Voices for future leaders修了生紹介

12期生

姜 宗龍

姜 宗龍Kang Jongyong

サッポロビール株式会社 戦略企画部長

  • サッポロビール株式会社 
    経理部 グループリーダー
  • サッポロビール株式会社 戦略企画部長

立命館西園寺塾を通じてのご自身の変化や成長について

■「終わりなき旅」へのパラダイムシフト

「未来は予測できない。想定外だ」

振り返ると入塾前の私は、ビジネスの定石に忠実で、目標から逆算し、効率と成果を追求する。KPIを設定し、バックキャスティングで戦略を描く。それが「正解への道」だと信じて疑わなかった。しかし西園寺塾は、それを根底から揺さぶりました。

想定外のもの。右か左かわからないもの。そして偶然性。それらは「〇」か「×」かではなく受け入れるもの。最終目的地のない“終わりなき旅”を楽しむこと。その姿勢こそが、人生を豊かにする。この気づきは、私にとって最大の収穫です。

もう一つ、深く心に刻まれたのは「弱い人間」という人間観です。私たちは自律的で強い存在ではない。環境や他者、モノとの関係性の中で形づくられる存在である。この理解は、社会課題や環境問題などを見る視点そのものを変えてくれました。弱さを認めることから始まる強さ。それを、西園寺塾が教えてくれました。

特に印象に残っている講義・フィールドワーク・出来事はどのようなことでしょうか。また、その理由についてお教えください。

  1. 「未来予測は困難ではなく、不可能である」

    二重振り子が描く、決して同じ軌跡を辿らない運動。中川毅先生の講義でその実験を目の当たりにした瞬間、私の中で何かが音を立てて崩れ落ちました。「VUCAの時代だからこそ未来を想像しバックキャスティングで考えよ」という教えが、一瞬にして意味を失いました。想定に縛られず、「ちょっとした自由」を持ち続ける重要性は、今では私の思考の中心となっています。

    何より印象的だったのは中川先生ご自身でした。自作のマイクで目を輝かせながら気候変動の謎を語る姿。「想定外の時代」を絶望ではなく、未知への探求を楽しむ先生の姿勢から、大きな勇気をもらいました。過去と未来のつながりの中で、私たち現代人の果たすべき役割は重い。この認識は、今後の人生で常に心に留めておきたいと思います。

  2. 「枯れた花にも華がある」

    池坊専好先生から授かったこの言葉は、私の美意識を根底から変えました。生かすとは、それぞれのいのち、個性を尊重し、最大限の良さを発揮しながら周囲と調和すること。初めての華道体験で感じた研ぎ澄まされる集中力。陰陽和合の思想は、ビジネスにも人生にも通じる深い哲学でした。

    自身の芸術的感覚の乏しさに絶望感を覚えつつも、テーマを考え左右非対称を工夫する時間は、楽しさを超越した何とも言えない素晴らしいものでした。一輪の花に込められた日本の伝統文化が持つ精神性に触れ、効率性だけでは測れない価値の大切さを実感しました。このフィールドワークを機に池坊いけばな教室に通うことを心に決めました。

  3. 「人間に共通するのは“愚か”であること」

    戦前日本の轍を踏まないために、私たちは何を学ぶべきか。第一次大戦後の日本が犯した最大の過ちは、国際情勢の急速な変化に十分についていけなかったこと。その歴史を客観的かつ厳しく見つめる細谷雄一先生の姿勢に、真の歴史学の在り方を学びました。

    講義後の懇親会での私の問い。「結局、軍事力による恐怖心が己を守るという現実を前に絶望してしまう。人類が共有できる普遍的価値はないものか」。細谷先生の答えは明快でした。「人間に共通するのは“愚か”であること」。この言葉は不思議と絶望を与えませんでした。むしろ、人間の限界と脆弱性を理解した上で謙虚に学び続ける姿勢こそが重要だという希望のメッセージとして感じ取れました。西園寺塾で学んできた「弱い人間モデル」「ネガティブ・ケイパビリティ」「多孔的な自己」。これらすべての概念が、この一言で腹落ちした瞬間でもありました。

今後の夢や目標を教えてください。

■「問い続けること」を人生の軸に

西園寺塾での学びを通じて、わからないことを受容し「問い続けること」を実践し続けたいと思います。

最後の講義で立てた私の問いは「豊かさとは何か」です。この問いに完全な答えはありません。しかし、問い続けることに意味がある。それが西園寺塾で学んだ豊かさへの道しるべです。

「ケアの倫理」、他者のニーズに応える一連の行為。答えのない状況に耐える「ネガティブ・ケイパビリティ」。多孔的な自己を形成すること。これらを日常の中で実践します。家族、同僚、地域社会、身近な人々との関係やつながりを大切にし、「二人称の倫理」に基づいた行動を心がけます。それが、最終的には社会をより良い方向に変えていく力になると信じています。

また、西園寺塾を通じて得た「器」(あらゆるものを受け容れることができる大きな器)、その器を育て続けるために、読書を通じた継続的な学びを自分との約束事とします。

未来の西園寺塾 塾生にメッセージをお願いします。

■問いと共に歩む仲間との出会い

立命館西園寺塾は、単なる知識習得の場ではありません。ここは「問い」と向き合う場です。講義では毎回、既存の価値観が揺さぶられます。指定文献に苦しみ、事前レポートで真剣に考え、講義で衝撃を受け、事後レポートで新たな気づきを得る。この繰り返しが、いつしか何とも言えない心地よさを与えてくれます。同期との対話では、自分一人では決して到達できない視座を与えてくれます。異なるバックグラウンドを持つ仲間たちの発言に、何度も「そういう見方があったのか!」と目を開かされました。この「つながり」こそが、西園寺塾修了後も続く、かけがえのない財産です。そして、第一線でご活躍される講師の先生方、熱心にサポートしてくださる事務局の皆様との出会いこそが、西園寺塾最大の宝物です。

一年間は決して長くありません。一瞬一瞬を大切に、全力で学び、感じ、対話してください。生まれ変わっても、またこの仲間と出会い学びたい。そう思える一年間が、あなたを待っています。思いっきり学びを楽しんでください!