Voices for future leaders修了生紹介
11期生

青木 健祥Aoki Takehiro
株式会社文藝春秋
メディア事業局 メディア事業部 統括次長 兼
文藝春秋PLUS編集部
コンテンツプロデューサー
- 株式会社文藝春秋
メディア事業局 メディア事業部 統括次長 - 株式会社文藝春秋
メディア事業局 メディア事業部 統括次長 兼
文藝春秋PLUS編集部 コンテンツプロデューサー
立命館西園寺塾を通じてのご自身の変化や成長について
燃えるような青
「君はまさに今、燃えるような青だな」西園寺塾11期も佳境を迎えた2025年1月に、会社の先輩から言われたこの一言が、西園寺塾で学ばせてもらった自分にぴったりの一言だと考えています。先輩からすると、私の青木という名前にかけて、猛烈に勉強していることを表現したようですが、私はこの言葉を聞いて、「赤い炎より青い炎の方が温度が高い」ということを思い出しました。それくらいに西園寺塾での学びは、脳が沸騰する熱々の今までにない体験でした。
西園寺塾での一番大きな学びは、「一人ひとり違う自分を持っている」ということでした。こう書いてみるとなんと当たり前のことだと思われるかもしれませんが、一人ひとり違うから、考え方・捉え方も自ずと違ってきます。それは現代に生きる私たちの中で、国・人種・民族・ジェンダー・宗教や環境に留まらず、時代を越えて、原始から奈良時代、平安時代、地球を越えて、命のないものまで含めて、それぞれ違うことを認めていく作業の大切さだと考えています。世界は途方もなく広いが、際限なくせまい。水平軸の視点では、自分⇒家族⇒会社⇒自分の業界⇒日本⇒世界⇒地球⇒宇宙へと広がり、垂直軸の視点では、メタ的に世界全体のシステム⇔一人一人の人間(多様性)がつながり、時間軸では、地球の始まりから1億年先の未来まで。様々な軸で物事を考える面白さに気づけたのが、大きな学びでした。また、その違いに対しての姿勢として、「ネガティブケイパビリティ」という考え方を学ぶことができたことも自分の人生にとって大きな宝になりました。ネガティブケイパビリティとは、「答えの出ないことに対して耐える能力」を表す言葉で、急いで答えを出さずに、自分なりの答えが現れてくるのを待つ力のことです。ビジネスの世界では、どうしてもスピード感をもって結論を出すロジカルシンキングのフレームワークが求められ、「分かる人=仕事のできる人=優れた人」という公式の中から抜け出せない場合が多いと思います。ただ、不確実性の高い現代を生きる上で、ビジネスも含めてこのネガティブケイパビリティの考え方が必要なのではないかと考えています。分からないという状態にいることで、より相手に対して知ろうという好奇心が芽生えたり、他国に対しても考察を深めたり背景を調べたりすることができるのではないでしょうか。分かったふりをしない冷静さも大事だと気づかされました。
メディアで働いていると、「本物」や「真実」という表現を良く使いますが、たぶん本物や真実は一つではなく、見る角度、見る人、見る環境によって様々に変わってくるものだと思います。
青という色は高温の炎だけではなく、冷静さを示す色でもあります。冷静だけど燃えている。今までの私は、赤いだけの炎でしたが、西園寺塾で学んだことによって、青い炎を手に入れることができたと考えています。
特に印象に残っている講義・フィールドワーク・出来事はどのようなことでしょうか。また、その理由についてお教えください。
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山下範久先生
理由:最も難解な指定文献に、これから立ち向かう山の高さを実感させられました。講義では、山下先生の分かりやすい話と動きで、頭がどんどん開花していくような、脳が拡張していくような味わったことのない感覚を覚えました。自分の頭からここまで熱を感じた経験は初めてでした。考えも及ばなかったコンセプトやフレームワークに出合えたことが喜びで、今なお理解が追いついていない部分があることが今後の学びのモチベーションになっています。また資本主義の講義で学んだ、モノの側から人間の側へ包摂していくという話は、今までの世界の見方が変わるくらい、自分の中での大きな発見でした。
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中川毅先生
理由:講義の中で、してはいけないこととして語られたのが、ビジネスの伝家の宝刀である「選択と集中」と「想定と対策」だったことが一番大きな驚きと納得でした。不確実性の中でどのように生きていくのか、「レジリエンス」を持つ人間の強さを改めて気づかされる講義でした。そしてなにより、生き生きと研究内容をお話しされる中川先生の姿を見て、学ぶことの喜びを全身で感じることができ、今後の学びへの強い動機につながっています。
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京都フィールドワーク
