実験研究や製品開発に役立てています。
当研究室での研究の特色は、電気電子工学と物理学を基軸として、化学・生物・医療・環境といった幅広い分野と融合した革新的研究を行うところです。研究の中核は、あくまで電気電子工学とその基盤となる物理学です。研究室の学生はこれらを徹底的に磨き、半導体デバイスや集積回路技術についての深く広い理解を習得します。そして、これらを直接的に追及してナノスケール半導体デバイス解析や集積回路設計に取り組むだけでなく、これらを応用した生化学分析や超小型センサ開発にも挑戦しています。エレクトロニクスと医療はこれからますます融合していき、いままでにない新しい診断手法や検査デバイスが次々と生み出されることが期待されています。従来の技術分野の境界を超え(Beyond Borders)、異分野の専門家と共同することで、私たちも未だかつてない新しい技術を生み出そうとし続けています。
このような研究文化を支えているのが「多様性」と「外向性」です。「多様性」とは研究室の学生の多様さを指しており、さまざまな興味や文化背景や得意分野をもつ学生がいることを意味します。半導体が好きで仕方ない学生がトランジスタと集積回路に没頭する側で、もともと薬学・農学を志望していた学生が白衣を着て生化学実験をしています。イスラム圏からの留学生が、宗教的に禁じられている成分が食品に含まれていないか検出するセンサの研究を自ら提案して取り組んでいます。このような多様性は視野を広げることを大いに手助けしています。もう一つの「外向性」とは、自分の興味や専門に閉じこもることなく、好奇心を外に向けることを指しています。集積回路設計を専門とする学生がバイオセンサ実験に立ち会い実験内容について質問し、バイオセンサ実験をする学生が測定機器内での回路動作について質問するといったことを通して、アイデアや知識の交換が行われます。以上のような研究文化は、研究での強みであるだけでなく、学生を飛躍的に成長させる教育の場としての強みでもあります。
大学とは、みなさんが社会で大きく活躍するための準備をする場所だと思います。高校卒業後すぐに就職するのではなく、4年間ものあいだ大学で過ごして、それから就職する。その間に学費や生活費が発生するわけですから、その投資に見合うだけのものを得る場でなければなりません。みなさんが大学で得ることができるものは、今のみなさんが想像できないほど幅広く、深く、大きいものでしょう。専門知識、思考力、精神力、自己管理力、対人力、リーダーシップ、英語力、広い視野、多様な経験、一生モノの仲間たち、など数え上げればきりがありません。
ここで、たしかに学歴は無視できない要素かもしれませんが、私は上述したような「実質的な力と強さ」のほうがより重要だと思います。経済がグローバル化し、新興国が次から次へと台頭し、科学技術での革新がますます加速している。このような環境で競争し協創するうえで、肩書きは必ずしも決定
的要因ではないと思います。日本国内でのちょっとした大学名の違いが、海外でどれだけ認知されているでしょうか?より大切なのは、その大学・学科・研究室で、どれだけ力をつけることができるか、そしてどれだけそのための支援を受けられるかだと思います。少なくとも立命館大学は、そのような環境を提供しつづける努力を全力で行っています。もう一つ重要なことは、好きなことを極めることだと思います。力をつけて強くなる過程は必ずしも楽ではありません。なんとなく就職で有利そうだから、両親や友人に勧められたから、という動機だけではなかなか持続しないでしょう。いっぽう「好きでしかたないこと」が「大学で学ぶこと」とうまく関連していれば、寝食を忘れて時間をかけても苦にならないし、いくらでも極めてやろうと思えるでしょう。なによりその過程が楽しいので、楽しんでいるうちに気が付けば高い能力が身につくことになります。まだ自分が「好きでしかたないこと」が明確でないかもしれませんし、「大学で学ぶこと」との関連もよくわからないかもしれません。それでも、できるだけ関連付けられるよう志望する学科のウェブサイトやシラバスを調べたり、高校の先生やご両親と相談したりして、心底から学びたいと思えることを見つけてほしいと思います。そしてあなたの夢をかなえてください。
私は元々電気電子系の学生ですが、高校時代は生物の勉強が大好きでした。授業で学んできた電気電子に関連する知識だけではなくて、生物や化学に関係がある知識も学べると考えて宇野研究室が魅力的だと思いました。それから、最初に宇野先生からの研究室の話を聞いたとき「研究室に色々な人が来てほしい」や「勉強や研究は楽しくやってほしい」などの先生の言葉を受けてこの研究室を選びました。研究は大変でもやっぱり楽しくやりたいからです。
理工学研究科 電子システム専攻
電子システムコース 博士課程前期課程 1回生
今は、食べ物の中に入っているものを調べてくれるセンサーを最終目標にして、グルコースとアルコールを同時検出できるセンサーの研究を行っています。従来の化学センサーは単一目のセンサーが多いのですが、自分自身の目標のセンサーを作るためには、多項目のセンサーが必要だと考えています。今は基礎的な評価に止まっていますが、将来は宗教の関係でアルコールや豚肉が食べられない私のような人が、目の前の食べ物の中にそれが入っているかどうかをすぐ調べてくれるセンサーを開発したいと思い、日々研究を頑張っています。
研究とは未知の領域に飛び込むようなものだと思っています。最初は先のことがあまりわかっていないが、その先にこそ様々な新しいものが発見したり自分のことも成長したりできると信じているので、毎回の実験が楽しくて仕方ありません。研究がつらくても新しい発見と新しい自分を楽しめばいいと私は思います。それに、大変な時にも周りの研究室のメンバーや母国の家族が応援してくれたり、皆とお祝いしたりすることもとてもいい思い出になると思います。
大学院を修了したら、まずは日本で就職し数年間働こうと思っています。外国で就職することは大変そうですが、種々な体験ができると思います。母国に帰ったらその経験を生かして自分の会社を設立することを目標にしています。高い目標ではありますが、様々な人に役に立てる会社を作りたいと思っています。
※この学生はマレーシアからの留学生として日本語で研究に取組んでいます。上記の文章はシャキリンさんが日本語で作成したものです。