Voices for future leaders修了生紹介

12期生

竹内 政壽

竹内 政壽Takeuchi Masatoshi

日本航空株式会社 事業開発部長

  • 日本航空株式会社 
    マイレージ事業部FFP企画グループ グループ長
  • 日本航空株式会社 事業開発部長

立命館西園寺塾を通じてのご自身の変化や成長について

「領域展開」

思い返せば、西園寺塾に参加する前の私は、最短最速で答えを出すこと、アサーティブに言い切りポジションを取ることに追い立てられていたように思います。決断のスピードを速め、物事に白黒をつけようとすれば、思考の領域はどうしても狭めざるを得ません。しかし、西園寺塾の講義で突きつけられる課題には、そうした狭隘な思考や小手先のロジカルシンキングで太刀打ちできるものは、一つとしてありませんでした。資本主義やリベラリズムの功罪、自国中心主義が多極的に絡み合う国際政治の冷徹なリアリティ。こうした「解けない課題」を見つめ直すなかで、人間を不完全で依存し合う存在と捉える「弱い人間モデル」、あるいは安易な解に飛びつかず、辛抱強くグレーゾーンに留まり続ける「ネガティブ・ケイパビリティ」といった新たな視座を得ることができました。約1年の学びを経て、自らの思考のフィールドを、かつてない新たな領域へと展開できたのではないかと感じています。

特に印象に残っている講義・フィールドワーク・出来事はどのようなことでしょうか。また、その理由についてお教えください。

  1. 講義:中川毅先生

    シンプルに時間が経つのを一番速く感じた先生です。「『何がわかるか』よりも『何がわからないか』を明らかにすることが重要」というコメントが印象に残っています。気候システムという究極の複雑系において、「系の性質が突然変化する『相転移』は必ずどこかで起きるが、それを予測するのは絶対に不可能だ」という発言から、科学の偉大さとそれに向き合う科学者としての謙虚さを感じました。

  2. フィールドワーク:京都フィールドワーク

    茶道、いけばな(華道)、能楽、作庭など、長い年月をかけて育まれた日本文化の粋に触れる、この上なく贅沢な体験でした。京料理「木乃婦」の三代目、髙橋拓児さんの「一人の人間の人生でできることには限界がある」という言葉が印象に残っています。昆布一つとっても真に良質な品は長年の付き合いで信頼を積み重ねた料亭の手にわたり、市場に出回ることはない。こうした一見「不公平な」伝統の中に実は「合理性」があり、何代にも渡る時間の積み重ねと試行錯誤を経て今があるのだと教えられました。また、空気の感触、匂い、音、光の加減など、五感すべてに刺激を感じ、普段忘れかけていた感覚と向き合えたのも新鮮な体験でした。

  3. 出来事:講義の後にみんなで観た映画「国宝」

    講義終了後にレイトショーで映画「国宝」を観に行ったことが印象に残っています。上映開始早々に評判を聞きつけた同期の発案でしたが、おそらく西園寺塾に参加していなければ見逃していたと思います。多様な趣味、感性をもつ仲間が、素直な気持ちで気軽に自分のお勧め、推しを紹介しあう、そんな気のおけない関係性の中で自分が開かれていくような感覚を味わうことができました。

今後の夢や目標を教えてください。

他者との関わりの中で様々な決断を積み重ねていくのが人生だと思います。決断は、たとえそれが反射的なものであっても、日常的な経験を通じて蓄積し、無意識のうちに知覚、思考、行動を規定する心的、肉体的な性向(ハビトゥス)に支配されているのではないでしょうか。まもなく五十の節目を迎えます。まだまだ「天命」を知るには至りませんが、孔子が七十で辿り着いたと言われる「従心」(心の欲するままに行動しても規範を超えない)の境地を目指し、学びを通して自らのハビトゥスを磨いていきたいと思います。

子曰、
吾十有五而志于学、三十而立、四十而不惑、
五十而知天命(イマココ?)、六十而耳順、七十而従心所欲、不踰矩

未来の西園寺塾 塾生にメッセージをお願いします。

おそらく来期以降も、年代であったり組織の中の役割であったり、外形的には似たような属性の塾生が集まるでしょう。ところが驚くことに、1年近い時間をかけて様々なテーマを学び、議論し、切磋琢磨する中で、一人ひとりの個性が顕になり、気が付いた時にはかけがえのない「西園寺マフィア」が形作られていきます。皆さん、1年後を楽しみにしていてください。