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本研究科修了生の杉本岳史さんの研究が「Journal of Applied Physiology」に原著論文として掲載されました


2021年度にスポーツ健康科学研究科博士課程前期課程を修了した杉本岳史さんが、スポーツ健康科学部 教授 橋本健志先生、大阪工業大学 教授 中村友浩先生、藤里俊哉先生、スポーツ健康科学研究科博士後期課程 吉川万紀さん、大阪工業大学大学院工学研究科 今井尚馬さんらと共同で取り組まれた研究論文「Mechanical unloading in 3D-engineered muscle leads to muscle atrophy by suppressing protein synthesis」が、「Journal of Applied Physiology」に原著論文として掲載されました。

https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/japplphysiol.00323.2021

 

プレスリリースはこちら

https://www.ritsumei.ac.jp/profile/pressrelease_detail/?id=645

https://research-er.jp/articles/view/110003


機械的刺激は骨格筋の可塑性を制御し、特にその減少は筋の萎縮に関連します。しかしながら、機械的刺激の減少によって誘発される筋萎縮の根底にある分子メカニズムは完全には解明されていません。従来の研究では実験動物を用いた研究が主流でしたが、動物倫理の観点から、アニマルフリーへの転換が余儀なくされています。

3次元(3D)培養筋細胞はシャーレ状で培養する平面(2D)培養筋細胞よりも構造的に生体の筋肉に近似しており、アニマルフリーを見据えた新規培養モデルであります。

本研究は3D培養筋を固定する2本のピンから、片側のみ切り離し、機械的除負荷状態を見出しました。それによって、生体筋と同様に筋重量や収縮力が低下することに加え、筋の構成タンパク質を減少させることが明らかになりました。さらに興味深いことに、筋細胞に対する機械的刺激の減少の直接的な効果として、筋タンパク質分解の増加よりもむしろ、筋タンパク質合成の低下が起因することで筋萎縮が誘導されていることが明らかになりました。

従来の細胞培養実験における筋萎縮の研究では薬剤によって筋萎縮を誘導しており、そこには実際の機械的刺激の低下に伴う筋萎縮を模倣できていないという限界点がありました。一方、この3D培養筋における筋萎縮モデルはこの限界点を克服でき、さらには筋萎縮に対する栄養補助食品や機械的負荷などの対抗策を,特に機能的に評価するのに役立つ可能性があります。この新たな3D培養筋モデルは、臨床応用のための動物実験の代替となり、「アニマルフリー」な基礎研究基盤として、研究成果を社会実装することに貢献できると期待されます。

(ニュース)20220422-1