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理工学部の最先端研究

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宗本晋作建築計画研究室

  • 担当教員 宗本 晋作

デザインは「人の行動を観察する中から生まれてくるもの」と位置づけ研究に取組む。暗闇では光が当たる場所に目を向ける、という人の性質を利用し、全体を暗くした展示室の中で光に照らされたレントゲン写真が浮かび上がる展示などを行っている。また、2011年には東日本大震災の被災地の小さな漁村に仮設の集会所をつくり、建設を通じた被災地支援にも取組んでいる。

研究内容

デザインを“人の行動を観察する中から生まれてくるもの”と捉えています。そして人の行為を分析し、デザインに活かす。あるいは、デザインの裏付けとして分析手法を取り入れる。そうして生まれた建築は、力強く人を惹きつけると考えています。

人の行動をつくる、建築設計
「暗闇では光が当たる場所に目を向ける、という人の性質を利用します。実際に視線の方向を調べる装置(注視点計測装置)を用いて実験すると、明るい個所に視線が長く留まります」。人の視線を自然に集め見やすく印象的な展示とするため、全体を暗くした展示室の中で光に照らされたレントゲン写真が浮かび上がる展示方法を実施しました(2010年京都大学博物館「科学技術Xの謎」企画展)。
人が共通して持つ習性は、視線の動きだけではありません。「傾斜した場所に寝転ぶ時は高い方を頭とします。勾配によっては、背を預けて座ります。建築の床や壁がフラットでそれぞれが直角に交わらなければならないルールはありません」。あるところはゆったりと座れるように、別の場所はちょっと寝転ぶのに都合がよかったり、曲線で構成された家があってもいいはず。そのような新しい設計に、理由と説得力をもたせるために人間の行動理論を研究します。

感性を分析し、好みを予測する
「iPhoneが好きな人は、スタイリッシュなデザインが好きなはず。可愛いものが好きな人の持ちものは、自然と可愛いものが多くなる。人の感性を分析すれば、“より好かれる”設計ができるかもしれない」。ある空間について、縦幅、横幅、高さ、壁の色など、空間を構成する要素を組み替えながら、被験者に好き嫌いの判断をしてもらうと、人それぞれに好みのパターンがあることが分かります。この好みのパターンを把握し、人の好みに近いかどうかを確率で表します。

このように人間観察を続け、「生物としての習性」のような行動を誘発するデザインを理論的に説明し、建築設計に活かそうとしています。

研究の特色

人間の行動や感性を“設計の創造性の原動力”として捉えています。建築空間や環境のデザインとその評価、人間の知覚や行動、感性を対象とし、実践的な環境の中で研究活動を行うところに特色があります。

生理学的なエビデンスに基づく、新しい設計方法の研究と実践
「設計者は、個人の感覚や経験に基づいて、手を動かし、模型を覗き、人に満足していただけるデザインを考えます。そもそも人のデザインに対する見方や印象、行動が予測できるようになると、設計がしやすくなるかもしれない」。近年、人間のモニターリング技術や非線形の解析手法等により、建築や都市における空間と、人間の知覚・行動・感性との複雑な関係を、複雑なまま扱うことが可能になってきました。これらの手法を用いて、人間の感性や視覚、脳の生理学的な反応をモデル化し、設計の方法に取り込む試みを研究の特色としています。「設計方法は考案するだけではありません、使ってみます」国内外のプロジェクトや実施を前提とした設計競技等に取り組みます。常に新しい設計理論の創造とその実践をテーマとして、実践的な活動を通して、常に新しい建築を創造する方法を模索しながら、社会に貢献できる研究室を目指しています。

実践的な環境が人をつくり、成長させる
「2011年、被災地の小さな漁村に、仮設の集会所をつくりました。研究室のメンバーで六角形と五角形のパネルを組み合わせたドーム型の施設です。建築を通じて、社会に関わる。これらの体験は、学生自身が将来に向けて、自分の考えを育むきっかけとなることを実感しました」。
社会の中で、いくつもの困難を乗り越え、モノづくりや研究の楽しさを学び、一生懸命取り組んだ時の達成感は、人を成長させます。これらが身近に得られるよう、実践的な取り組みを研究の特色としています。

このように、研究活動を通した社会との関わりの中で、学生自身がこの分野で学ぶ誇りと面白さを身近に感じ取れるよう、また自身の成長のきっかけを得るように配慮しています。

