【挑戦の向こう側】「食」への情熱と多様な挑戦が切り拓いた道〜3つの学生団体での経験が育んだ成長〜
立命館大学 食マネジメント学部4回生 萩原さん
「食」への深い関心を出発点に、大学で出会った様々な活動に積極的に取り組み、目覚ましい成長を遂げてきた学生がいる。食マネジメント学部4回生の萩原さんもその一人だ。学生団体BohNo(ボーノ)での食育活動、入試広報学生スタッフでのオープンキャンパス運営、そしてスポーツの応援文化を醸成するReLIVE実行委員会の立ち上げメンバーとして、常に一歩踏み出し、新たな挑戦を続けてきた彼女に、その原動力と活動から得た学びについて話を聞いた。
千葉から関西へ――食への探求心が開いた立命館大学への扉
千葉県出身の萩原さんが、関西の立命館大学を選んだきっかけは「食」への強い探求心だった。高校時代は専門学校への進学を考えていたが、高校1年生の終わりに始まったコロナ禍が転機となる。誰かと一緒に食事をすることが当たり前ではなくなり、飲食に携わる両親の姿を見るなかで、日々の食事という行為が“良くない”とされる状況にモヤモヤを感じたという。同時に、国際系の高校に通っていた経験から、イスラム教を信仰する友人が宗教上の理由で食事に苦労している現実を知る。当たり前だと思っていた買い物が自由にできない友人の話を聞き、「宗教や国籍に関係なく、誰とでも一緒にご飯を囲める環境を作りたい」という思いが芽生えた。これらの経験から、食への学びを深めたいと考えるようになり、食マネジメント学部がある立命館大学を知った。はじめは、立命館大学が関西にあることも知らなかったが、やりたいことがそこにあるなら距離は関係ないと感じ、進学を決意したという。
食を多角的に捉える学びとイタリアでの原体験
食マネジメント学部での学びは、萩原さんにとって探求心を深める機会となった。学部では、食を「マネジメント」、「カルチャー」、「テクノロジー」という3つの領域から体系的に学ぶことができるのが特徴だ。歴史や文化、自然科学、そして社会での生かし方など、多角的な視点から食を見つめることができた。特に、宗教と食の関わりを学ぶ授業は、高校時代の問題意識に応えるものだった。教科書の内容だけでなく、食の世界で活躍する料理人やジャーナリストなどのゲスト講師から最前線の話を聞ける総合講義も、世界の食の動向を知る上で大きな示唆を与えたという。
3回生から所属した石田雅芳先生のゼミでは、イタリアの食文化を研究テーマに選んだ。もともと「誰かと一緒にご飯を食べる文化を広めたい」という思いがあったため、食事を大切にするイタリアの文化から「共食」のあり方を学びたいと考えたのだ。ゼミ選びには、2回生時に参加したGSPイタリアという食マネジメント学部独自の海外プログラムでの経験が大きく影響している。
石田先生と一緒にイタリアを訪れ、現地で感じた食への情熱や心持ちに魅力を感じたこと、そしてそこで得られた学びの多さが、「石田先生のもとでならやりたいことができる」という確信につながり、ゼミを選んだと振り返る。ゼミでは、日本酒をテーマに活動したり、月に一度ナポリピッツァ作りも経験した。
若者の視野を「食」で広げる学生団体BohNo
大学入学後、萩原さんが最初に力を入れた活動が、学生団体BohNoだ。BohNoは当時設立3年目の団体で、小学生への食育、食品ロス削減、商品開発の3つを柱に活動していた。特に「食を通して若者の視野を広げる」というコンセプトに共感し、食という身近なテーマから、小学生だけでなく大学生も対象に、SDGsや社会問題といった少し難しい内容に関心を持つきっかけを提供することを目指した。
1回生から3回生まで所属し、特に1回生の終わりから2回生にかけては団体の代表を務めた。代表として成し遂げたことは二つあるという。一つは活動範囲の拡大だ。京都だけでなく、大阪や滋賀にも活動を広げ、特に小学校や中学校で授業ができたことは大きな達成だった。これまでは公共施設での開催が中心だったが、学校という公教育の場で、SDGsや社会問題への関心がない子にも、食を通してきっかけづくりができたことに意義を感じている。例えば、規格外野菜をテーマにした食育では、見た目がへんてこな野菜でも美味しく食べられることを伝えたり、野菜の多様性からLGBTQなど、“人の多様性”について話したこともある。活動を通じて、子どもたちからは「へんてこな形でも美味しいと分かったから食べてみようと思う」といった声が、保護者や先生からは、「学生だからこそ子どもたちとコミュニケーションが取りやすい」といったポジティブな反響があった。もう一つは組織づくりだ。年間20件以上のイベントを行うBohNoでは、メンバーが学業や他の活動で忙しい中でもBohNoでの活動に時間を費やしてくれるからこそ、「やりたいことを実現できる組織環境作り」を大切にした。定期的な面談や情報共有の工夫を通じて、意見が出しやすい環境を整え、メンバーのエンゲージメント向上に努めた結果、会議への参加率向上など変化を感じることができたという。
