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ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチアへの海外フィールドワークを実施しました(渡邉松男ゼミ)

2025年7月25日から31日にかけて、渡邉 松男先生とゼミ生15名がボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチアでの海外フィールドワークを実施しました。フィールドワークでは、現地での聞き取り調査と紛争関連施設の視察を目的に、主に以下の場所を訪問しました。

在ボスニア・ヘルツェゴビナ日本大使館
オリンピックトラック集団墓地
トンネル博物館
スレブレニツァ虐殺記念館・集団墓地
国連開発計画(UNDP)ボスニア・ヘルツェゴビナ事務所
スタリ・モスト、イスラーム修道院 
ユーゴスラビア人民軍砲撃修復、ミンチェタ要塞

渡邉松男ゼミ2025ボスニア①

在ボスニア・ヘルツェゴビナ日本大使館では、同国を含む西バルカン地域が直面する多岐にわたる課題と、それに対する日本の外交・国際協力について、特にEU加盟を目指す西バルカン諸国が抱える根深い民族対立、政治的停滞、そして近年のナショナリズム再燃等の問題に焦点をあててご説明いただきました。
また、深刻化する人口減少、高学歴者・熟練労働者の国外流出とその経済的・社会的影響、観光業を含む経済的潜在力と課題、日本の対西バルカン政策が旧ユーゴスラビア崩壊後の国づくり支援からEU加盟支援へとシフトした経緯やODAを通じた日本のソフトパワーの重要性、さらにボスニアの複雑なメディア環境における情報収集の難しさや、若者世代の意識についてもご説明いただきました。

渡邉松男ゼミ2025ボスニア②

国連開発計画(UNDP)ボスニア・ヘルツェゴビナ事務所では、EU統合に向けた同国を支援するUNDPの広範な任務について概説いただき、石炭からクリーンエネルギーへの移行、持続可能な観光開発、農業の近代化など主要な社会経済問題が議論されました。
また、公共調達における組織的な腐敗など統治の重大な失敗や、男女不平等、和解を妨げる分裂的な教育制度など、根強い社会的課題もご説明いただきました。

渡邉松男ゼミ2025ボスニア④

渡邉松男ゼミ2025ボスニア③


また、サラエボ、スレブレニッツァ、モスタール、およびドブロブニクでは内戦の残滓の視察や記録展示を見学しました。
今回のフィールドワークで得た貴重な学びや経験を、個々の卒業研究やオープンゼミナール大会での研究発表に繋げていきます。

<参加した学生たちの声>

「ボスニアの歴史と現在を自分の目で確かめ、現地に身を置いてこそ得られる学びを多く得ることができた。街中には今も紛争の銃痕が残されており、実際に当時を経験した方から直接話を聞いたことは、歴史を書物ではなく現実として実感する貴重な体験であった」

「民族対立の解決の難しさを実感した。ボスニアとクロアチアを比べると、どちらも戦争の痕跡を色濃く残しながら、復興や国際社会との繋がりを強めようと努力している部分は共通していた。しかし、民族構成や宗教背景の違い、EU加盟・非加盟などが、政治や経済、国際的な立ち位置に大きな違いをもたらしていることが感じられた」

「今回の研修を通じて物事をより批判的に見てみようと考えるようになりました。情報が正しいかは、その情報だけではわからず、様々な媒体からの情報を通じて、初めて判断するべきだと今回の研修でよく理解することができました」

「ボスニア単体の事例に留まらず、西バルカン地域全体の動きと結び付けて考察する必要性を強く感じた。今後は地域研究の幅を広げ、EU加盟問題や周辺諸国との関係性を踏まえた比較分析を行いたい」

「平和や国際協力といったテーマを「遠い世界のこと」ではなく、自分の学びや将来にもつながる身近な課題として考えられるようになりました」

「日本で平和ボケしていた部分が改めさせられた。民族紛争がつい最近まであった国とは思えないほど穏やかな国だと感じたが、よく見ると街の雰囲気が全く違っていたり、心の中での民族対立はいまだに存在しているように感じ、ネットなどでは学ことのできないことを目にすることができた。」

「当時ジェノサイドが起こったスレブレニツァの視察では多くの被害者が存在したこと、実際の記録や映像・写真などを視察し、紛争の残酷さを改めて実感した。」

「社会における政治や経済、民族など多角的な側面について理解を深めることができた。歴史感情や国際介入のバランス、支援の多様性や教育などの観点から民族融和の複雑さを改めて学んだ」

「現在の国際情勢に対する理解を深めるきっかけになった。現在、ロシア、ウクライナの対立やイスラエル、パレスチナの対立などが表面化し、民族融和や国際社会の動きが注視される中、今回の研修で学んだ知見を生かして今後、国際社会の動向を追っていきたい」

「今回学んだ民族紛争などの課題は世界各地で起こっている問題にも関連している。民族紛争からの復興は、紛争が増加している現在の国際社会において重要な課題であり、今回学んだ課題や、大使館やUNDPなどが取り組んでいる内容について振り返り、今後、他の地域で起こっている民族紛争などにどう活かすことが出来るのかということを考えたい」

「大使館訪問を通じて外交の現場が持つ重みを実感しました。内戦の記憶が残る地域において、大使館は単に国家間の窓口ではなく、平和構築や地域社会との橋渡しを担っていることを学びました。UNDPの活動からは国際支援と現地の自立のバランスの難しさを理解しました」

「大使館やUNDPでのインタビューを通して、短時間で有効な質問を行い、さらに掘り下げるためのフォローアップを行う難しさを痛感し、課題だと感じた。今後は事前準備や想定問答を強化し、場数を踏むことで質問の質を高めるスキルを磨いていきたい」