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ゲスト講義実施報告「UNHCRの活動:現場の事例を中心に」(元UNHCR 中央アジア地域事務所所長:織田 靖子様)
「国際連合入門」(担当教員:石川幸子)にて、2年前に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を早期退職された織田靖子さんをゲスト講師にお迎えして、「UNHCRの活動:現場の事例を中心に」というタイトルで講義を行って頂いた。
UNHCRの必要予算は年間106億ドルであるが、これは「この金額まで集めて良い」という意味であり、実際に各国の拠出金で集まるのは、毎年その半分程度であり、慢性的な予算不足の中で業務を行っているとのこと。実際に、2024年には45%しか集まらなかった。
最大のドナー国であった米国が国際協力予算を大幅に削減している現在、今後の見通しは暗いとの説明があった。UNHCRが保護の対象とするのは、庇護申請者、難民、無国籍者、国内避難民、並びに自主帰還で自国に戻った人たちであり、現在その数は、1億2000万人に迫っている。パレスチナ難民の救援活動には国連パレスチナ難民救済機関(UNRWA)が当たっており、活動地域は、ヨルダン、レバノン、シリア、ガザ、ヨルダン川西岸に限定されている。職員数2万8000人の内、99%はパレスチナ人である。
奇しくも6月20日は世界難民の日となっている。現在、多くの難民を輩出している国は、ベネズエラ、シリア、パレスチナ、アフガニスタン、ウクライナの順である。2024年12月にアサド政権が崩壊したシリアでは、復興の時期になったが、国連には支援する予算がないのが現状であるとのこと。
講義の最後には、織田さんが実際に勤務されていた南スーダンやウガンダの写真を見せながら、臨場感あふれた話が展開された。南スーダンの洪水発生時には、難民のみならず、現地の村人たちも含めた支援を行ったとのこと。また、新型コロナ肺炎が蔓延していた当時、ウガンダの奥地の村までWHOのワクチンが届けられ、国際機関の存在意義を再認識したとの話があった。