2025年6月1日(日)、立命館大学衣笠キャンパスおよび衣笠周辺エリアにて開催された「衣笠アートヴィレッジ フェスティバル」。衣笠エリア全体がアートに染まったこのイベントは、大学生活のスタートラインに立つ新入生たちが、多様なアート企画「FRESH ART」を創りあげる過程を通じて、学部の垣根を越えて繋がり、大学生活をより豊かなものにするための大きな一歩でもあった。
今回、この祭典の企画・運営を牽引した3人の学生、村田さん、三川さん、土橋さんに、その構想のきっかけから、企画・運営における苦労、そして当日得られたかけがえのない達成感、そして未来へのビジョンについて語ってもらった。

●村田 美月(むらた みつき)さん ※写真中央
立命館大学学友会 全学自治会初年次担当 衣笠キャンパス代表
鹿児島県奄美大島出身。国際関係学部国際関係学科4回生。
中学生時代のテキサス留学をきっかけに国際関係を深く学びたいと志し、キャンパスの写真を見て一番ワクワクした立命館大学に進学。ゼミでは、「国内外のジャーナリズム実践方法」を研究。

●三川 聡文(みかわ さとふみ)さん ※写真左
立命館大学学友会 全学自治会初年次担当
福井県越前市出身。文学部日本文学研究学日本語情報学専攻4回生。
関西の様々な大学を見る中で、キャンパスや学部の充実度から立命館に進学。昔からの“国語好き”で、ゼミでは、「SNSなどで使われる現代の日本語『打ち言葉』の現状と将来」について研究中。

●土橋由愛(どばし ゆうあ)さん ※写真右
立命館大学学友会 全学自治会初年次担当
奈良県奈良市出身。法学部4回生。
幼い頃から抱いていた「警察官になりたい」という目標から、法律を学ぶために立命館大学法学部を選択。歴史文化コースに所属し、日本法に加え、西洋法史や英米法など、多岐にわたる法律を比較して学ぶ。副専攻では朝鮮語も履修。


このイベント「FRESH ART」の核となったのは、彼らが所属する「学友会全学自治会初年次担当」という組織だ。これは、“オリター”や“ピア・サポーターズ”といった、各学部の新入生サポート団体を支援する上部組織である。村田さん、三川さん、土橋さんは、それぞれ異なる学部で「オリター団長」を務めてきた経験を持つ。

-まずは、皆さんがどのような経緯で新入生サポート団体の活動に関わることになったのか、教えてください。

三川「1回生の時、私自身がオリターの先輩たちにたくさん助けてもらってきた経験から、今度は自分が新入生をサポートしてあげたいという気持ちがオリターになったきっかけです。オリターの人たちが楽しそうに活動していたので、私もこういうコミュニティで活動したいと思いましたね」。

村田「私は新しいことにチャレンジするのが好きで、2回生から新たに始められるオリター活動に興味を持ちました。特に、国際関係学部のオリター団は企画が少なく、日本人と外国人学生がそれぞれのコミュニティ中心で交流し、壁を越えた情報共有ができていないと感じていたので、そこを改善したいという思いがありました」。

土橋「私は小学校の頃から企画や運営が好きで、大学でも何かやってみたいと思っていました。オリターの先輩たちがすごくかっこよくて、楽しそうに活動していたので、私も関わりたいと強く思いました」。

2回生時のオリター活動、さらには各学部のオリター団長の経験を経て、3人は全学自治会初年次担当として、“学部を超えた新入生の交流を促進する”という新たな目標を抱くことになった。

新入生のための「アート」な祭り

-どのような経緯でこのイベントを企画することになったのでしょうか?

村田さん(主に模擬店企画を担当)

村田「昨年の11月に、各キャンパスのオリター団の活動報告会があったんです。その時、BKC(びわこ・くさつキャンパス)ではスポーツイベント、OIC(大阪いばらきキャンパス)では地域を巻き込んだイベントが活発に行われていると聞いて。でも、衣笠キャンパスには、サークルに入っていない新入生でも気軽に楽しめるような大規模なイベントが少ないと感じていました。そこで、大学の職員の方から『そういう企画をやってみないか』と声をかけられて、思わず『やりたい!』と言ってしまったのが始まりです(笑)」。