大規模組織運営に挑戦した入試広報学生スタッフ
BohNoでの活動と並行して、萩原さんは入試広報学生スタッフとしても活動した。1回生から所属し、2回生の夏からはびわこ・くさつキャンパス(BKC)の代表を務めた。入試広報学生スタッフは、大学のオープンキャンパス運営をメインに、高校生向けのキャンパス案内や地方での大学説明会のお手伝いなど、進路選択をサポートする団体だ。
BKCでは、およそ150人ものメンバーがおり、その代表として、入学センター職員との連携やメンバー間のコミュニケーションを取りまとめる役割を担った。BohNoよりもさらに規模感が大きい点が新しい挑戦だったと振り返る。大学の職員や、異なる学部・学年のメンバーとの連携には、事前の準備が非常に重要だった。また、3回生で代表を務めたため、上回生のメンバーもいる中でどのように協力を仰ぐか、年に数回のイベントしかない中でメンバーのモチベーションをどう高めるかといった点も工夫が必要だった。こうした経験は、規模の大きな組織を動かすという意味において非常に貴重な学びとなった。
「応援文化」醸成にかける情熱 ReLIVE
現在、4回生となった萩原さんが力を入れているのが、スポーツの応援文化を醸成する学生団体「ReLIVE実行委員会」だ。ReLIVE実行委員会は立命館大学のホームゲームイベントを企画運営する団体で、萩原さんは立ち上げメンバーとして2回生の終わり頃から関わっている。立ち上げに関わったきっかけは、誘ってくれた先輩の「応援文化を醸成する」という思いに共感したからだという。立命館大学にはアメリカンフットボール部PANTHERS(パンサーズ)のような有名な体育会系の部活があるにも関わらず、知らない学生が多いこと、高校時代は身近だった“応援”が大学では当たり前でなくなることへの「もったいなさ」を感じていた。大学スポーツを応援することの楽しさや面白さを伝えたいという思いで活動している。
立ち上げ当初は企画課のリーダーとして活動し、現在は総務部という立場で組織の強化に意識を置いている。せっかく始まったReLIVEの取り組みを自分が卒業した後も残していきたいという思いが強く、総務部では、メンバーそれぞれの強みを生かせる組織作りを目指している。ReLIVE実行委員会での活動は、萩原さんにとって行動力とマインドの大きな成長につながった。体育会系の部活と同じくらいの熱量を持つメンバーから刺激を受け、「できるかできないかではなく、やるかやらないかだ」というマインドを学んだという。この前向きなマインドは、就職活動を乗り越える上でも支えになったと語る。
多様な経験が導いた「人」と「成長」の軸、そして将来へ
BohNo、入試広報学生スタッフ、ReLIVE実行委員会と、多様な活動での経験は、萩原さんにとって大きな成長の機会となった。特に、様々な立場でリーダーシップを発揮し、多様なバックグラウンドを持つ人々と関わる中で、人のモチベーションを引き出し、組織として成果を出すことの重要性を強く感じたという。人がポジティブに変わる瞬間を自分の手で作りたい、という思いが、将来のキャリアを選ぶ上での軸となった。大学で食マネジメント学部のマネジメント領域で理論的に学んだことも、活動での実践と結びつき、より深く理解できた。卒業後はエンタメ業界で人材マネジメントの仕事に就く予定だという。食への関心は変わらず持っており、いつかまた食に関わる仕事もできたらと考えている。
立命館大学での4年間を振り返り、大学の環境や人との出会いへの感謝を口にする。職員さんのサポートや校友会未来人材育成奨励金などの奨学金制度は、学生の挑戦を後押ししてくれた。そして何より、食への熱量や前向きなマインドを持つ友人たちとの出会いが、自身の学びや活動をより豊かなものにしてくれたという。困難な状況も「もったいない」や「挑戦の機会」と捉え、ポジティブに進むマインドは、多くの経験を通じて育まれた自身の強みだと感じている。
卒業まで残りわずかとなった今は、「お世話になった人に感謝をする1年間にしたい」と考えている。関西で出会った多くの人への恩返しとして、自身の活動や学びを通じて貢献していきたいと語る。そして、もちろん自身の更なる成長も追求し続ける。食への情熱から始まった彼女の探求と挑戦は、これからも新たな道へと続いていくだろう。