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ゲスト講義実施報告(JICA国際協力専門員、元国連食糧農業機関(FAO)事務局長補佐 三次啓都様)
「Introduction to the United Nations」(担当教員:石川幸子先生)の授業にて、2020年12月まで4年半に渡り国連食糧農業機関(FAO)事務局長補佐(No.2)としてローマの本部で勤務されていた三次啓都様をゲスト講師としてお招きし、FAOのミッションと活動について講義を行っていただきました。
まず、授業の冒頭でFAOの話を始める前に、学生たちに国連システムに対して持っている印象や考えを問いただし、国連が多岐にわたって困難に直面している現実を共通認識として確認しました。FAOに関しては、半世紀を経て森林減少が進んでいく様子をYou-tubeの動画で確認し、環境破壊が考えている以上のスピードで進行している現実が紹介されました。地球上の陸地の3分の1が森林ですが、統計上、アフリカと南米で森林減少が顕著であるとのことです。アジアでは森林増加の傾向が示されているものの、これは、中国のみが造林を行っている結果であるとのことです。
また、カカオ、コーヒー、ゴム、パームオイル等の生産量が増加するに従って、生産に要する土地の確保のため、森林が伐採されている現状が紹介されました。
次に、FAOのミッションと活動について説明がありました。世界の食糧と農業にかかるデータを分析し、グローバル・スタンダードを基盤とした規範を作成してモニターをします。そして技術協力や能力強化のプロジェクトを実施するといった活動が紹介されました。現在、世界中で深刻となっている食糧危機については、その原因が紛争、貧困、並びに気候変動にあるという研究結果について詳細な説明がありました。ウクライナ・ロシア戦争による食糧危機はピークを越えたものの、ウクライナ国土に撒かれた地雷によって農地が奪われているとのことです。
最後に、FAOが提唱するHealthy dietについて考えました。バランスの良い食事や、安全な食について理解はできているものの、世界中の多くの人たちがhealthy dietを実行できない原因について学生たちの意見を聞きました。健康に良い食品は高価であることが多く、経済的に購入する余裕がないことが大きな原因であるなど、多くの意見が出されました。
今回の講義では、専門機関であるFAOの業務内容について理解が深まったともに、食糧に関連する課題を考える良い機会となりました。