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ゲスト講義実施報告(立命館アジア太平洋大学 アジア太平洋学部教授 吉田香織様)
「Advanced Topics in International Relations」(担当教員:CHADHA Astha先生)の授業にて、立命館アジア太平洋大学 アジア太平洋学部 教授でらっしゃる吉田香織様をゲスト講師としてお招きし、「Title: Leisure in Others’ Pain: Complexities of Remembering the HIROSHIMA(他者の痛みと共存するレジャー:「ヒロシマ」の記憶の複雑性)」をテーマに講義を行っていただきました。
今回のテーマは、先日、授賞式が行われたノーベル平和賞を日本被団協が受賞したニュースとの繋がりを感じるタイムリーなトピックとなりました。
講義冒頭、吉田教授は以下の質問を受講生に投げかけました。
「私たちはどのように過去の出来事を記憶しますか?」「私たちは何をもって過去の出来事について「知っている」と思うのでしょう?」。
受講生から「学校の教科書から学んだ」や「映画を観て」など幾つか回答が出た後、教授は講義の中心となる「記憶の構築」の概念についてその特徴・仕組みを説明し、講義の焦点としてその複雑さに目が向けられました。さらに具体的に、日本における「広島(ヒロシマ)」を通した戦争の記憶がいかに多元的、複雑であるかについて、近年広島の観光地として国内外で注目されている大久野島を例にしながら話が進められました。特に強調されたのは以下の点でした。
1)「ヒロシマ」の戦争記憶がもつ多声性
2)大久野島ツーリズムに見られる「ダーク」と「ライト」な両面が共存し得るアイロニカルな現状
これらのポイントについて、吉田教授が現在取り組んでいる研究プロジェクトでのフィールドワーク等から得られた資料・情報をもとにした見解が展開され非常に興味深い講義内容でした。一義的に理解されがちであるヒロシマの戦争の歴史に対し、様々なメディアやツーリズムにより記憶が構築されるため、「小さな」声が見逃される可能性についても教授と受講生の間のインターアクティブなやりとりが活発になされました。
講義では具体的に日本、広島の戦争記憶についてでしたが、原爆についてはよく知られていることであり、また戦争・紛争の記憶についての内容は受講生全てが関連性を見出すことができるテーマであるため、授業に対する受講生の姿勢はかなり積極的で様々な意見が出されていました。
受講生にとっては、自身がこれまで「当たり前」に記憶してきた過去(戦争)の出来事について、様々な関連イベントやメディアには触れる一方で、表面には必ずしも見えない記憶の政治性について考察する機会を与えてくださった有意義な講義となりました。