男子陸上競技部
SPORTS
- SPORTS REPORT & TOPICS
- 【特集】過去最強チームを築いた2019年・男子陸上競技部長距離パート
【特集】過去最強チームを築いた2019年・男子陸上競技部長距離パート
-
TAG
-
YEAR & MONTH
SPORTS
SPORTS
2020.01.17
立命館大学男子陸上競技部にとって、2018・2019年は飛躍のシーズンだった。
2018年には関西インカレの対校の部で念願の総合優勝。また、この2シーズン中に立命館大学新記録が計13種目で生まれ、そのうちの4つが関西学生記録となった。
立命館大学男子陸上競技部:過去2シーズンの立命館大学新記録
立命館大学男子陸上競技部:2019年全日本インカレ成績
このうち、長距離パートでは2019年にトラック(5000m、10000m)、ロード(ハーフ、マラソン)、競歩(5000mW、10000mW、10kmW、20kmW)の計8種目で立命館大学記録が更新され、出雲駅伝では2年連続で入賞(2018年7位、2019年6位)。競技力を確実に伸ばしている。
今回は2019年度の長距離パートの主力3選手と高尾憲司コーチに、今シーズンについて振り返ってもらった。(以下、写真提供:立命館大学男子陸上競技部)
【3選手の経歴】
今井崇人(スポーツ健康科学・4回生)兵庫・宝塚北高時代の5000mの自己記録は15分01秒。1年間の浪人生活を経て立命館大学に入学。3回生から頭角を現し、全日本インカレ10000mで2018年4位入賞、2019年7位入賞。2019年11月に関西学生記録を樹立(10000m・28分31秒76)。
高畑祐樹(経済・4回生)滋賀・水口東高時代に近畿インターハイ5000m7位。今シーズンは「ダブルエースの1人」としてチームを牽引。出雲駅伝で2018年2区区間4位、2019年1区区間6位、2019年全日本インカレ5000m12位。立命館大学記録保持者(ハーフマラソン・1時間03分02秒)。
山田真生(経済・1回生)岐阜・中京学院中京高時代に全国高校駅伝と都道府県男子駅伝を経験。大学1回生で5000m13分50秒74と10000m28分58秒88を出した次期エース候補。
2019年度は「過去最強」のチーム
2018年はエースの今井が全日本インカレ男子10000mで4位入賞、チームは出雲駅伝で7位入賞、関西学生駅伝では2年ぶりの優勝を決めて「関西の雄」の存在をアピールした。
2019年は今井と高畑の「ダブルエース」を軸にチームはさらに成長。出雲駅伝では2009年の第21回大会以来となる過去最高順位タイの6位入賞を果たした。
11月の全日本大学駅伝には、立命館大学初の「入賞」を目指して出場。1区で11位につけ、7区終了時には10位。前の2人を抜けば8位入賞、という位置で最長区間の8区を走り出したのはエースの今井。しかし、今井は横隔膜の痙攣の影響で本来の走りができず、2つ順位を下げて12位でフィニッシュ。
今シーズンはチーム初の全日本大学駅伝入賞とはならなかったが、5名が5000m13分台、4名が10000m28分台をマーク。これは、男子陸上部長距離パートおける過去最高水準の選手層だった。
チームはこれまで以上に底上げされたが、ポイントとなったのは主力選手に故障者がいなかったことだ。高尾コーチは「練習の質は過去最高だったが、その中でも強度と量のバランスがよかった」と今シーズンの練習を振り返った。
競技生活はメリハリを持って楽しく!
