柳航太さん

2022.12.05 TOPICS

非行のない社会を目指して 不登校を経験した学生の新たな挑戦

 京都府警察から委嘱を受け、非行の防止を目的として、非行歴がある子どもたち、家庭環境・学校生活等でさまざまな問題を抱える子どもたちの立ち直りを支援する少年非行防止学生ボランティア「KYO-SOLEIL」(キョウ ソレイユ)。柳航太さん(法学部3回生)は1回生秋からボランティア活動に参加し、これまで10人以上の子どもたちに寄り添ってきた。「世の中で生きづらいと思っている方に少しでも安心して暮らせる社会にしたい」と語る柳さん。彼がそのような思いに至った理由。その原体験は高校2年生に遡る。

アクティブ不登校生

 小学生で水泳や空手に熱中し、中学校ではテレビでみた野球世界一を決める「ワールド・ベースボール・クラシック」の影響で野球部に入部するなど、興味があれば何でもチャレンジするタイプだった。肘の怪我による影響で野球を続けることができなくなり、高校からは剣道に挑戦。一見順風に見えた高校生活だったが、高校2年生の春に突如変化が訪れた。自分と周りの人を比べてしまうあまり心身の不調を起こしてしまい、そこから半年間ほど学校に通えず、いわゆる不登校になった。「乱暴な表現ではありますが『社会のレール』から外れかけてしまった時期ですね。勉強のことで不安になって寝付けないこともありました。ただ、趣味の一つだった社会人野球の試合観戦は続けていたので『アクティブ不登校生』だったと思います」。その後は、家族や友人、高校の先生からの熱心なサポートもあり、留年しつつも学校に復帰することができた。「不登校の期間中、周りに自分を支えてくれる、気にかけてくれる人たちがたくさんいることに気がついたんです」。この経験から、「社会のレール」から外れかけている人たちにとって、「周りの環境」がもつ役割が重要だと気づいた柳さん。これがKYOTO-SOLEILの活動を始める大きなきっかけになった。

 高校に復学直後、高校の進路学習プログラムで犯罪者の処遇等を研究している大学の研究室を訪問し、家庭裁判所調査官の話を聞いた柳さん。そこで、柳さんとは異なる境遇であるものの、「社会のレール」から外れかけてしまった子どもたちの話が深く心に残ったと振り返る。「非行歴のある子どもたちが起こしてしまった非行の背景には、周囲の環境に恵まれていないことが多いと分かりました」。幼少期から漠然と警察官に憧れていたこともあり、少年法や刑事法を学び、犯罪を少しでもなくすため、柳さんは法学部に進むことを決めた。

大学生活はすべてコロナ禍。そこで見つけたKYO-SOLEILの取り組み

 柳さんが立命館大学法学部に入学したのは2020年4月。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、大学の活動もほとんどがオンラインに切り替わっていた時期だ。悶々とした日々を過ごす中、偶然目に留まったのが「KYO-SOLEIL」だった。
 「非行少年の立ち直り支援を行なっている学生団体だと知ったとき、自分の経験を生かして社会に貢献できるのではないかと思いました」と当時の心境を語る。1回生の秋から活動に参加した柳さんは、法学部で学んだ少年法や犯罪学などの知識も活用しながら、勉強の指導、山登りや寺院巡りなどの体験活動を積極的に企画・運営してきた。柳さんをはじめKYO-SOLEILで活動してきたメンバーは、京都府警察からその功績が高く評価され、感謝状を授与された。

感謝状を手に持つ柳さん

子どもたちを犯罪被害者にも加害者にもさせない社会の実現のために

 柳さんは現在、KYO-SOLEILの活動を続けながら、国家公務員総合職試験の合格を目指して毎日勉強に励んでいる。「行政官になって少年非行の防止対策をはじめとした安全・安心という普遍的価値を守る企画立案やその執行に携わりたい。KYO-SOLEILで子どもたちと接することで、その思いはより強くなりました」と柳さん。自分自身が経験したからこそ、生きづらさを感じている人を一人でも多く救いたい。そんな柳さんの挑戦は、これからも続く。

プロフィール

柳航太さん
渕野貴生教授のゼミで刑事訴訟法(捜査手続き)を学ぶ。1回生秋から少年非行防止学生ボランティアKYOTO-SOLEILの活動に参加。座右の銘は「至誠通天」

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