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ゲスト講義実施報告(富山大学 非常勤講師:社会学者 斉藤正美様)

「比較家族論」(担当教員:山口智美先生)の授業にて、社会学者の斉藤正美様をゲスト講師としてお招きし、講義を行っていただきました。
斉藤先生はフェミニストの社会学者として、「官製婚活」政策について調査研究をされてこられたこのテーマの第一人者です。

ゲストスピーカー(11.26斉藤様)1

講義は、「官製婚活」とは何かという説明から始まりました。国が少子化対策の一環として自治体に取り組ませている結婚支援策で、結婚に向けた機運の醸成、マッチングアプリの開発、婚活パーティーや出会いイベントの開催、婚活セミナーやライフデザイン教育、
プレコンセプションケアなど多岐にわたるものです。こうした「官製婚活」政策の流れと現状を概観した後で、京都府が進める「官製婚活」政策についても具体的に紹介し、考察していきました。
さらに、学生たちの世代がターゲットになっており、新たに最近政府によって推進されているという「プレコンセプションケア」の取り組みについて、京都府や東京都などの具体的な事例を挙げつつその問題点について論じました。
授業途中では、「官製婚活」政策についてどう思うか話し合うグループワークの時間ももち、斉藤先生は教室を周りつつ、いくつかのグループの学生たちと対話の機会を持ってくださいました。
グループワークの後、政策と婚活業界の繋がりの深さについて批判的検討を行い講義は終わりました。

ゲストスピーカー(11.26斉藤様)2

「官製婚活」という言葉は初めて聞いたという学生も多く、授業後の学生たちの感想では、少子化対策のために有効とする意見も、役に立たないのではないかとする意見もあり、さまざまな反応がありました。結婚すべきという特定の価値観の押し付けになったり、「官製婚活」政策は多様な結婚や家族のあり方と齟齬があるのではないかとする意見や、LGBTQ+や外国籍の人たちを排除する政策になっていることの問題を指摘する意見もあり、「官製婚活」政策の是非や日本の少子化問題についてどう対応していくべきなのかについても学生たちが考える貴重なきっかけとなった講演でした。