三川「企画がスタートしたのは2024年の2月で、そこから3ヶ月という短い期間で、ゼロからこの『FRESH ART』を作り上げていきました。かなりの忙しさでしたね」。

企画の舞台裏-3ヶ月での「ゼロからの創造」と苦悩

新入生が自ら作り上げるアート企画「FRESH ART」は、アート展示企画、模擬店企画、地図・看板制作などで構成されていた。これらの企画を3ヶ月でゼロから立ち上げることは、並大抵の苦労ではなかった。中心となって動いたのは彼ら3名だが、運営には現オリター団長や元執行部のアドバイザー、そして各学部の現役オリター団からのサポートを含め、総勢17名が関わってくれた。

-企画を進める上で、特に苦労されたことや難しさを感じたことはありますか?

三川さん(主にアート展示企画を担当)

三川「僕は、以前オリター団長を経験した時に、なんでも自分でやってしまうのが反省点でした。だから今回は、なるべく仕事をチームのメンバーに任せることを意識していました。正直、骨の折れる部分もありましたが、最終的にはコアメンバーがしっかり動いてくれて成果につながったと感じています」。

村田「正直うまくいったことばかりではありませんでした。時間が本当にない中で、他学部の後輩やアドバイザーなど、初対面のメンバーにどうやって仕事を振り、どう伝えたら良いか全然わからなくて…。迷った結果、自分でやってしまうという状況になってしまいました。うまくコミュニケーションが取れなかったのは、大きな反省点ですね」。

土橋さん(主にイベント看板・地図製作を担当)

土橋「私も同じく、自分でやってしまいがちなタイプです。そのため、今回はアドバイザーとして元々一緒に活動していた仲間には、『これはもう任せる!』と伝えました。あとは、スケジュール管理は私が担当し、タスクを振って、全体像を把握した情報を共有するようにしていました。看板や地図のような大きな作品は重くて運べず、人手が足りない時には他の担当のメンバーが手伝ってくれて、すごく助かりました」。

彼らは、全体の進捗を共有するための会議を定期的に開催し、問題点について話し合ったり、人手の足りない部分を共有したりと、部門間の連携を図ろうと努力した。しかし、多忙な学生生活の中で、情報共有の徹底やスケジュールの調整は困難を極めたという。

土橋「自分たちも手一杯なので、何を共有したか、何ができていないかを全て把握しきれませんでした。職員さんとの連絡もタイムラグがあったりして、予定通りに進まないこともあり、新入生に迷惑をかけてしまったこともありました」。

三川「でも、各学部の現役オリター団長たちは本当に頼りになりました。人手が足りない時は、彼ら自身はもちろん、他のオリターも何人、何十人と連れてきてくれるので、とても助けられました」。

熱狂と達成感-想像を超えたフェスティバルの成功

そして迎えた6月1日。彼らが3ヶ月かけて作り上げたアートフェスティバルは、衣笠エリア全体で12,000人を超える来場者を記録し、想像以上の盛り上がりを見せた。

三川「当日、忙しすぎてあまり覚えていない部分もありますが、想像以上の成功だったと思います。私たちが考えていた以上に、来場者が多くて本当に驚きました」。

村田「模擬店もすごく賑わっていました。本当に小さな子どもからご年配の方まで、幅広い層の方が来てくださって、圧倒されました」。

模擬店担当だった村田さんは、特にイベント終了後の新入生たちの様子に心を打たれたという。

村田「企画が終わった後、模擬店を担当した新入生たちが、みんな仲良く『打ち上げ行こう!』と盛り上がっている姿を見た時、本当に感動しました。私たちが思い描いていた“新入生のコミュニティ形成”という目標が実現しているのを、目で見て実感できた瞬間でしたね」。

企画を終えて、彼らは「大変だけど、やってよかった」という達成感を強く感じている。来場者が楽しそうに参加している姿、そして新入生たちがイベントを通じて仲間と繋がっていく様子を見ることが、何よりの喜びだった。

それぞれの成長と立命館での学び

この大規模なイベントの企画・運営を通じて、3人はそれぞれ大きな学びと成長を実感した。

三川「達成感はもちろんありますね。想像以上に成功して、何よりも多くの人が来てくれて、模擬店や他の企画もみんな楽しそうにしているのを見られたことが一番の喜びです。それに、企画に参加してくれた新入生たちが実際に仲良くなっているのも間近で見ることができました。また、大学職員の方々と仕事としてメールしたり、大勢の大人と会議する経験は、なかなかできることではありません。想像以上の経験ができて本当に良かったと感じています」。

