2025.05.28 TOPICS

産業社会学部創設60周年記念企画 俳優 崔岷植氏講演会&孫石熙客員教授とのスペシャル対談が実施されました

 産業社会学部は、2025年4月26日(土)に以学館IG101号ホールにて、韓国の俳優である崔岷植(チェ・ミンシク)氏の講演会を開催しました。本企画は、2024年度より産業社会学部の客員教授として着任されている韓国ジャーナリスト・孫石熙(ソン・ソッキ)先生のご尽力により実現したものであり、産業社会学部創設60周年記念事業の一環として実施されました。
 チェ・ミンシク氏は、『シュリ』【日韓の映画界を強く結びつけた原点とも言える作品】(1999年)、『オールド・ボーイ』(2003年)、『親切なクムジャさん』(2005年)をはじめ、近年では映画『不思議の国の数学者』(2022年)、『破墓/パミョ』(2024年)、ドラマ『カジノ』(Disney+、2022-23年)などに出演する、名実ともに韓国映画を代表する名優です。主演映画は約40本に上り、映画以外にも舞台やドラマへの出演も多数あります。日本でも『シュリ』をはじめ、多くの出演映画が紹介されています。
 彼はカンヌ国際映画祭グランプリを受賞した『オールド・ボーイ』【日本の漫画『ルーズ戦記 オールドボーイ』が原作】の主演を務めたほか、韓国青龍映画賞と大鐘賞で数々の主演男優賞を受賞した韓国映画界の重鎮であり、韓国映画のルネッサンスを牽引した俳優の一人です。圧倒的な演技エネルギーと役柄への深い没入感が特徴で、韓国を代表する演技派俳優の一人とされ、海外の映画界や映画ファンコミュニティなどでも、韓国映画史上最高の俳優と評価されています。
 高まる期待に応えるように、盛大な拍手の中、チェ・ミンシク氏が登場し、講演会が始まりました。全体司会を務めた産業社会学部の権学俊先生から、企画趣旨とプログラムに関する簡単な説明があり、続いて学部を代表して学部長の黒田学先生から歓迎の挨拶が述べられました。
 本企画は全3部構成で、チェ・ミンシク氏の魅力を多角的に掘り下げる内容でした。第一部では、産業社会学部卒業生で経営学部の張惠英先生が、約40分にわたりチェ・ミンシク氏の映画紹介と作品世界について解説しました。これまでの作品をまとめた映像上映後、韓国映画界におけるチェ・ミンシク氏の役割と貢献、自国の映画産業保護を目的とした劇場への韓国映画の年間一定日数上映義務制度である「スクリーンクォータ制」維持に向けた活動、日本の漫画や小説を原作とした出演作品、多様なキャラクターへの挑戦などが詳しく説明されました。

第一部	チェ・ミンシク氏の映画紹介と作品世界解説(進行: 経営学部 張恵英准教授)
第一部 チェ・ミンシク氏の映画紹介と作品世界解説(進行: 経営学部 張恵英准教授)

 続く第二部では、チェ・ミンシク氏による講演会が行われました。チェ・ミンシク氏は、産業社会学部創設60周年記念企画に招かれたことへの謝辞を述べ、本格的な講演を始めました。産業社会学部の趙相宇先生による遂次通訳で行われた講演では、無気力な学生時代に出会った映画『スター誕生』と映画館の存在、演劇を学び始めてから出会った恩師との縁など俳優になるまでのエピソード、韓国におけるスクリーンクォータ制縮小に対する反対活動について語られました。

第二部 チェ・ミンシク氏の講演

 第三部では、孫石熙先生とのスペシャル対談が実施されました。まず、孫先生が去年から進行役を務める韓国の放送局MBCの番組『孫石熙の質問』でのチェ・ミンシク氏との対談映像の一部が上映され、その後、本格的な対話が始まりました。対談は打ち解けた雰囲気で、ユーモアを交えながら活発なやり取りが繰り広げられました。

第三部 チェ・ミンシク氏とソン・ソッキ客員教授との対談。左から趙相宇准教授、チェ・ミンシク氏、孫石煕客員教授、張恵英准教授

 立命館大学との縁、京都に対するイメージ(にしんそばがとても美味しかったそうです)、2024年10月日本で公開された映画『破墓/パミョ』への反響、映画に対する思い、そして若い学生たちに向けて積極的に行動することの重要性を力強く語りつけました。スクリーンクォータ制と文化的な多様性を維持することの重要性についても言及し、今後の出演作品についても触れました。

 質疑応答の時間では、作品選びの基準や日本映画への考えについて語られました。質問に答える中で、普段から日本の作品も多く鑑賞しており、中山美穂さんの訃報に衝撃を受けたことや、好きな俳優として高倉健さんと役所広司さんの名前を挙げられました。

 最後は、社会学研究科長の市井吉興先生の閉会挨拶をもって、3時間半以上にわたる企画は幕を閉じました。予定を大幅に超えた17時30分過ぎに終了したにもかかわらず、会場はあたたかい雰囲気に包まれ、企画参加者との写真撮影タイムも設けられました。写真撮影では、チェ・ミンシク氏が様々なポーズで気さくに応じられ、紳士的なお人柄がうかがえました。
 今回の講演会は、韓国映画の隆盛を支えてきた功労者の一人であるチェ・ミンシク氏の、ジャンルにとらわれない圧倒的な演技力と活躍、役柄への深い理解と努力、そして演技に対する真摯な姿勢が感じられる貴重と時間となりました。何よりも、スクリーンクォータ制縮小反対運動における彼の行動力は、単なる映画界の制度に関する意見対立に留まらず、一人の人間が自身の強い信念に基づき、社会に対して具体的な行動を起こすことの重要性を示唆するものでした。俳優としてだけでなく社会的な問題にも積極的に声を上げる彼の行動の原動力は、俳優としての良心と社会に対する強い責任感、そしてそれらを具体的な行動へと移す勇気にあると考えられます。
 今後、映画という文化を通じて、私たちに新たな感動を与えてくれるだけでなく、社会の一員として、文化的な価値を守り育てることの意義を社会に問いかけ続けてくれることを期待しています。

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