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"勝利の喜びを分かち合いたい" 秋の立同戦開幕 硬式野球部 片山正之監督×応援団 中村優衣団長
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2024.10.17
関西学生野球秋季リーグで10月19日から行われる「立同戦」(わかさスタジアム京都)に臨む硬式野球部の片山正之監督と、応援団団長として熱いエールを送る中村優衣さん(経営学部4回生)が、同志社大学との伝統の一戦に向けて高まる想いを語り合います。創部101年目を迎えた今年から母校の指揮を執り、チームを任された片山監督と、スタンドから勝利を信じてひたすら全力で応援を続ける中村さん。応援される側、応援する側の代表として、それぞれの理念や応援文化の醸成に向けて話し合い、学生たちへ「立同戦」の応援を呼び掛けながら、秋の大一番に向けて決意を新たにします。
―まずおふたりの自己紹介をお願いします。
片山:1979年3月に経営学部を卒業し、トヨタ自動車に入社しました。そこで仕事をしながら、選手として8年プレーし、コーチを7年、監督を3年間務めました。計18年間、社会人野球に携わり、その後は社業に従事して定年を迎え、今に至っています。
中村:経営学部4回生で吹奏楽部に在籍し、応援団団長を務めています。 大学に入学して吹奏楽部として応援活動に参加するなか、「エンジ隊」の先輩方が格好いいなと思い、2回生から「エンジ隊」に入りました。「エンジ隊」はスクールカラーの「エンジ」と、「演じたい」という想いから、吹奏楽部とチアリーダー部の有志によって構成される演舞チームで、応援団の指揮を担うパートです。
片山:私の時代と応援団の印象が随分違う。今の応援団の構成を初めて知りました。今春、挨拶を交わした時に、女性の応援団団長と聞いて、驚いたのを覚えています。立命で女性の団長は初めてですか?
中村:私で5人目です。今年の関関同立の中で女性の応援団団長は私だけです。
―それでは応援団の特徴や理念を聞かせてください。
中村:吹奏楽部140人、チアリーダー部40人、計180人で構成し、「日本一感動を与える応援団」という団理念のもと活動しています。今年はそれを体現するため、「環(めぐる)」という言葉を目標として掲げています。応援団に関わるすべての方との出会いを大切に、感謝を伝えながら活動すること、団員同士ひとりひとりが手を取り合い、吹奏楽部とチアリーダー部の2部がどこよりも一体となって応援することを目指しています。リーダー部の存在が目立つ大学もありますが、立命館はリーダー部がない分、誰がどのような活動をしているか、非常に見えやすく、仲良く活動している所も特徴の一つです。
―硬式野球部には長い歴史と伝統があり、多彩な人材を輩出しています。
片山:1923年(大正12年)に創部し、昨年100周年を迎えました。部員は選手、スタッフ、マネージャー、アナライザー(分析担当)を含め157人在籍し、日本一を目標に京都市内の柊野総合グラウンドで活動しています。これまで60人がプロ野球に進み、現在、横浜DeNAベイスターズの東克樹投手、東北楽天イーグルスの辰己涼介外野手、埼玉西武ライオンズの金子侑司内野手(今季限りで現役引退)ら6人が現役でプレーしています。古田敦也(元東京ヤクルトスワローズ捕手、監督)、長谷川滋利(元オリックスブルーウェーブ、MLB投手)もOBです。古田くんは私とポジションも同じで、トヨタ自動車の後輩にもあたります。
「100年の歴史を超えて変革へ」
―母校の監督に就任した経緯を教えてください。
片山:創部100年の昨年、日本一の目標を達成できず、次の100年に向けて新たな歴史を刻めるように、新しい土台を作り、チームを変革するというミッションで、監督を引き受けました。社会人で選手、監督を務めたことが、就任のきっかけとなったのかもしれません。次の100年に向けて、常勝チームを作りたいと考えています。
―どこから変革するのでしょうか?
片山:今年1月に就任し、初めてグラウンドを訪れた時、野球の技術や戦術とは別のところで、日本一を目指すチームとして改善すべき点が多いと感じました。挨拶をはじめ、身の回りの整理整頓、施設の清掃など、基本的なことができない。そこで「誰でもできる当たり前のこと」を、「誰でもできないくらい徹底的にやろう」と学生に呼び掛け、グラウンド内外、寮生活、学校生活、授業態度…、一番の土台部分から変えることからスタートとしました。最も大切にしているのは「5つのS」です。整理、整頓、清掃、清潔、しつけ。毎日、キーワードの「5S」を口にしています。朝、5時30分から練習が始まるので、4時30分に起床し、まず清掃を始めますが、これを徹底するのに3ヶ月かかりました。グラウンドもそうです。何かを踏んでけがをしないように、ボールや物が落ちているのをきれいにするなど、誰でもできることをやろうと言い続けています。最近では周囲から、「選手たちの雰囲気が変わってきたね」と聞くこともあります。応援団の方々は何か感じますか?
