4年間の流れ

東洋史専攻の必修・登録必修科目を中心に、4年間の流れを追っていきます。教学の手引き(最新版はmanaba+R参照)も参考にして下さい。

1回生

1回生は専攻には所属せず、東アジア研究学域の各専攻が扱う分野に広く触れ、2回生の専攻選択の準備をします。下記の授業のほか、中国語も卒業研究にむけた大事な基礎トレーニングです。 東洋史概論以外は学域単位でクラスが編成され、(1)研究入門・(2)リテラシー入門・(3)東アジアを知るための読解と表現で共通の小集団演習のクラス分けが基本的な活動単位になります。(1)研究入門・(5)東洋学のための言語入門・(5)漢文入門については、参考文献の探し方や発表の準備をTAが随時サポートしていきます。

(1) 研究入門Ⅰ〔登録必修〕
東アジア研究学域で4年間、さまざまな学問や研究テーマを楽しく学んでゆくための基礎を作るのがこの科目です。個人単位やグループ単位で与えられるいくつかの課題に取り組むことで、文献や資料の調査法や読解の技術、口頭発表や討論のしかたなど、具体的な研究の方法について学んでいきます。
(2) リテラシー入門(春セメスター)〔登録必修〕
大学での専門的な研究の基礎として、アカデミックライティングやオフィスソフトの操作など、リテラシー能力のトレーニングを行います。
(3) 東アジアを知るための読解と表現(秋セメスター)〔登録必修〕
リテラシー入門から発展して、東アジアに関する論文を読むためのトレーニングを行います。
(4) 東アジア研究入門講義(春セメスター)〔登録必修〕
学域の3専攻の先生方によるリレー講義で、それぞれの分野の概略を学びます。
(5) 東洋学のための言語入門(春セメスター)〔登録必修〕
現代中国語・朝鮮語・古典中国語(漢文)について学ぶリレー講義で、漢文の回は小教室での演習形式で漢文の基礎を学んでいきます。
(6) 漢文入門(秋セメスター)〔登録必修〕
近年、高校で漢文の学習が不足していることを考慮して、基礎的な漢文読解力をつける目的で設けられた科目です。古典漢語で記された文学・思想作品や歴史書を読む力をつけることを目指し、学びの重要な基礎作りを行います。漢字と漢語の基礎知識・漢文訓読の方法・漢文法の基本を習得し、訓点本、標点本さらに進んでは白文で散文を読み実力を養成します。また、現代語の語法と比較して古典漢語の文法を深く理解するよう留意します。
(7) 東洋史概論〔登録必修〕
この科目は東アジアの歴史についての概説講義です。近代以前の東アジアは、漢字文化圏とも呼ばれるように、中国を中心とした文化圏を形成していました。本講義では、前近代を四つの時期に分けて、中国を中心とする東アジア世界の歴史展開を概観します。ただし、専門科目としての概説ですから、歴史事実を並べただけの通史ではなく、学習者の視野を広げ、問題意識を養うことを目的とします。したがってテーマを特定した講義の場合もあります。ここで養われた問題意識は卒業論文で取り上げる時代を大まかに絞り込むのにも役立ちます。

2回生

1回生の冬にある専攻選択を終え、東洋史学専攻所属となると、いよいよ東洋史の専門的な授業が始まっていきます。小集団クラスの(1)基礎講読は専攻の2回生全体で1つのクラスとなっており、それぞれの関心を追求し、3回生からのゼミ分属に備えます。

