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2017/6/29/のキャリア形成科目「スポーツ健康科学セミナーⅡ」において、アディダスジャパン株式会社ブランドアクティベーション・CSRマネージャーの番場三千世氏にお越しいただき、「スポーツメーカーのブランド」というテーマでご講演いただきました。


番場氏は、「スポーツは○○だ」という肯定的な言葉を100個あげて下さいと学生に問いかけ、レジュメの裏側に1分間で書けるだけの言葉を書いて下さいと言われました。残念ながら、受講生の中で、1分間で20個の言葉を書き記せた学生は1人もいなかったのですが、番場さんは、冒頭に学生に対して、スポーツに対する想いやスポーツの価値を表現するイマジネーションが重要であることを伝えられました。そして、大学を卒業するまでには、1分間で100個の言葉が書けるようになってほしいといわれました。

番場氏のお話は、アディダスの創業時から現在までのブランドヒストリーから始まりました。アディダスがなぜ、「3本線」なのかということは、技術者であり、創業者であるアドルフ・ダスラー氏が「アスリートの意見に耳を傾ける」というものづくりに対するこだわりから導かれた結果ということを知り、学生は目からうろこが落ちたような表情で番場氏の話に耳を傾けていました。またアスリートのハイパフォーマンスの追求、幅広いスポーツ分野への対応、スポーツシーンとは異なる大衆のライフスタイルウェアの提案など、顧客に何を提案し、どのようなものを届けるのかによって、ロゴマークやブランドを区別していると説明されました。またこのようなメーカーのブランディングは、重要な企業の「戦略」であると述べられ、その戦略を規定するのは、企業のミッションとそれを遂行する「組織の構造」であると述べられました。またアディダスという企業には、「コミュニケーション力」「創造力」「柔軟性」「実行力」「スピード」「リーダーシップ」「英語力」を持ち備えた人が集まっており、その上で「スポーツが好き」という風土があるということでした。

番場氏の重要な仕事の1つが、「CSRCorporate Social Responsibility)活動」であり、番場氏は、企業がCSRに手掛ける際には、2つのパターンがあると述べられました。1つは、自社が手掛ける事業領域の延長線上にある活動、つまり、本業としてのノウハウが活かせるため、効率的であり、自社の価値を直接高められる活動であると述べられました。例えば、飲料メーカーが製品をスポーツチームなどに提供する場合がそれに当たると説明されました。もう1つは、自社が手掛ける事業を補う活動であり、自社の事業とはオポジットなメッセージを届けることにより、利益の還元、イメージの改善を図り、自社の価値を間接的に高める活動であると述べられました。たばこ産業が健康増進事業や医薬品事業に寄付や支援をすることが、その一例だと述べられました。番場氏は、東日本大震災における復興支援活動の事例などをあげながら、アディダスにしかできない復興支援活動として、「スポーツができる条件」を整えるために、プレイヤーの育成、指導者の育成、場所の整備、そしてモチベーションのアップという4つの支援活動からアディダスのCSR活動について説明されました。中でも、「支援は、自立への手助け」であり、CSR活動は、単なる美辞麗句ではなく、企業価値を高め、企業を存続させるための戦略であると述べられ、企業が持続可能な存在となるからこそ、CSRに手掛けられるのだと述べられました。

全てが魅了されるようなお話しだったのですが、最も印象的だったのは、アディダスの社是でした。我々にとって有名なのは、ブランドのキャッチフレーズでもある“Impossible is nothing”ですが、社員間で共有されている価値観は、「スポーツを通して、私たちは、人々の人生を変える力がある」というものでした。番場氏の話を聞いていた受講生はもとより、スポーツ健康科学部の全ての学生は、この言葉をどのように受け止めるか、そしてこの言葉からどんなことを想像し、何を創造するために、何を実行するのか、それを考えてもらいたいと思いました。

 

番場氏を紹介して下さったのは、本学公務研究科教授の久保田先生でした。久保田先生には、スポーツ健康科学セミナーⅡで「公務員の仕事」について、特別講義をしていただきましたが、内閣府政策統括官、陸前高田市の副市長を歴任している久保田先生が東日本大震災後に復興支援活動に手掛けられていた番場氏と陸前高田市で出逢われ、ともに仕事をされたことがご縁で、今回の特別講義へとつながりました。久保田先生、貴重なご縁をつないで頂き、本当にありがとうございました。