理由:初めてづくしの貴重な体験をさせていただき、人生の大きな糧になりました。特に茶道、華道、能は今までまったく接することのなかった世界で、今回体験することができ、新しい世界が大きく広がりました。日本が歴史の中で育んできた伝統文化に触れることで、先人たちの文化に対する強い思いと、日本人のしなやかで美しい感性を体感することができました。特に一番印象に残っているのは、京都のあらゆる場面で感じた、「同じ知識を持っている人だからこそ共有できる精神の高み」があるということでした。これは日本の伝統文化に留まらず、知っていることと知らないことの差、体験することと体験しないことの差が、人間としての考え方・生き方に影響を与えるものだと痛感しました。生きていく上で、多くのことを学び体験することの重要性を再認識できる貴重な機会となりました。
その中でも一番感動したのが、金剛流の能舞台に立てたことです。実際に能を舞う体験をさせていただいたことで、一つ一つの動きに意味が込められていることを知ることができました。また能面の中間表情という考え方に心を魅かれました。能面の角度によって表情が変わるというのが驚きで、日本人の持つ細やかな感性と想像力の賜物だと思い入りました。能は全体的に簡素で抽象的な造りにすることによって、見る人の想像を無限にかき立てることができるというお話があり、日本文化の面白さとともに、私が仕事で関わっている小説の世界にも共通するものがあるなと気づきました。また今後、能と宗教との関係性や、能における建築の在り方など、深めたいテーマが続々頭の中で沸き立っています。最後にはなんといっても2泊3日の睡眠以外のほとんどすべての時間を同期と過ごせたことが最大の喜びでした。より絆が深まり、仲間と一緒に学ぶこと・体験することの価値の高さを改めて感じました。
今後の夢や目標を教えてください。
出版業界を中心に、コンテンツ業界を柔軟に大きく盛り上げていくことが目標です。
西園寺塾での学びを通して、物ごとを考える視点や幅が広がりました。何も考えなければ、そのまま見過ごしてしまっている目の前の事象に対して、顕在化されていない課題を発見し、前例に流されない方法も含め、広くて高い視野から判断していきたいと考えています。特にこれからの出版業界を変えていくためには、異業種も含めた多くの視点・考え方が非常に重要になってきます。15世紀にグーテンベルクが発明した活版印刷技術を境に大きく成長した出版の世界が、現在、ウェブメディア・動画などその形を急速に変容させています。この流れをしっかり把握して柔軟に対応していくことはもちろん大切ですが、人間の根幹にある「モノを作ること、コンテンツを生み出すこと」をしっかり事業の中心として考えていくことで、次の出版のカタチを作り出すことができると考えています。これから特に、表面上の知識に関しては、AIやコンピューターが担っていくことが予想されます。しかしここで重要になってくるのが、人間だからこそ生み出せるものだと考えています。そのために常に勉強を続けていきます。本を読むこと、同期も含め塾生や会社の同僚・友達と対話することを継続していきます。
また個人的には、西園寺塾を通して、文章を書くことの楽しさと辛さを改めて感じたので、自分の作品を書いてみようと考えています。
未来の西園寺塾 塾生にメッセージをお願いします。
筋トレをすると、筋肉痛を経て、新たな筋肉がついていきます。同じことが脳でも言えるのではないでしょうか。人間はどうしても恒常性にとらわれる(生物的にはとても重要なことですが)生き物なので、新しいことを取り入れていくということには力がいります。西園寺塾での経験は、この脳の筋肉痛をとても良い形で起こすことができる、とても貴重なプログラムだと考えています。それは今までの自分を壊していく/壊されていく体験で、「まだ自分は成長できるんだ」という自信につながります。
また、この塾での経験を通して、今まで持っていなかった「新しい言葉」を得ることができると考えています。この新しい言葉を得るために必要なものが、水源、すなわち水が湧き出る泉です。乾いて枯渇しているところからは、言葉は生まれ出てきません。この塾での大きな経験は、その水源、泉を堀り起こしていくことだったと実感しています。よく「知識の泉」という言葉が用いられますが、泉は自然に湧き上がってくるものではありません。その水源、みなもとを掘り起こしてこそ湧き上がってくるものです。掘り起こしていくために必要なものが3つあります。それは、掘り起こすためのシャベルとしての本、そして掘り方を教えていただける先生方、そして一緒に掘り進める仲間です。この西園寺塾では、いくつもの泉を掘り起こすことができました。泉を掘っていく中で、見つけることができたのが言葉であり、考え方であり、捉え方で、それらは頭のてっぺんから噴水が出るくらいの大きな勢いになっています。その水は乾いた脳を潤し、頭をやわらかくしていきます。それとともに凝り固まった自分の考えを、さらさらと音を立てながら、はき流していきます。そしてその水がいずれ大海に注ぐことになると信じています。
最後に一番大事だと考えているのは、脳の筋肉痛を起こすことも、泉を掘ることも一人ではできないということです。講師の先生方、事務局の方々の力がとても大きいです。そしてなにより一生の友達となる同期生がいることが、本当に貴重です。ともに学び、遊び、悩み、飲み、歌い。すべてのここでの経験が一生ものになる、それをこれから味わえる皆さんはとても幸せだと思います。第二の青春を楽しんでください!
2026年2月24日掲載
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