中村:まず、応援団とすれ違った時に挨拶をしてくれる選手が増えたと感じます。以前、試合中にスタンドにいる選手たちは、自分の世界に入る姿が目につきました。今では少しずつ一体感が生まれ、より声を出して応援できるようになったと思います。スタンドから見えるグラウンドの選手も、応援団の存在に気付いて反応してくれます。
片山:本当ならうれしいな。対戦校側のスタンドで選手と応援団が一つになり、規律正しい応援をしていたのに感心したことがありました。相手側の応援はベンチからよく見えるんです。他大学のスタンドでの応援を見習うよう選手に伝えたことも影響するのか、最近では応援への意識もかなり変わったように思います。
中村:硬式野球部の皆さんにはどういう応援をしてほしいかを、いつも年度初めに聞いていて、私たちが考えた応援をただやるのではなく、選手の方からこの曲がいいなどと、リクエストしてもらっています。毎年、新曲を2曲ほど入れて、楽譜作りから始めています。伝統的な応援をするというよりも、選手と一緒に応援を作っていくことを大事にしています。
立命スタンドを震わす、応援団の挑戦
―中村さんは先輩の格好いい姿を見て「エンジ隊」に入られたと聞きましたが、もう少し詳しく教えてください。
中村:最初に応援が楽しいなと感じたのは高校野球でした。立命館宇治高校2年(2019年)の時です。夏の甲子園のアルプススタンドで一体となった瞬間は、本当に楽しいと感じる時間でした。「応援って楽しい」という気持ちを他の団員、そして応援団以外の学生も含めて多くの人に知ってほしいとの想いから「エンジ隊」に入りました。今でも、その想いを胸に団長として活動を続けています。
片山:180人のメンバーをまとめ上げるのは大変なことだと思います。心掛けていることはありますか?
中村:できるだけ多くの人の意見に耳を傾けて、どんな活動や応援をしたいのか、皆で話し合い、多くの声をできるだけ取り入れるようにしています。今年「環」と言う目標を掲げたように、団長だけがやりたいことをやるのでなくて、格式ばらず一緒に手を取り合って頑張る方向性を全員で確認しています。
片山:硬式野球部でいうと、まさに監督のようだね。監督として方針を立てた上で、選手の意見や考えと擦り合わせていく。その過程が難しい。
私が就任してから、戦略、戦術などをひと通り選手に説明しました。それは、先ほどの挨拶や5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)と同じく当たり前のことばかり。投手には「ストライクを投げよう」。打者には「全部ストライクを打とう」。走者が出たら「全力で走ろう」。「それがなぜできないの?」の繰り返しでした。「なぜストライクを打たないの?」と聞くと「狙っていた球と違いました」と言う。ホームランやヒットを打てと言っているのではありません。「ストライクを振る」という方針を実行できていない。そのことの意味、「なぜ、当たり前のこと、シンプルなことできないのか?」ということを、こちらが問い続けることで、それにより学生たちが自分自身と向き合いながら、考え続けることが大切だと思っています。なぜできないのか、考えに考え抜いた先に、一人ひとりの成長、チームの進化があると信じています。
春季リーグが10連敗に終わって、4回生が自分たちでミーティングをしてなぜ負けたのか、振り返ってくれて、次に選手たちはどういう練習をすれば勝てるのか、考えてきてくれた。秋季リーグに臨むにあたり、チームとして変化が生まれてきているように感じます。
中村:全員が当たり前のこと実践する…。応援団にとっても活動していく上でのヒントになりそうです。普通に楽器を吹いて、チアが演舞をして、、そこから選手に勇気を届け、人に感動を与える応援にどう変換するかが難しい所です。相手に気持ちが届いてこその「応援」だと考えています。応援団にとっての「当たり前」が何かと考えた際に、相手のこと・届ける先を想って、それぞれができることをその時々において全力で取り組むこと、少なくとも、そのような想いをもって毎回の応援に臨むことが、一つの答えである気がします。簡単なことではありませんが、一つひとつの応援機会を大切に振り返りながら、どうやったらもっと盛り上がるのか、応援とは何か、団員一人ひとりが考え続けることで、団理念「日本一感動を与える応援団」に近づける気がしています。「当たり前のことを実践する」という言葉を応援団に持ち帰って、団員のなかでの当たり前を分かってもらえるような年にしたいです。
―応援する楽しさを一般の学生にどう発信していきますか。
中村:応援風景などを随時、SNSで発信していて、応援団の存在を知ってもらうために、学生の前に立つ機会を増やそうと活動しています。球場に足を運び、スタンドから立同戦を応援する楽しさを、衣笠キャンパスだけではなく、OIC(大阪いばらきキャンパス)でも発信したいと考えています。