村田「もちろん達成感はあったのですが、それ以上に『こうしたら良かった』とか、『自分ができていなかったこと』の方がたくさん頭に浮かびました。三川さんと同じようにメールでのやりとりや、色々な人と関わったりすることでの成長感は得られましたが、人への伝え方や要領の良さなど、自分に足りない部分もたくさん見つかりました。この経験があったからこそ、見えてきた課題を今後の成長に繋げていきたいと思っています」。

土橋「準備している1回生たちが、自ら『これやります!』と積極的に声をかけてくれたのがすごく嬉しかったですね。自分のクラスだけでなく、他のクラスにも声をかけて一緒に作業したり交流する姿が見られて、『この企画をやってよかった』と強く思いました。実際にできた看板や地図を見て、職員の方々に『すごかった』と言っていただけたのも嬉しかったですし、『イベント終了後も継続して看板を展示したい』と言ってくださった時は、自分たちの努力が形として評価されたことに喜びを感じました」。

この経験は、彼らが立命館大学で得たかけがえのない学びの一部でもある。

村田「京都で3年強過ごしてみて、東京などの都会に行っていたら感じられなかったであろう、自然や街、そして人と人との距離が近い“風土”を感じました。特に今回の「FRESH ART」では、小さいお子さんからご年配の方まで、大学とは関係ない地域の方々がたくさん来てくださって、京都という街が人との繋がりを大切にしていることを実感しました。立命館大学のオリター団というシステムがあったからこそ、様々な人と関わることができ、とても良い機会だったと感じています」。

土橋「立命館大学は、他の学校よりも学生が大学の自治に深く関わっていると聞いたことがあります。だからこそ、オリターや初年次担当、そして今回のイベント企画のような貴重な経験ができているのかなと思います。また、衣笠キャンパスには下宿生や留学生が多く、地元の人だけでなく、様々な都道府県や海外の友人と深い関係を築けたことも、私が立命館に来て変わったことですね」。

未来へのビジョン-学びを活かして次なる一歩へ

4回生として、彼らは残りの大学生活と卒業後の進路について、それぞれのビジョンを語ってくれた。

三川「残りの大学生活では、車の免許を取ったり、株の勉強をしたりと、社会に出るための準備をしていきたいです。あとは、友人と仲良く過ごしたり、旅行にも行きたいですね。卒業後は名古屋の会社に就職する予定です。そこでは、お客様とのコミュニケーションやチームでの動きを大切にしながら、しっかり自分のキャリアを積んでいきたいと考えています。大学4年間で、様々な人と関わる中で学んだコミュニケーションや自分自身のあり方を、社会に出てもさらに深めていけたらと思っています」。

村田「来年4月からは映像プロダクションに就職し、映画やドラマ、CMなどを制作するプロデューサーを目指します。元々映像作品が好きで漠然と携わりたいと思っていましたが、今回ゼロから企画を立ち上げて、物や人、場所を集めて最後まで作り上げる経験をしたことで、映像の世界でも同じようにゼロから立ち上げに携わりたいと強く実感しました。今回の企画を通して自分の課題も見えてきたので、それを忘れずに、今後もゼロから何かを作り上げる人間になりたいと思っています。大学生活の残りでは、今まであまりできていなかったこと、例えば海外旅行など、この時期にしかできないことをもっと楽しみたいです」。

土橋「残りの大学生活では、村田さんと同じように今までできなかったことにチャレンジしたいです。昔から音楽をやっていましたが、ずっとキーボードだったので、違う楽器にも挑戦してみたいですね。卒業後は警察官になりたいと思っていて、現在試験を受けている途中です。困っている人に寄り添い、安心を届けられる存在になりたい。人のために真剣に向き合い、誰かのために力を尽くせる人であり続けたいと思っています」。

今回の彼らの経験は、単なる学生イベントの成功に留まらず、企画力、リーダーシップ、チームマネジメント、そして何よりも人との繋がりを大切にする姿勢という、社会で生きるための大切なスキルと精神力を育むものとなった。彼らが立命館大学で培った学びと経験は、それぞれの未来において大きな推進力となるだろう。

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