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伝統を背負い、再び伊勢路へ 藪田虎志朗主将が誓う地方勢トップ

 大学駅伝日本一を決める全日本大学駅伝が11月1日に開催される。熱田神宮をスタートし、伊勢神宮を目指す全8区間106.8kmのコースで、各大学のトップランナーたちが頂点を目指して襷をつなぐ。昨年は予選会で涙をのんだ立命館。今年は最終組で逆転劇を演じ、2年ぶり37回目となる伊勢路への切符をつかみ取った。立命館の復活へ、1年間の悔しさを胸に再び全国の舞台へ挑む主将の藪田虎志朗(スポーツ健康科学部4回生)に大会への想いを聞いた。(文・写真:立命スポーツ編集局)

藪田虎志朗選手(スポーツ健康科学部4回生)

 昨年の予選会敗退は、立命館にとって大きな転機となった。長年にわたって出場を重ねてきた全日本大学駅伝。その歴史が途切れたことは、選手たちに大きな悔しさを残した。主将もその一人だ。自身は予選会に出走することすらできず、チームの力になれなかった。「チームに迷惑をかけてしまい、やりきれない気持ちでいっぱいだった」と当時を振り返る。さらに、長く続いてきた出場の歴史を途切れさせてしまったことに対しても、喪失感を抱いていたという。

 そんな悔しさを経験した主将にとって、チームを率いることには大きな責任が伴った。就任当初を振り返り、「1回生の時にあれだけ背中の大きかった主将になるのだという責任感」を感じた一方、伝統ある立命館で自分がチームを引っ張っていけるのかという不安もあったと明かす。それでも、主将として選手全員との対話を増やし、チームが同じ方向を向くことを大切にしてきた。競技面だけでなく、日々の生活やルールに対する考え方まで、立命館の長距離パートとしてどうあるべきか伝えることを意識しているという。

 昨年の予選会での敗戦から見えてきた課題は明確だった。故障者の多さに加え、練習では走れても試合で結果を残せない選手が多く、上位争いに加われる選手も限られていた。さらに、出場メンバーが固定され、新たな戦力がなかなか育たない状況も続いていた。そこで、この1年間は試合で力を発揮することに重点を置き、練習メニューの見直しや、レースで上位争いを経験する機会を増やすことに取り組んだ。

 変化は選手たちの意識にも表れた。以前のようにただ練習をこなすのではなく、なぜこの練習が必要なのか、自分の走りには何が足りないのかを考えるようになったという。主将はこうした変化を「学問としての陸上競技」という言葉で表現する。また、無駄な力を抜き、最もエネルギー効率を高めて走る技術である「さぼり走り」といった走法の習得もチームの共通意識として挙げた。練習の目的を理解し、自分自身の走りを見つめ直す。その積み重ねが、試合での結果にもつながり始めた。

 京都インカレや関西インカレでは、入賞争いに加わる選手が増加。これまで一部の選手に頼ることもあったチームに、新たな戦力が台頭してきた。主将もこうした変化に手応えを感じている。現在のチームは、普段の練習から互いに声を掛け合い、試合では勝負にこだわる集団だという。一方で、競技を楽しむことも忘れていない、オンとオフの切り替えができることも、今の立命館の特徴だ。

 競技面だけでなく、チームとしての在り方も見つめ直した。地域貢献活動などを通じて、周囲から応援されるチームになるために何が必要かを考え、あいさつや言葉遣いといった身近な行動から改善を図った。走ることだけに目を向けるのではなく、日頃から周囲への感謝を忘れない。こうした取り組みも、チームの意識を変えるきっかけとなった。

 迎えた今年の選考会。優勝を目標に臨んだ立命館だったが、出場権を懸けた争いは最後まで予断を許さなかった。それでも最終組で巻き返し、2年ぶりの本大会出場を決めた。なかでも存在感を示したのが水野颯也(スポーツ健康科学部、2回生)だ。独走で個人一位を獲得し、大舞台で自己ベストを更新する走りでチームを伊勢路へと導いた。さらに、これまで上位争いに加われなかった選手たちも、レース終盤まで競り合う姿を見せた。主将は「エースの誕生と、Bチーム、Cチームの台頭」を収穫に挙げる。主力選手だけでなく、チーム全体の底上げが進んでいることを印象づける結果となった。

 しかし、主将に満足した様子はない。「今年の選考会では優勝を目標にしていたので嬉しいという気持ちにはならなかった」。自身も出走できず、仲間に支えられたという思いが強かった。それでも、昨年の敗戦を引きずることなく、再び出場権を勝ち取ったことには大きな意味を感じている。悔しさを知るチームが、1年かけて伊勢路への道を切り開いた。

 今大会で掲げる目標は「地方勢トップ」。これまで立命館は関東勢に勝つことを目標としてきたが、その壁は厚い。そこで、関東勢と渡り合うことを数年後の目標に据え、その実現に向けた今年の目標として地方勢トップを掲げた。全国の強豪との差を縮めるためにも、まずは地方大学の中で結果を残したい考えだ。

 目標達成に向けた戦力も整いつつある。主将がチームの強みとして挙げるのは「役者が揃っているところ」。長い距離を得意とする選手から短い距離で力を発揮する選手まで、各区間に対応できる選手がそろう。選考会で個人1位に輝いた水野をはじめ、新たな戦力の台頭も心強い。全8区間にわたる長い戦いでは、区間ごとに求められる役割も異なる。それぞれの持ち味を生かした区間配置が、目標達成への鍵を握る。レースで重要となるのは、序盤から流れに乗ることだ。主将は1区から良い位置でレースを進め、後半に単独走となっても安定したペースを刻むことが必要だと考えている。そのため、レース後半でも余力を残しながら走れるよう練習を重ねてきた。各選手が自分の役割を果たし、良い流れを次の走者へつなげることが求められる。

 主将は出走する選手に対し、今ある力を最大限発揮するとともに、関西一を決める大会である丹後駅伝につながる走りを期待する。また、出走しない選手にも「来年は俺が走る」という気持ちを持ち、全力でチームを支えてほしいと語る。選手層が厚くなった今だからこそ、走る選手だけでなく、サポートする選手も含めた総力戦で伊勢路に臨む。

 自身の走りについては「欲を出さず、自分に求められている仕事をこなす」と冷静だ。「キャプテンとして戦況を覆すような走りというよりは、土台を支えるような走りをしたい」。主将として派手な走りでチームを引っ張るのではなく、与えられた役割を着実に果たすことで仲間を支える考えだ。

 最上回生となり、同期と襷をつなぐ機会も残り少なくなった。1回生の頃に見上げていた主将の背中。今度は自らがチームを率いる立場となり、2年ぶりの伊勢路を迎える。昨年の悔しさを知るからこそ、仲間とともに全国の舞台に立つことへの思いは強い。 「地方勢トップを目標に襷をつなぎ切り、立命館の名をもう一度伊勢で轟かせます」。主将はそう力強く意気込んだ。普段から応援してくれる人々へ、感動やわくわくを届ける走りを誓う。

 昨年の予選会敗退から1年。故障や選手層の薄さといった課題に向き合い、チームの立て直しを図ってきた立命館。2年ぶりに挑む伊勢路で、その成長を結果として示せるか。地方勢トップを懸けた戦いが始まる。

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