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ゲスト講義実施報告「FAOのミッションと活動」(JICA国際協力専門員、元国連食糧農業機関 事務局長補佐 三次 啓都様)

「国際連合入門」、「Introduction to United Nations」(担当教員:石川 幸子)の授業にて、2020年12月まで4年半に渡り国連食糧農業機関(FAO)事務局長補佐(No.2)としてローマの本部で勤務されていた三次啓都氏をお招きして、FAOのミッションと活動について講義を行って頂いた。

ゲストスピーカー(6.26三次様)3

まず、授業の冒頭でFAOの話を始める前に、国連システムについて簡単におさらいした後、国連が多岐にわたって困難に直面している現実(特に平和と安全保障分野)を共通認識として確認した。

FAOについては、戦略枠組みとして“Four Betters”(better environment, better life, better production, and better nutrition)を掲げて活動している旨の説明があった。FAOは、毎年、Food Security and Nutrition in the Worldというレポートを発行しているが、その中でもfood accessibility が問題になっている。これは、食料と購入する現金がないという側面と、所謂healthy dietを実現できないという側面を持っており、栄養失調は、栄養不足、肥満、微量栄養素不足という3つの課題を抱えている。
また、世界の食糧危機は、環境問題、経済危機、並びに紛争が3大原因となっているとのこと。紛争については、ウクライナとロシアの戦争を例に挙げ、2大農業国間の戦争が、どの程度世界の食糧危機にネガティヴな意味で貢献しているかについて説明があった。

ゲストスピーカー(6.26三次様)1

次に、森林破壊をテーマとして取り上げた。半世紀を経て森林減少が進んでいく様子をYou-tubeの動画で確認し、環境破壊が考えている以上のスピードで進行している現実が紹介された。地球上の陸地の3分の1が森林であるが、統計上、アフリカと南米で森林減少が顕著である。アジアでは森林増加の傾向が示されているものの、これは、中国のみが造林を行っている結果であるとのこと。また、カカオ、コーヒー、ゴム、パームオイル等の生産量が増加するに従って、生産に要する土地の確保のため、森林が伐採されている現状が紹介された。

ゲストスピーカー(6.26三次様)2

最後に、healthy dietについてグループディスカッションを行った。学生たちの回答にはユニークなものが多く、例えば、“レポートや試験で自炊する時間がないので、ファストフードで済ませているが、これはacademically healthy dietだ”というものや、“自分が食べたい物を食べることでmental healthを保つことができる”といった意見が挙げられた。
今回の講義は、FAOの機能を理解すると共に、食糧危機や環境破壊という関連の課題について理解を深める、大変良い機会となった。