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「短距離走の科学 -ジャマイカ人選手の驚異的なスピード-」について講義いただきました。

若原先生はバイオメカニクス的なアプローチでご研究をされており、今回のテーマも、冒頭で先生が「運動生理学の話ではないですが・・・」と断りを入れられて授業がスタートしました。

しかしながら、(運動)生理学は「生きることの理(ことわり)」、つまり、生体のメカニズム、機能について理解することであり、「走る」というスポーツや運動において最も基本的な動作のひとつを科学的に理解することは、十二分に運動生理学に合致すると思い、先生にお越しいただいた次第です。 

 

短距離走のパフォーマンスは反応スピードと走スピードを高めることで向上しますが、今回の講義では走スピードにフォーカスし、その決定因子と考えられるストライドとピッチ、さらにはそれらに関与する身長や筋力、慣性モーメントなどについての講義が中心でした。

 

特に受講生の興味を惹いたのは、先生が実際に計測に関わったボルト選手やパウエル選手の測定の様子です。NHKの特別番組で、上記選手たちの筋力や筋量の測定に実際に関わったのが若原先生です。ボルト選手の大腿部や脚の長さをメジャーで実際に計測されている映像が映し出され、臨場感に溢れていました。計測結果からみる長い脚は、非常に大きなストライドを生み出し、ストライドとピッチを支える驚異的な筋力が紹介されました。確かにこうした体格差は我々日本人と比較して存在しますが、桐生選手の9.98を皮切りに、科学的なトレーニングによってパフォーマンスの向上が期待できるかもしれません。

 

また、ご自身の研究に関わり、トレーニング動作の違いによって筋肥大効果に部位差が生じることをご紹介くださいました。上腕三頭筋にフォーカスした単関節動作でのトレーニングと、多関節動作でのトレーニングを比較した場合、単関節動作の方が筋肥大率が大きく、特に肩に近い部位でそれが顕著であったデータをお示し頂きました。メカニズムとしては、おそらく筋活動量の差ではないかということですが、今後のさらなるメカニズム検討とその実践が切望される、非常に興味深い知見をご提供くださいました。さらに興味深いことに、この部位差は脚部にもあり、競技種目によって、また同種目でも競技レベルによって特徴的な部位差があり、慣性モーメントの関係からも理にかなっているということで、生理学的な視座が広がった気がしました。

 

当該科目は3回生以上の受講ですが、それまでに学んだ様々な科目(例えば基礎機能解剖論やトレーニング科学など)、そして現在学んでいる科目(例えばスポーツバイオメカニクスや当該運動生理学など)の知識が繋がっていく、そのためのヒントを多くいただいた授業だと感じました。

 

講義後の質問も盛況で、大変有意義な講義でした。

若原先生、ありがとうございました。