気候安定化による飢餓リスク増加抑制のための費用を算定
このたび、長谷川知子 立命館大学理工学部准教授、藤森真一郎 京都大学工学研究科准教授、高橋潔 国立環境研究所室長の参画する気候変動に関する研究グループが中心となり、将来の気候安定化目標と飢餓リスク低減を同時に達成するための費用を明らかにしました。
全球平均気温の上昇を2℃以下に抑える、さらに1.5℃以下を追求するという気候安定化目標がパリ合意で掲げられ、人類社会の主要な目標の一つになっています。同時に、国連の持続可能な開発目標(SDGs)では飢餓撲滅も優先度の高い目標です。しかし、CO2排出量を減らす等の気候変動対策が意図せぬ形で食料価格上昇を招き、飢餓リスクを増やしてしまう可能性が従来の研究では指摘されてきました。
本研究では、2℃以下に気候を安定化した場合で、2050年まで食料安全保障に対する配慮を欠いた気候変動対策を行った場合は、1.6億人の飢餓リスク人口を増大させる可能性があることが確認されましたが、それに対してGDPの0.18%の費用でこの意図せぬ負の副次的影響を回避できる可能性を明らかにしました。これは今後の気候変動政策を検討する上で、土地利用や農業市場に対する配慮を合わせて行うことが必要であることを示唆しています。
本研究成果は、2019年5月14日に、国際学術誌「Nature Sustainability」のオンライン版に掲載されました。