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橋本健志教授の『ブレインヘルスに対する運動効果:筋由来の生理活性物質としての乳酸の役割について』に関する総説が「Metabolites」に掲載されました

スポーツ健康科学部・同研究科の橋本健志教授が、塚本敏人助教、電気通信大学の安藤創一准教授、東洋大学の小河繁彦教授と共同で「Metabolites」に総説を公表しました(Title: Effect of Exercise on Brain Health: The Potential Role of Lactate as a Myokine)

https://www.mdpi.com/2218-1989/11/12/813

 

  「Exercise is the real polypill」といわれるように、運動が健康増進に対して万能薬の働きをすることに異論はないでしょう。近年深刻な問題となっている認知症に対しても、運動は有効な対抗策であるとされています。

 実行機能をはじめとした認知機能は、習慣的な有酸素運動やレジスタンス運動によって向上し、運動習慣などの環境変化に対して可逆的に変化することが示唆されています。また、精神疾患に対しても運動効果が認められています。しかしながら、背後の生理学的なメカニズムについて未解明な部分が多く、ブレインヘルス向上のためのより効果的な方法論の確立は途上です。運動習慣は、一過性の運動の繰り返しです。そして、一過性の運動も脳機能を高めること、一過性あるいは慢性の運動効果の作用機序の共通点と相違点が整理されていないことが、統合的理解を阻んでいるのです。

私たちは、一過性の運動が認知機能を高める効果において精力的に研究を進め、効果的・効率的に認知機能を亢進させる運動強度、時間、様式を整理してきました。興味深いことに、乳酸産生を促すような様式の運動(筋収縮)が効果的に認知機能を亢進することが明らかとなり、それは脳の乳酸取り込みとその利用が関係している可能性が示唆されたのです。本総説は、そうした私たちの一連の知見に基づき、ブレインヘルス向上にとっての広義のマイオカイン(骨格筋由来の生理活性物質)としての『乳酸の役割』について、その他の考慮すべき分子とともに検討する機会としたいと願う、渾身の記事となっております

 

Hashimoto, T.; Tsukamoto, H.; Ando, S.; Ogoh, S. Effect of Exercise on Brain Health: The Potential Role of Lactate as a Myokine. Metabolites 2021, 11, 813.

https://doi.org/10.3390/metabo11120813


(ニュース)20211206-1