(1) 基礎講読Ⅰ〔登録必修〕
この授業は、東洋史研究のための基本的訓練を行う授業です。大学における歴史研究は、これまでの中学・高校での歴史学習とはかなり違っています。中学・高校では、歴史事象を理解し覚えることが何より重視されましたが、大学の歴史学は暗記科目ではありません。では、大学の歴史学は一体何をするのか。この点を皆さんに理解してもらうことが、この授業の最大の目的といっても良いかもしれません。前期は、東洋史を学ぶための基礎的知識やスキルを習得します。東洋史の範囲、東洋史の歴史理論、東洋史学の歴史、史料と歴史などについての理解を深めるとともに、研究文献の探索方法や各種辞書・工具書類の利用方法に習熟し、自分で学習や研究を進められるスキルを身につけることを目指します。後期は、受講生による個人発表を行います。受講生は各自、自分でテーマを設定し、関係論文を検索して、それらを読み理解した上でその問題点を提示するといった作業を通して、歴史学的な考察方法を身につけることを目指します。
(2) 漢文文献読解(春セメスター)〔登録必修〕
1回生配当の「東洋学のための言語入門」、「漢文入門」を承けて、漢文を読み理解する力をさらに養成するための演習授業です。歴史資料としての漢文を読むということは、書かれた文字の意味を解釈するだけのものではなく、文字の背後にある社会の状況を理解することが不可欠ですが、この点については後期配当の「東洋史資料講読」で実践的なトレーニングを行うことにして、この授業ではその前段階として、歴史書の漢文を文字通り正確に解釈することを目指します。
(3)東洋史資料講読〔計8単位必修〕
春セメスター配当の「漢文文献読解」を承けて、漢文を歴史資料として読解するための実践的訓練を行います。漢文史料は文章の文字通りの意味だけでなく、その背後にある当時の社会も含めて理解しなければ、正確に理解することはできませんし、その史料の持つ情報を十分に読み取ることもできません。この授業では、「漢文文献読解」で修得した基本的読解力を基礎に、漢文史料を歴史資料として利用する技術を養成することを目指します。
(4)東洋学のための情報処理
近年のコンピュータとネットワークの発達に伴い、東洋学の学習においてもこれらを積極的に活用する技術が求められています。この授業では、1回生の「リテラシー入門」で学習した情報リテラシーの基礎にもとづいて、さらに中国語や朝鮮語の入力法、論文や書籍の検索、東洋学向けのデータベースの利用法など、東洋学を学ぶために必要な技術についての講義と実習を行います。
(5)東洋史学史
前近代中国において歴史学は最も発展した学問の一つでした。本講義は、司馬遷『史記』・班固『漢書』・陳寿『三国志』・劉知幾『史通』・司馬光『資治通鑑』等の歴史書を具体的に参照しつつ、漢から唐・宋に至る中国史学の発展、および歴史意識の変遷を理解することを目指します。またわれわれ日本人の歴史観にも影響を与えた中国の伝統的歴史学の特徴と限界を自覚することによって、史料を相対化し、より深い史料の読解を目指します。

3回生

(1)専門演習Ⅰ・Ⅱ〔登録必修〕
卒業論文作成に向けての準備作業を行う小集団授業で、いわゆる卒論ゼミです。東洋史学専攻では3回生配当の「専門演習Ⅰ・Ⅱ」と4回生配当の「専門演習Ⅲ・Ⅳ」が合同ゼミの形で開講され、時代や分野によって複数のクラスが開講されます。この合同ゼミでは、卒業論文作成の中間報告が中心になりますが、ほとんどのクラスでは、各セメスターで4回生、3回生の順に個人発表を行います。3回生は、4回生の発表を聞くことを通して、卒業論文のテーマ設定の仕方や先行研究の整理・検討のやり方、自分のテーマに対する具体的な考察方法などについて学びます。また、自分のテーマに関連する先行研究を収集し、これまでの研究状況を整理することを通して、自分の卒業論文で取り上げるテーマを具体化していきます。
(2) 東洋史学研究の方法・東アジア文化史の基礎知識・東アジア民族史の基礎知識
東洋史概論が東アジア世界の歴史展開を概観する講義であるのに対して、本講義は、個別具体的なテーマをより深く掘り下げていくものです。講義担当者が自分の専門とする研究テーマを講義するものですので、概論では取り扱わないような個別具体的な東洋史学上の諸問題が講義されます。この講義を聴くことで、東洋史学における最前線の研究状況に触れるとともに、そのテーマについてどのような問題点があり、如何なるアプローチや分析の方法が可能であるのかを具体的に知ることができ、卒業論文作成の具体的な手順を学ぶこともできます。是非、受講されることをお勧めします。

4回生

(1) 専門演習Ⅲ・Ⅳ〔計4単位必修〕
卒業論文作成のための授業で、各受講生による卒業論文の中間報告が中心になります。報告に対して、受講者全員による質疑応答や、ゼミ担当教員による講評などが行われます。不充分な報告に対しては厳しい指摘もありますが、ここで受けた指摘を活かすことによって、初めて完成度の高い卒業論文を作成することができるのです。また、受講生は、自分が発表するだけでなく、他の受講生の発表に対する討論にも積極的に参加し、研究史の把握や史料読解、行論、構成などについて疑問点を質すことが求められます。この授業は、受講生が相互に切磋琢磨して、互いの研究水準を向上させる場でもあります。また、3回生までの演習とは違い、必修科目です。単位を修得できないと卒業できません。

東洋史の4年間は、このような講義を中心に展開されていきます。皆さんはこれを見て大変だと思われるでしょうか、それともこれならやれそうだと思ったでしょうか?
東洋史学専攻の先輩の中には、これらの講義を受講しながら教職や学芸員の資格を取ったり、部活やサークル活動・アルバイトなどにも力を入れたりしている方がたくさんいます。 4年という長いようで短い学生生活は、皆さん一人一人の心がけ次第でどれだけでも有意義なものに出来ると思います。