こころの健康

異常な事態における正常な反応 ~心の健康を保つために~

 新型コロナウイルス感染拡大に伴って、私たちは、身体の健康のみならず、心の健康の危機に直面しています。皆さんの多くは、先行きのわからない不安、例えば、これから授業はどうなるのだろう、まだ入学したばかりなのに友だちを作る機会もなくて大丈夫だろうか、研究が滞って大丈夫なのだろうか、就職活動はどうなるのだろう、アルバイトができなくて生活が苦しくなる、など、様々な不安を抱いていることと思います。
 また、家にこもりきりで、一人暮らしの方は、ほかの人と会う機会が少なくなり、孤独を感じたり、家族と一緒に暮らしている方は、家族をうっとうしく思ったりしているかもしれません。外出する機会が限られ、ストレスもたまりやすいことでしょう。
 今世界が直面していることは、普通の状態とは異なり、いわゆる「異常な状態」です。このような状況の中で、不安、抑うつ気分、孤独感、家族との葛藤などを感じるのは、「正常な反応」です。決して異常なことではありません。これは、災害や犯罪の被害にあった場合も同様で、心理援助の世界では「異常な事態における正常な反応」と呼んでいます。
 感染症に感染しないように、身体の健康に注意することも重要ですが、心の健康にも注意を向けてみてください。不安や孤独感は「正常な反応」で、時間とともに消えていくことがほとんどですが、新型コロナウイルスの脅威がいつまで続くかわからない中、不安や孤独感を放っておくわけにはいきません。皆さんは、不安になった時、普段ならどうしていますか?多くの人は、親しい人に話しを聞いてもらったり、気晴らしになるようなことをしていると思いますが、「三密」を避けることが推奨されている今、友人や家族と会うことも難しかったり、気晴らしに出かけることも難しいかもしれません。孤独は、うつ病の症状を悪化させる可能性があるという研究があり、高まる不安に加えて、孤立してしまうことは大変困難な状況になるといえます。
 特に、今回の感染症拡大前から、大きな不安や抑うつ気分を抱いていた方、あるいは依存症や強迫神経症などの課題があった方は、専門家の支援が必要かもしれません。保健センターがmanaba+Rで、大学近隣の医療機関や京都・大阪・滋賀の医療機関を紹介しています(問い合わせNo1343193509)。帰省中の方は、近隣の心療内科や精神科を探してみてください。

心の健康を保つために
1. 情報の取り入れに注意する
現代社会では、24時間、あらゆる情報を得ることができます。しかし不安な時に、そのことに関する情報を取り入れすぎると、不安が増幅することがあります。信頼できる情報源からのものに絞り、そして「不安になってきた」と感じたら、一度スマホやPC、テレビを切ってみましょう。
2. 日課を決めて実行する
授業が休講となり、何もすることがないと感じている人もいるかもしれません。非日常的な状況下では、毎日同じようにできることがあることは安心につながります。日課を決めて、実行しましょう。
3. 人との関係を保つ
外出自粛をしても、孤立しないために人とつながっておくことは、孤独感を和らげてくれます。親しい人と電話やビデオ通話で話したり、メールなどでやりとりしたりして、人とつながっている感覚を保ちましょう。
家族と同居している人は、お互いにストレスがたまって、衝突することもあるかもしれません。今は、誰もが不安でストレスフルであることを思い出しましょう。時には、寛容になることも必要かもしれません。しかし、自分が辛くなってきたときには、一定の距離をとって、自分の心の健康を保ちましょう。

 英語に”Every cloud has a silver lining”ということわざがあります。「どんな困難な状況でも、何かしらの良いことがある。今すぐには見つからないかもしれないが」という意味です。皆さんの心身の健康、そして、ご自分にとってのsilver liningが見つかることを願っています。

学生サポートルームカウンセラー