デジタル化の進展が社会の制度・組織・意識にもたらす変化 ――研究調査助成に採択された3つの研究

 立命館大学の出口雅久特別任用教授(法学部)と堀井悟志教授(経営学部)、谷原つかさ准教授(産業社会学部)の3名の研究者による研究が、2025年度 公益財団法人電気通信普及財団「研究調査助成(人文学・社会科学分野)」に採択されました。
 デジタル技術やデータ活用の進展は、司法制度や政治のあり方、さらには企業における研究開発の進め方にまで大きな影響を与えています。今回採択された3つの研究は、司法・政治・企業という異なる領域を対象に、デジタル社会における制度、組織、そして人々の意識の変化を、それぞれの専門分野から明らかにしようとするものです。
 以下では、それぞれの研究の内容について紹介します。


司法のデジタル化と裁判所の説明責任
——AI時代の「裁判を受ける権利」を支えるために
出口雅久 特別任用教授(法学部)

 本研究は、「デジタル司法における裁判所の説明責任とAIによる判決データベースの利活用」を研究課題とし、司法のデジタル化が市民の権利保障にどのように関わっているのかを検討します。

 世界各国で司法制度のデジタル化が進むなか、裁判所が判決の内容や理由を、どのように市民に伝えるのかが重要な課題となっています。出口雅久先生の研究は、最高裁判所や憲法裁判所が行っている判決の説明の工夫や、AIを活用した判決データベースの活用状況に注目し、司法の透明性や市民の理解がどのように高められているのかを明らかにするものです。欧州、アジア、南北アメリカの国々を対象に、それぞれの国でどのような取り組みが行われているのかを比較しながら、先進的な事例や課題を検討します。さらに、デジタル技術やAIの活用が、国民の「裁判を受ける権利」をどのように支えうるのかという視点から、デジタル時代にふさわしい司法のあり方を探ります。こうした背景を踏まえ、本研究ではデジタル時代における司法のあり方を検討していきます。

 今後は、海外の研究者との国際共同研究を進めながら、各国におけるデジタル司法の実態や課題を比較法的に検討していく予定です。研究成果は、学術論文として国内外に発信するとともに、国際的な議論につなげていくことを目指しています。

全社的データ連携と研究開発の変革
——デジタル技術時代の日本企業におけるマネジメント・コントロールの再構築に向けて
堀井悟志 教授(経営学部)

 本研究は、「全社的データ連携を通じた日本企業の研究開発の変化に関する経験的研究」を研究課題とし、IoTやETLツールの導入によって進む日本企業の全社的データ連携が、研究開発の成果にどのような変化をもたらすのかを経験的に明らかにすることを目的としています。近年、デジタル技術の進展により、企業はデータの取得・分析能力を高め、データドリブン経営への転換を進めています。製品ライフサイクル全体を見通したデータの一元管理が重視され、品質やコストの分析を研究開発へフィードバックする取り組みが広がりつつあります。

 堀井教授はこれまで、デジタル技術が管理会計やマネジメント・コントロールに与える影響を調査してきました。既存研究では、AIやビッグデータの活用に関する理論的議論は蓄積されている一方、企業での実装を扱う経験的研究は十分ではありません。そのようななか、自身の先行研究では、ケーススタディ研究をもとに、管理会計やマネジメント・コントロールという観点から今後のデータ連携の展開への期待が示されています。また、事実として、AI活用の実態やデータ連携の重要性を基礎として、複数の企業でデータ統合と高度な分析への取り組みが進んでいることが確認されています。

 こうした背景を踏まえ、本研究では、全社的データ連携が研究開発の質やスピード、コスト管理にどのような影響を及ぼすのかといった組織的成果だけでなく、管理者・従業員の認知や働き方といった個人レベルの変化も含めて検討します。国内外の経験的先行研究が不足する領域に経験的知見を提供し、デジタル技術時代の管理会計ひいてはマネジメント・コントロールの理論的発展に寄与することを目指しています。


動画時代の政治と若年層の意識
——政治系動画は社会の分断につながるのか
谷原つかさ 准教授(産業社会学部)

 本研究は、「政治系動画は新たな分断につながるか:若年層における既存メディア不信等の縦断検証」を研究課題とし、動画プラットフォーム上の政治系コンテンツが、若年層の意識にどのような影響を与えているのかを明らかにすることを目的としています。

 近年、動画を通じて政治情報に触れる機会が増える一方で、既存メディアに対する不信や、世代間の意識の違いが語られる場面も多く見られるようになりました。谷原つかさ先生の研究は、こうした状況を背景に、政治系動画の視聴が、世代間の不公平感や既存メディアへの信頼のあり方とどのように関係しているのかに注目しています。オンライン調査を用いた縦断的な分析を通じて、動画視聴と意識の変化との関係を実証的に検証し、これまでテキスト中心に行われてきた政治コミュニケーション研究を、動画という新たな情報環境へと広げていきます。

 こうした背景を踏まえ、本研究では、動画時代における政治とメディアの関係について検討していきます。
 今後は、複数回にわたる調査データをもとに分析を進め、研究成果を国内外の学術誌や学会で発表していく予定です。多メディア時代において、政治情報がどのように受け取られ、社会の意識形成に影響しているのかについて、学術的な知見を発信していきます。





 本記事で紹介した3つの研究は、2025年度 公益財団法人電気通信普及財団「研究調査助成(人文学・社会科学分野)」に採択されました。
 デジタル化やデータ活用の進展が、司法や政治、企業活動にどのような変化をもたらしているのかについて、それぞれの専門分野から進められる今後の研究の展開が注目されます。

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