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ゲスト講義実施報告「プレコンって何?」(富山大学非常勤講師 斉藤 正美様)

「比較家族論」(担当教員:山口 智美)の授業にて、富山大学非常勤講師の斉藤 正美先生をお迎えし、ゲスト講義を実施いただきました。

ゲストスピーカー(11.17 斉藤正美様)①

講義は「プレコンって何?」と題し、現在日本政府が力を入れている「プレコンセプションケア(プレコン)」について、斉藤先生による最新の調査研究に基づき、刊行されたばかりの斉藤先生のご著書(『押し付けられる結婚 —「官製婚活」とは何か』新日本出版社2025年)にも関連する講義が行われました。

そもそものプレコン導入の経緯、WHOなど海外で導入されている「プレコンセプションケア」との違い、プレコン推進の背景にある政府の少子化対策、ライフデザイン教育や「官製婚活」との連続性など、「プレコン」を切り口にしつつ幅広いテーマが扱われました。また、京都府で展開されているプレコン関連事業についても具体的に論じてくださいました。

プレコンは、性や妊娠、健康について正しい知識を持つことを目的とする点では一定の意義がある一方、日本では少子化対策の文脈で導入・推進されているため、「将来、子どもを持つこと」が前提になりやすいという問題があります。性のあり方や家族の形は多様であり、子どもを持つ/持たないということは個人の選択であるべきものですが、日本で行われているプレコンにはセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)との矛盾があると指摘され、依然として不十分な性教育、優生思想への懸念、費用対効果の問題など、多くの課題が示されました。

学生世代が政策のターゲットになっていることも踏まえ、授業ではresponも活用しつつ、学生がプレコンをどのように受け止めるかについて、インタラクティブに意見を共有する機会もありました。プレコンについての学生の賛否は分かれていましたが、プレコンについてほとんど知らなかった学生たちがその利点、問題点など様々な論点について自分に惹きつけて考えることができる授業となりました。

ゲストスピーカー(11.17 斉藤正美様)②

また、同日の「専門演習」でも引き続き講義を実施いただきました。
「専門演習」では、斉藤先生の研究者としての歩みや、これまで用いてこられた調査・研究方法についてお話を伺いました。少人数のゼミ授業であったこともあり、学生からの質問もしやすく、活発で充実した意見交換の場となりました。

本ゼミは全員が3回生で、現在、卒業論文に向けて研究テーマの設定や方法論の検討を進めている段階にあります。そのため、斉藤先生が40代になってから新たに研究の道を志し、社会学やジェンダー研究をご専門とされるに至ったご自身のキャリアについてのお話は、学生たちに強い印象を残したようです。

特に、女性の生き方やその世代差、性別役割の押し付けについて考えさせられたという声が多く聞かれました。斉藤先生が、ご自身の子育ての経験について率直に語られ、楽しめなかった思いや、その苦労をなかなか言えなかったこと、そして「自分の人生を自分のために生きたい」という思いから40代で大学院に進学し、研究者の道を目指された経緯は多くの学生の心に残ったようです。

また、市民運動に携わってこられた経験を調査研究としてもアウトプットされてきたこと、特にメディアや言語における性差別を分析し、報道ガイドラインの提起に繋げてきた実践についてもお話しいただきました。日常の中で「当たり前」だとされている事柄を批判的に捉え、問い直し、変えていくことの重要性が強く伝わる授業となりました。