カナダ留学、大きな啓発を受けた先住民族問題。自分事として捉えることができ、現地で得た新たな視点を帰国後の授業でも活かしています。
佐伯 璃莉 さん
国際関係学専攻 3回生
2回生の夏から約8ヵ月間、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学での立命館・UBCアカデミック・イマージョン・プログラムに参加していた佐伯 璃莉さん。留学中には、自らメンバーを集めてサッカークラブを結成するなど課外活動にも力を入れていたと話します。留学先として同大学を選んだ理由や現地で学んだことを伺いました。
立命館大学 国際関係学部を志望した理由や入学前に学ぼうと思っていたことを教えてください。
佐伯立命館大学 国際関係学部を志望した理由は主に2点あります。1つ目は、高校の時にもっと国際社会について学びたいと感じたからです。当時、新型コロナウイルスのパンデミック、ロシア・ウクライナ戦争が起きました。その衝撃から、今後こうしたことが突如起こる社会で生きていくためには国際関係やグローバルな問題について理解を深めておかなければならない、という思いが強くなりました。2つ目は、高校時代の卒業研究と海外ボランティア経験です。卒業研究では日本に在住する技能実習生との交流を通じて、移民問題の複雑さを目の当たりにしました。海外ボランティアでは、カンボジアの小学生と交流し、また過去の独裁政権について学習し、人権問題を意識するようになりました。
これらの影響から、国際関係学について幅広い知識と専門性を身につけられ、グローバル・シミュレーション・ゲーミングのような実践的な授業がある立命館大学 国際関係学部に魅力を感じました。
長期留学という目標を考え始めたのは、いつ頃でしょうか。留学に行くまでにどのような準備をされましたか。
佐伯長期留学を意識し始めたのは、高校卒業前あたりからです。高校では新型コロナウイルスの影響で海外研修が中止になってしまったので、大学ではぜひ留学に行きたいと思っていました。
留学前の準備は、英語力を向上させることに注力しました。英語学習以外で挙げると、留学先大学について調べることです。私は同じ留学先に行った知り合いがいたので、どのような授業や課外活動が行われているのか、事前に現地の情報を得ておきました。おかげで到着後、自分のやりたいことや、やるべきことなどをすぐに行動に移すことができました。また、ルームメイトと寮に入居する前からやり取りができる制度があったので、SNSを使ってみんなで頻繁に会話をしていました。この時点で既に仲も深まっていたため、“ルームメイトとの距離感”という不安は解消することができていました。
留学先としてカナダのブリティッシュ・コロンビア大学を希望した理由を教えてください。
佐伯まず、カナダに興味を持ったきっかけは、国際関係学部で受けていた授業「国際関係学」と、昔から読んでいた『赤毛のアン』です。この本はカナダを舞台にしており、作中のインディアン寄宿学校や先住民族同化政策の描写と、大学での授業がリンクしたこともあり、カナダに興味を持ちました。
また、ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)は海外正規学生が多いと聞いていたので、多様な文化背景をもつ人々と多く出会えるのではないかと考えました。実際、留学先で出会った友達の国籍は、10ヵ国以上になります。さらに、寮での6人での共同生活という点も魅力の一つでした。異なる国籍の学生との寮生活は小さな国際社会の体現であり、身をもって多文化共生を経験できると感じました。
留学先の大学ではどのようなことを学びましたか。
佐伯留学先の大学では、アジア研究やカナダ研究、先住民族とセトラー・コロニアリズムについて学習しました。内容は国際関係学部での学習と一致するところも多かったので、基礎知識を持った状態で授業に挑めました。授業前は、カナダについて学習するという意識が強かったですが、実際学習してみると日本の問題や自身の生活と関係していることも多かったです。
一つ例を挙げると、UBCの初回の授業で、「カナダに来たということは、あなたは先住民族の土地への侵入者です」と言われました。その後も毎授業・毎イベントで、今私たちがいる場所は先住民族の土地であることを声に出して承認する、「Land acknowledgement」というアクティビティがありました。加えて、現代カナダの先住民族格差問題について学んだとき、日本のアイヌ民族についても触れていました。「先住民族から見れば、私は侵入者」という視点は、私にとって啓発されるような気づきとなりました。留学帰国後の現在、多文化社会論や国際人口移動論といった授業を受講していますが、UBCでの学習内容とつながる部分も多く、立命館での授業をいっそう面白く感じられるようになりました。
留学先で、学業以外に頑張って取り組んだことや苦労したことを教えてください。
佐伯留学先では課外活動に積極的に参加しました。クッキングやピラティス、日本語学習会など多くのクラブに属しました。その中でも、サッカーは特に力を入れて取り組みました。部活には留学生であるため入部できなかったので、なんとか人数を集めてチームを作り、学内リーグに参加しました。毎週日曜日に試合があったのですが、ある程度レベルの高いプレーができて、とても楽しかったです。試合を重ねるうちに、帰国後に日本で再会するほどチームメイトとの仲が深まったこともうれしかったです。
他にも、キャンパス内には人類学博物館、生物多様性博物館、先住民族寄宿学校の歴史に関するセンターなど多種多様なミュージアムがあり、UBC学生は無料で利用できるため頻繁に足を運びました。特にお気に入りだったのは、日本庭園「新渡戸稲造庭園」です。ここに来ることで日本を感じていました。
苦労したことは、やはり6人での共同生活です。ゴミ捨てや掃除の役割のルーティンを作成し、ルールが記載された誓約書もありました。しかし、時が進むにつれ、それらも形骸化してしまい、共同部分が全く掃除されていない時期もありました。ルームメイトが帰省したタイミングで、一人で大掃除をするなど苦労もしましたが、今では家事スキルが身についたよい経験だったと思います。
留学の経験や学びを、今後の学生生活や卒業後の進路にどのように活かしたいですか。
佐伯留学先では、積極的にコミュニティに属して活動することの意義を体感しました。元々、私はソーシャルイベントには消極的な方だったのですが、留学中のクラブ活動などを通して新たな人々と出会い、意見を交換することの楽しさを実感しました。帰国後は、UBCで実施されていたフードバンクの取り組みに感銘を受けたことから、立命館でフードバンクの自主ゼミに属しています。この活動を通じて、地域社会に貢献することの大切さを学びましたし、将来的には卒業後もこのような社会貢献活動に携わることでより良い社会を築く一助になりたいと考えています。
交換留学を考えている在学生、国際関係学部を志望する受験生に対してメッセージをお願いします。
佐伯留学は、日本で生活をするよりも多くの苦労やストレスを感じます。しかし、それを凌駕する楽しい出来事がありましたし、苦労も人生の経験値として最終的には自己成長につながると思いますので、留学の選択肢があれば、ぜひ飛び込んでみてください。また、国際関係学部ではモチベーションや目標を高く保ち続ける友人に出会うことができました。学習内容はもちろんですが、属する「人」も国際関係学部の魅力の一つだと思います。
2024年8月更新
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