教員紹介

田川 昇平

TAGAWA,Shohei

専門分野・ディシプリン

社会学、インドネシア研究、人種エスニシティ論、都市論

研究内容

インドネシアのジャカルタ郊外と日本の京都郊外にあるふたつの村が私の調査対象地域です。これらの地域で、「伝統の継承」をめぐる日常的な実践に(ジャカルタでは武術や演劇といった身体技法に、京都では古民家や共有地などの建築環境と自然環境に)着目して、調査を行ってきました。この研究の核心は、長く続いてきた伝統にこれまで人々がいかに手を加えて続けてきたかを考察するとともに、そうした改変の過程こそが、人々が伝統を「自分ごと」だと感じる根拠になっているということを明らかにしようとする点です。

「伝統」というと、何か長い時間かたちを変えずに続いてきたものというイメージがあるかもしれません。こうしたイメージは、私の調査地域には当てはまりません。さらに言えば、この傾向は最近になって現れたものでもありません。どちらの村でも、住民は百年以上ものあいだ、時間とともに伝統の姿かたちを改変してきました。身体技法も建築物も自然環境も、不断に変わり続ける生活環境に合わせてその構造を幾度となく変えてきました。そして、住民はそのことをはっきりと認識しています。
この視点に立てば、伝統の変化は村への帰属意識と矛盾するものではなく、むしろそれを強固にするものだということが分かります。こうした知見は、日々の生活で生じる些細な事柄を丹念に観察することで初めて得られるものです。ミクロな視点から調査を進めることの利点は、普通の人々の生活の中で起こる一見すると取り留めもない出来事から得た洞察が、一般性をもった知見に繋がることだといえるでしょう。