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ゲスト講義実施報告(前UNHCR駐日事務所代表 Dirk Hebecker様)
「Introduction to the United Nations」(担当教員:石川幸子先生)の授業にて、前UNHCR駐日事務所代表で、現在は、UNHCRを定年退職して日本国内で複数の大学の講師として活動しているMr. Dirk Hebeckerをゲスト講師として招聘し、World in Turmoil – Record Displacement (How today’s world deals with the global refugee crisis)というテーマで講義を行っていただいた。
まず、現在の難民・IDP問題について話を進める前に、直近の課題として2期目のトランプ大統領の政策によって既に多くのグローバル課題が負のインパクトを受けているとの指摘があった。特に、Hebecker氏の専門である難民及び移民問題については、難民の受け入れ数が落ち込んでいることに加え、移民についても本国への送還を行っているなど、基本的人権を軽んずる行為が大統領令の下で行われていることを危惧する発言があった。
また、USAIDの廃止措置、及び国際機関への拠出金の減額措置によって、世界中の人道支援活動が予算削減の影響を受けて、十分な支援ができない状況に陥っているとの指摘があった。米国がSecurity, Climate, Inequality, health, Radicalizationという世界が直面する課題に対して、後ろ向きの姿勢を取り始めたことで(WHOやパリ協定からの離脱等々)、また、貿易関税の上乗せなど、世界の趨勢に逆行する政策のために、世界中が政治的、経済的に混乱に陥っていると述べた。
このように、現在の世界を俯瞰する作業を行った後、今回のテーマであるDisplacementについては、戦争、国内紛争、自然災害、環境破壊、貧困など、様々な要因によって引き起こされることが説明され、現在、難民と国内避難民(IDP)を併せて2024年6月時点で難民の数は1億2千万人となり、世界で13番目に多い人口の国と同数だとの指摘があった。
これは、世界人口の69人に一人が難民であるということを示している。難民は、米国や欧州などに押し寄せるというイメージがあるが、現実は75%が途上国や中進国で庇護されており、国際的支援は難民の肥後国に対しても急務である。または難民には国際機関からの支援の手が差し伸べられるが、IDPについては、未だ国内で政府の統制下にあるので、国際機関が支援できない場合も多く、彼らがおかれた状況は、押しなべて難民よりも悲惨であるとのこと。
講義後、学生たちからは、トランプ政権下でのDisplacementの行方、また、ソーシャルメディアによる情報操作等について多くの質問があった。