片山:選手達はグラウンドにいるので、応援の後押しは十分に感じています。先ほど例に出しましたが、対戦した他大学がピンチの時、ベンチに入っていない100人ほどの選手と応援団がすごい一体感で盛り上がって応援してきて、立命の選手が逆に身を引くように圧倒されたことがありました。ベンチ外の一体感は本当に大事です。
中村:スタンドが無言にならない空間を作る必要があると感じます。
片山:バックネット裏で応援している父母やOBも巻き込めればいいですね。
中村:応援機会がない学生や、大学野球を見たことがない学生など、色々な人を巻き込み、団員には「自分の限界を突破してほしい」と思っています。殻を破れると、バックネット裏で見ている方々も、応援団と一緒に応援するのが楽しいと感じてもらえるかも知れない。そこから自然と学生にもつながっていく気がします。今ある応援スタイルを維持するのではなく、常に進化することが大事。立同戦という伝統の一戦に様々な観客が来る中で、応援団も普段はやらない新企画を取り入れようと、執行部を中心に会議を進めています。皆さんの期待に応えられるように、19日からの立同戦は立命スタンドを震わせたいです。
伝統の立同戦に向けて
片山:我々が3、4回生の時は、立同戦が優勝を決める戦いでした。優勝した時は紙吹雪が舞い、スタンドも満員でした。
中村:その写真、見たことがあります。そういうスタンドにしたくて…。
片山:同志社が鉄腕アトムで、立命は星飛雄馬だとか、試合前日に円山公園で前夜祭があって、前の日の余韻が残る満員の球場で、優勝決定戦という大舞台。スタンドも満席になりますよ。
同志社大学は、とりわけ負けたくない相手。お互いに勝ち続け、優勝を懸けた立同戦を多くの人に観てもらえるような、そんな関係でありつづけたいと思っています。
―中村さんにとっては「最後の立同戦」になります。
中村:絶対に負けられないし、選手に負けさせられない。応援団としては同志社が一番のライバルです。試合の勝ち負けに加えて、応援団としてもプライドが胸にグッと来る。相手のスタンドがお互いに見えるので、手を抜いた応援はできません。後悔がないように最後は選手の方々と喜びを分かち合いたい。
片山:やはりチームが強くならないといけませんね。紙吹雪を飛ばす雰囲気にならないと。
中村:今はクラッカーを飛ばしています。8回が始まる前に、同志社と一緒にカウントダウンを始めて、「せえ〜の」で鳴らしています。立同戦しからやらないビッグイベントです。
―片山監督は秋季リーグの関西学院大学戦で初勝利、関西大学戦で初の勝ち点を収めました。
片山:春は10連敗して、秋の開幕の関西学院大学戦に負けて、次の2戦目で勝った。キャプテン(竹内翔汰外野手)から「遅くなりました」と、ウイニングボールをもらいました。感激しました。勝つことがこんなに難しくて、こんなにうれしいものだと…。負けて泣くより、勝って泣く方がいいな。でも、関西学院大学との3戦目は負け、選手が皆泣いて、それを見てもらい泣きしました。負けて泣くとは思っていなかった。相当、悔しかったんだろう。そして関西大学との3戦目に延長11回サヨナラ勝ち。勝ち点が取れて、もうすでに3回泣きました。やってきたことは間違いない、大丈夫、そう信じています。
中村:次も絶対、勝たせます。
―学生時代の印象に残る試合と、今の選手に伝えたいことを教えてください。
片山:1回生の秋、同志社戦がデビューでした。延長17回に0―1でサヨナラ負けした試合です。相手の主軸に強打者の田尾安志、(元東北楽天イーグルス監督)がいて、勝負を避けて17回にも(四球で)歩かせたら、その後の打者にサヨナラヒットを打たれた。打ったのが今の同志社の花野巧監督です。デビュー戦がこんなインパクトのある試合ですから、はっきりと覚えています。3、4回生の優勝も記憶に残っているけど、やはりこの試合ですね。
中村:延長17回って、すごい。私は昨秋の立同戦で谷脇弘起投手(産業社会学部卒・現日本生命)がノーヒットノーランを達成した試合です。スタンドの盛り上がりは本当にすごくて、最高潮になった昨秋の雰囲気を標準にして、この立同戦でもさらに力を入れたいと思います。
片山:私は選手に技量だけではレギュラーなれないよと、よく言っています。人間性が重要です。4年間、立命館大学硬式野球部に在籍してよかったなと、社会人になって気付いてくれるような指導を心掛け、社会人では必ず即戦力になってほしいと願っています。卒業してから野球を続けるのは、学年でせいぜい3、4人。多くても5人くらいです。それ以外は普通の企業に進みます。だからこそ人間性や思いやりが大切です。私はトヨタ自動車でこれらを徹底的に教えられました。社会に出ると何よりも問題解決能力が必要です。発信力、コミュニケーション力を鍛え、本当に立命の野球部に在籍してよかったと思えるように育てるのが、私の最終目標です。
―トヨタ自動車でプレーし、指導者で過ごした18年間は学生時代とそれほど違いましたか?
