2025年11月29日(土)大阪いばらきキャンパス(以下OIC)にて、育てる里山プロジェクト主催・里山講座「里山の木を地域の施設に使う」を実施しました。

第一部では「NPO法人フォーラムひこばえ」(以下「ひこばえ」)より理事長 井上公子さん、「うたの・ひこばえ児童館」館長 正垣彩子さん、「企業組合もえぎ設計」より建築士 成宮範子さんにがご登壇。第二部では「中田林業」代表 中田明さん(2019・2023・2024年里山講座登壇)、「NPO法人 京都・森と住まい百年の会」代表理事 田村宏明さん(2024年里山講座登壇)にパネリストとして加わっていただきました。
講師:井上さん 正垣さん 成宮さん(左から)
パネリスト:中田さん(左)田村さん(右)

育てる里山プロジェクトのメンバー、一般参加含め計15名の方が参加。 里山の木をふんだんに使った建物について、設計・建築時のエピソードや木の建物が利用者にもたらす影響など・・・・皆様に多岐にわたりお話しいただきました。
まず「ひこばえ」について井上さんよりご紹介。2003年、京都市右京区で地域住民の有志による会が発足。地域をより暮らしやすい場所にするため、自分たちの力で実行し始めたのが「ひこばえ」の始まりだそうです。「老若男女みんなが集まれる場所を作りたい。」と井上さんのおじいさまの代から造園業の倉庫として使っていた土地・建物を利用。改築・改装工事を進め、現在は児童館・放課後等デイサービス・就労支援・カフェなど・・・様々な活動が展開されています。
2022年には児童館・地域交流などのためのコミュニティ館が完成。このコミュニティ館のご説明は、改築へ携わった成宮さんへバトンタッチ。「池や樹木など緑の多い周辺環境に負荷をかけないよう、馴染むよう、木造建築にする。」という事をまず決め、設計に入られたそうです。1階と2階に分かれてしまう子供たちを繋ぐという意味も込めて、北山杉の天然しぼり丸太を通し柱とし、シンボル的に部屋の中心に2本配置。また近年の木造建築は集積材が多いが、木そのものを見える形で利用することも大切にし、府内産・国産の材を可能な限り使用しているそうです。窓もできるだけ大きく取り、周辺の緑の多い環境が身近に感じられるようになっています。
この建物が地域交流センター・児童館・放課後等デイサービスと活用されており、日々の活動を見守り、ご自身も職員として勤務されている正垣さんは「職員としては建物の中にいても自然を感じられ、リラックス作用がある。また子供たちにおいても、学童にくる子は学校での刺激を持ち帰ってくる子が多いが、いい意味で緊張感なくリラックスできる空間になっていると思う。」「建物に使われている通し柱やむき出しの梁を使って、子供たちは知恵を絞って工夫して遊んでいます。」と木をふんだんに使った建物での日々の様子をお話くださいました。

「ひこばえ」全景(オレンジがコミュニティ館)
コミュニティ館全景

二部では、中田さんからは垂木に使われている北山台杉の手入れのお話を伺いました。使える材になるまで20年はかかり、昔は軒に使われることが主だったが、最近は階段の手すりや意匠的アクセントなど様々な用途に利用されているそうです。
成宮さんとともに設計に携わられた田村さんからは「(ひこばえのある)うたのという場所から道沿いに上がって行けば北山杉の産地があり、下手の「ひこばえ」ではそこから切り出した木を使った建物で、子供たちが豊かに過ごしている。「ひこばえ」は里山と人との関わりを、里山の豊かさをどう伝え楽しむかを体現している場所である。」とお話がありました。
最後の質疑応答では、木をふんだんに使った建物について「木を使った建物はコストがかなりかかるのでは?と躊躇してしまうが・・」と質問があり、「手間はかかるが既存の住宅に比べれば長くもつ。長く使えれば最初のコストはむしろ安いと言えるはず。公共の建物にこそ100年を超えて使える材を利用するのがよいと思う。」「お客様のニーズにお応えするのが一番だが、柱を壁の外に出し呼吸ができるように、痛めばすぐわかるような造りにすることが長持ちする建物になるという提案をするように心がけている。」「木は目で見て触ってもらってこそ価値がある。公共の施設に使ってどんどん触れてほしい。」といったお話で締めくくられました。

皆様で記念撮影

立命館大学は、今後も地域・社会連携を通じて相互の信頼関係を築き、新たな価値の創造による地域の発展に貢献することを目指していきます。

関連ページ:コミュニティ共創プロジェクト (育てる里山プロジェクト)
OIC地域連携室自主事業(コミュニティ共創プロジェクト)|社会・地域連携の取り組み 大阪|社会・地域連携|立命館大学 (ritsumei.ac.jp)

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