2019年の長距離パートは上記のように過去最高レベルであったが、選手は口を揃えて「陸上を楽しんでいる」と話す。
学生から積極的にコーチ室に行くことは珍しくなく、学生は高尾コーチとの信頼関係を築いている。また、学生の自主性を重視して、各自ジョギングの練習日にコーチはあえて選手たちの練習を見ないという。
その一方でチーム内には厳しさもある。高尾コーチは「競争意識を作ることが必要」と、部内のランキング表を選手だけでなく保護者にも共有する。そして、学生として競技以前に、学業との両立を図ることは当然のことである。
今回取材をした1回生の山田は伸び盛りのルーキー。
「このチームの雰囲気が良くて自分に合っている。質の高い練習は毎回レースみたいで、普段からチャレンジできる」
山田は1回生からレギュラーに定着しているが、チーム内で競争することが純粋に楽しいという。次期エース候補は「再来年のユニバーシアードを狙いたい」と、先の目標を見据えているが、高尾コーチは「土台がしっかりしてくれば将来は関西学生記録を狙える」と評価する。
このように1回生からレギュラーの選手もいるが、それとは対照的に今井と高畑は1回生からレギュラーではなかった。今井は1年間の浪人期間を経て入学し、現在よりも10kgほど太っていたというが、当時は部の練習についていける状態ではなかった。
「自分のペースでやってもらっていいよ」
高尾コーチは今井を急かすことはなく、じっくりと育成した。そして、今井はその2年後には全日本インカレの10000mで4位入賞を果たす。焦らず、着実に1つ1つ積み重ねたことで高校時代は県レベルだった選手が、2年間で全国レベルの選手にまで成長した。
そんな今井とともに実力を伸ばしていったのが同期の高畑。彼もまた長距離パートの雰囲気を存分に楽しむ1人である。「自分には陸上の才能が無い」と謙遜しつつも、今井と遜色のないレベルまで走力を磨き、今シーズンのチームを牽引した。
11月の関西学生駅伝では主力選手だけでなく、学内8番目の選手も存分に実力を発揮。立命館大学は1区から1度も首位を譲らない完全優勝で2連覇を達成した。全8区間中、7区間で区間賞を獲得。それらはすべて区間新だった。
学生時代の経験が社会人で生きる
関西学生駅伝を2連覇したが、ダブルエースの2人にはまだやり残していることがあった。全日本大学駅伝を12位で終えて今井と高畑は責任を感じていたが、2人は2020年春に大学の卒業を予定しているため、次回の全日本大学駅伝の舞台で雪辱を果たすことができない。
そこで、高尾コーチは今井と高畑に、11月の八王子ロングディスタンス・10000mで関西学生記録の更新を目標とさせた。
レース当日は雨が降って風が吹く厳しいコンディションながらも、今井と高畑は序盤から積極的にレースを進め、終盤に差し掛かったところで今井が先頭を奪う。高畑はそこで今井に離されたものの、最後の200mで気力を振り絞り今井との差を詰めた。
結果は今井が28分31秒76、高畑が28分32秒39と、2人はともに1998年に前田貴史(京都産業大学)が記録した28分33秒4の関西学生記録を21年ぶりに上回り、先着した今井が10000mの関西学生記録保持者となった。
2人の大学最後のシーズンは“悔しさと嬉しさ”が混じっていたが、それでも2人にとって過去最高の記録でシーズンを締めくくったことには大きな意味がある。3月の大学卒業後に今井は旭化成へ、高畑はトーエネックにそれぞれ実業団選手として進む。
特に今井が進む旭化成は、高尾コーチが現役時代に所属したチームでもあり、2017〜2020年のニューイヤー駅伝で4連覇中の名門。
「全日本大学駅伝での悔しさがあったからここまで来れた。これで、安心して実業団に送り込める」と、高尾コーチは胸をなでおろした。
男子陸上競技部では競技以外にも、パラアスリートや伴走者との合同練習、ランニング教室への講師として参加等、ランニングを通じての社会貢献活動を積極的に行なっている。
高尾コーチは「在学中は勉強や競技だけでなく、色んなことにチャレンジして卒業後には社会で活躍する人になって欲しい」と、学生たちにエールを贈る。
今井は在学した4年間を「立命では“自分で考える力”を養うことができた」と振り返り、高畑は未来の受験生に向けて「陸上を楽しみたいなら、立命でアツい4年間を過ごしましょう。自分の熱意と努力でいくらでも成長できます!」と、笑顔で話した。
2020年も男子陸上競技部からまた新しいスターが生まれるかもしれない。
文:河原井司(フリーライター)
2009年立命館大学経営学部卒。男子陸上競技部在籍時に全日本インカレ、出雲駅伝、全日本大学駅伝に出場。関西学生駅伝4連覇を経験。