片山:学生の時は練習をして勝てばいいと思っていました。トヨタ自動車では上司に野球の技術以上のものを教えられ、鍛え込まれました。世界一の車の技術はもとより、製造現場のラインが本当にきれいで、ゴミひとつ落ちておらず、ほこりすらない。先ほど話をした「5S」を定年まで言われました。机の上を見てよく怒られましたものです。整理整頓の意味を今の学生は答えられません。きれいにすることは、ものがどこにあるか、はっきりと分かるようにすることです。トヨタ自動車の製造現場では極力時間のロスをなくし、製造能力を高めます。そこには改善能力、創意工夫が欠かせません。野球のグラウンドにも、必要なものがどこにあるのか、全員が分かるように無駄を省いていくことが必要です。それが社会に出てから役に立ちます。
― あらためて、学生たちと日々向き合うなかで大切にされていることを教えてください。
片山:「なぜ」「なぜ」を毎回、実行しています。「なぜ打たれたの?」と問うと、「ボールが高めに行きました」と答えが返る。「なぜ高めに行ったの?」と再度聞く。2、3回「なぜ」「なぜ」を繰り返すと、真の原因にたどり着きます。「あっそう」で終わると、同じことの繰り返しです。何回か「なぜ」をくり返し、「ではどうするの?」と改めて問い直す。「究極の問題解決」ですね。
―中村さんは何か片山監督にお聞きしたいことはありますか。
中村:応援団はどういう組織、存在であってほしいでしょうか。応援される側に立ったことがないので、プレーしている選手のモチベーションを上げるにはどういう応援が必要か、教えてください。
片山:チャンス、ピンチ、試合が均衡状態の時、それぞれの場面の応援のメリハリが選手には大きな力になるはずです。特にピンチの時、相手を威圧するような応援が勇気づけられます。
中村:ゲームの流れ、雰囲気をつかむことが大事ですね。
片山:スタンドにいる部員ももっと応援の輪に巻き込んでください。ぜひ一緒に選手の応援団長を作りませんか。
中村:一緒に応援してくれると大変うれしいですね。
―最後に大学スポーツを盛り上げていくために、どのようなことをお考えですか。
片山:何よりも勝たないといけません。強くならないと応援にも力が入らない。
中村:応援に行く体育会が今は硬式野球、アメリカンフットボール、サッカー、陸上競技に限られているので、他の体育会を知り、応援に行く機会が増えればうれしいです。最近はスマホでの配信や結果を見て、それで終わってしまう人が多いので、試合の勝ち負けだけではなくて、スタンドで応援することや、応援をしている雰囲気が楽しいんだよと、発信し続けたいと思います。
片山:応援では母校の「立命」の名を数知れず口にし、時には叫びます。校歌もそう、応援歌のグレーター立命もそう。こんな機会はまたとないし、スタンドへ行けば母校というものをきっと体感できる。そこで紙吹雪を飛ばせるような立同戦にしたい。
中村:同じキャンパスに通い、同じ授業を受けている硬式野球部の学生の普段とは違う姿を見ることができます。ぜひ現地に駆けつけて見てほしい。頑張った選手から得られるものが必ずあるので、一緒に喜びを分かち合いたいと思います。
片山:硬式野球部の応援に行ってみよう、一般の学生にそう思ってもらえるように、部員たちの日頃の態度や人間性がより重要になりますね。
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