受験生へのメッセージ

私たちは、夢を共有し、一緒に勉強する仲間を待っています。哲学を持って、実践的な場で人間力を高めれば、活躍の場は無限に拡がります。

社会につながる学びの環境で、夢を実現しよう。
建築は、「夢を実現する」ことが大切な分野です。この大学には、教員・学生が一丸となって夢を持ち続け、社会の中で実践しながら建築をつくり続ける環境があります。もちろん失敗もあります。モノづくりの楽しさは、手を動かして失敗を重ねながらも、作品を完成させることによる達成感を味わうことにあります。大変な時期もありますが、仲間が一つになって、組織力で乗り切り、皆が「建築の面白さ」「モノづくりの楽しさ」「夢を実現する達成感」を共有したときの喜びは、計りきれません。

活躍の場は無限大、まずは一緒に建築哲学を育もう、
「私が“人”を意識した設計をするように、学生にも何か軸を持ってもらいたい」。

そのために積極的に社会とつながり、刺激を得る場をつくります。教員は指導者として大きな枠組みを設定します。そこから学生自身が刺激を得て、自主的に研究テーマや課題を設定し、活動する。これが本大学の建築教育の環境の特色となっています。
ぜひ、それぞれの個性を重視してそれらを伸ばしてゆく教育・研究指導により、個性を重視した創作活動が促進してもらいたい。さらには、学生が意欲を持って、モノづくりに際して新しい建築を考える、“自身の建築哲学”を育んでもらいたい。自信で育んだ強い信念があれば、社会の課題を解決するための、「今はまだない新しい価値」を生み出すための、将来の可能性と活躍の場が無限に拡がります。

受験生の皆さん、夢をもって入学してきてください。
「モノづくりの楽しさ」を、教員が身をもって示します。
「哲学」を共有する仲間も待っています。
自分の将来に夢を持って受験勉強を乗り越え、一緒に設計・研究に取り組み、夢を実現させましょう!

研究室学生インタビュー

宗本晋作建築計画研究室を選んだ理由は?

学部の三回生のときに建築計画研究室の震災復興プロジェクトに参加させていただき、実際に設計した建物をセルフビルドで作るという体験を通して、机上だけでは学べない多くの大切なことを理解することができました。これらは社会に出た後で生かされることだと確信しましたし、先に経験することが出来て本当に良かったと思いました。そして、大勢の人が関わる大プロジェクトをまとめる先輩方に憧れも抱きました。
どの学問でも学びを深めるにはインプットとアウトプットを繰り返す必要がありますが、建築ではそのプロセスがより大切です。プロジェクトを通してそのサイクルを自然と行えるのがこの研究室の魅力だと思ったのと同時に、リーダーシップのとれる先輩とプロジェクトを生み出す行動力を持っていらっしゃる宗本先生の元で成長したいと思ったのでこの研究室を選びました。

理工学研究科 環境都市専攻
建築都市デザインコース 博士課程前期課程 1回生

今、取り組んでいる研究は?

研究というよりも前述したように何個かのプロジェクトをリーダーとして同時進行で進めています。実際に働きだしたら同じように同時進行が当たり前なのでいい練習になると先生もおっしゃっていますが、しっかりと道筋を立て、多くの人をまとめるのはとても苦労します。リーダーということで責任をとらなければならないプレッシャーと、予定通りにプロジェクトを完遂しなくてはならないという焦りと常に向き合っています。
具体的には、先輩方が培ってくれた震災復興プロジェクトの延長として震災復興のまちづくりに関わらせていただこうとしています。建物単体の問題だけでなく、行政や経済や社会など様々な人が関わるまちづくりを外部の者としてのメリットを使いつつ、住民と行政の間の緩衝剤になれるように計画を練っているところです。

研究をしていて楽しいときはどんなときですか?

やはりやりきったときです。必ず反省や後悔もつきまとうのですが、プロジェクトが成功した時の嬉しさはとても大きいです。特に震災復興プロジェクトでは、こちらはボランティアをしているというよりは、むしろ関わらせていただき、学ばせていただいているつもりでいろいろしているのですが、すごく感謝していただけることや、逆に元気をもらうことがあり、その瞬間に感動したりします。今後も学生の今しかできないことを惜しみなくやり続けたいと考えています。

将来の目標は?

いつまでも建築をつくっていきたいと思っています。そしていつかまちづくりにも関わっていけたらと思います。建築業界は低迷が続き、そしてこれからは日本では特に深刻な問題となると思います。震災もありエネルギー問題や地球環境問題もいよいよ本格的に対策を講じなければならない時代が到来します。そんな時代にモノ作りの職能を活用するために、我々はその方法を考えていかなくてはなりません。つまり、建物をデザインするだけではなく地球、人々の関係性や価値観をデザインする必要があるのです。
そこで私はこの学科と研究室で学んだことを存分に生かし、自分なりの信念を持ってデザインし続けていきたいと強く思っています。そして私のデザインをベースに、皆さんの生活が幸せになることを目標としたいです。