英文特化型学術出版 (University Press of Ritsumeikan, 略称UPR)で 初の学術研究成果を国際発信:『おいしい京都学』出版へ ~第一弾の刊行開始~
立命館大学は、丸善雄松堂株式会社との包括連携協定の取組で開始した英文特化型学術出版(University Press of Ritsumeikan,以下:UPR)の第一弾として、「A Delicious History of Kyoto: The Geographical History of Restaurant Culture in Japan’s Former Capital(原著)『おいしい京都学』ミネルヴァ書房刊、2022年」を2025年1月に電子版、冊子版で出版しました。書籍は国際的に流通いたします。
オープンサイエンスの推進に向けた海外出版体制を構築
立命館大学は、学術成果と学び社会、世界をつないでいくということに対して、進むべき方向性が一致していることを丸善雄松堂と確認し合い、2023年12月に包括連携協定を締結しました。
包括連携協定の取り組みのなか、立命館大学の学術研究成果の世界発信の具体的な取り組みとして、UPRを開始いたしました。本取組では、論文投稿と共に学術研究成果の発信には欠かせない、書籍出版に着目した新たな枠組みを検討しています。
学術出版物及び科学データへのオープンで公共的なアクセスの提供よるオープン・サイエンスの推進は、世界的な課題となっており、2023年5月のG7広島サミットや、2024年7月のG7科学技術大臣会合においても議論が進められました。一方で、これまで、日本の大学における多くの人文社会科学の研究成果は日本語の書籍として出版され、社会へと還元されてきましたが、言語の壁や大学が海外出版の流通網を持たない等の課題があり、世界からのアクセスが十分にされていない状況があります。その中で、所属研究者による論文や年間400冊以上の書籍等の知的資産を発信している立命館大学、海外出版社とのネットワークを有する丸善雄松堂に加え、丸善雄松堂のネットワークにより、270年以上の歴史を持ち、ドイツ・ベルリンに本社をおき世界的な出版・流通を担う学術出版社De Gruyterの協力を得て、3者が連携し、出版体制および海外流通網へのアクセス体制を構築しました。
第1弾の書籍の出版
UPRの第1弾の書籍として、2025年1月に「A Delicious History of Kyoto: The Geographical History of Restaurant Culture in Japan’s Former Capital」【発行・発売:University Press of Ritsumeikan with the Cooperation of Sciendo (De GruyterPoland Ltd, Warsaw)】(原著『おいしい京都学』ミネルヴァ書房刊」(加藤 政洋(文学部 地域研究学域・教授)、河角 直美(文学部 地域研究学域・教授)共著、2022年)を、電子版、冊子版で出版し、販売・流通を開始します。
出版書籍の選書にあたっては、構築した出版体制により、丸善雄松堂社のコンサルティングを受け、立命館大学の2,269冊の著書リストから候補書籍を9冊まで絞り込み、De Gruyter社の編集企画部門責任者によるレビューを受け、学内の委員会にて選定を行いました。
また、本書籍においては、日本文化資源デジタル・アーカイブ国際共同研究拠点でもある立命館大学アート・リサーチセンターが提供する『近代京都オーバーレイマップ』などの立命館大学が有するデジタル・ヒューマニティーズの学術資源が活用されています。
今後の展開について
立命館大学は、2024年に文部科学省のオープンアクセス加速化事業の採択を受け、学術論文出版社との転換契約や大学独自の論文投稿支援制度であるハイ・インパクトジャーナル投稿支援制度によるゴールドオープンアクセスの推進や、機関リポジトリであるR-Cubeを活用した学術論文のグリーンオープンアクセス体制を構築し、学術研究成果の世界への発信力強化に向けた総合的な取り組みを推進しています。
また、丸善雄松堂では、国立情報学研究所(NII)電子リソースデータ共有サービス「電子ブックメタデータ(国内)」と丸善雄松堂の電子図書館プラットフォーム(MeL)との連携を開始し、研究者や学生が研究、教育、学習に必要な文献情報を、冊子、電子の区別なくワンストップで簡便に検索し、そのままアクセスできる学術情報基盤への取り組みを進めています。両者が協力し、日本における学術・研究資料のさらなる発見可能性の向上や利活用、研究教育インフラの発展に貢献していきます。
仲谷善雄 学校法人立命館 総長のコメント
立命館大学は、学園ビジョンR2030「挑戦をもっと自由に」に基づき、2030年に向けた中期計画「立命館大学チャレンジデザイン」を策定し、社会と共に新たな価値を創造する「次世代研究大学」の実現を目指した取り組みを進めております。この度のUPRを契機に、立命館大学の学術成果や学術資源による価値を世界へ向けて継続的に発信することでオープン・サイエンスを推進し、立命館大学の研究成果が国際的に活用される基盤の構築を目指してまいります。
矢野正也 丸善雄松堂株式会社 代表取締役社長のコメント
丸善雄松堂は、創業より150年を超え、「まなびのつながりを育む」ブランド方針として掲げ、活動してきております。この度のUPRの取り組みを通し、立命館大学様の持つ日本語で書かれた/日本で作成された書籍や日本をフィールドとする学術成果・学術資源などを、英文出版の形で広く海外の研究者や社会に、届け、伝え、繋げることで、「知を鐙す」というミッションを一層進めてまいります。