日韓国交正常化60周年記念会議「Cultural Exchange for Peace」を開催

 2026年1月15日(木)、衣笠キャンパス 創思館カンファレンスルームにて、日韓国交正常化60周年を記念した会議「Cultural Exchange for Peace 文化はいかに国際政治を媒介するか―平和と信頼の構築に向けて―」を立命館大学 東アジア平和協力研究センター主催で開催しました。

 本会議は、日韓国交正常化60周年という節目の年に、「文化」が国際政治や外交の中でどのような役割を果たし得るのかを考え、政治や安全保障をめぐる議論が先行しがちな日韓関係において、文化という視点から未来志向の関係を描き直そうとする試みとして実施しました。

【開会挨拶】文化を媒介とした対話

 開会にあたり、中戸祐夫教授は、文化が国際関係における認識や感情の形成に大きな役割を果たしてきたことに触れました。日韓ドラム外交を例に、文化交流が政治に人間的な側面をもたらす可能性を示し、音楽や映画などの文化が若い世代に他国社会への理解を促す入口となる点を指摘しました。
 続いて登壇した元EU大使のミヒャエル・ライテラー客員教授は、欧州における文化外交の実践を紹介しました。文化はステレオタイプを越える「橋」となり、平和や寛容を促すとともに、教育・研究交流や経済にも波及効果をもたらしてきたと指摘しました。欧州では文化を和解の力として公共政策に位置づけてきた経験が、日韓関係にも示唆を与えると言及しました。

中戸祐夫教授の登壇の様子
ミヒャエル ライテラー教授の登壇の様子
司会者

【講演】韓国文化の躍進と、日本の転換点

 作曲家であり文化庁長官の都倉俊一氏による講演では、日本と韓国の音楽・コンテンツ産業の歩みを振り返りながら、韓国文化が世界的な広がりを見せるに至った背景について述べられました。かつては日本市場に追いつこうとしていた韓国が、現在ではグローバル市場で存在感を示している現状について、文化芸術やエンターテインメントを国家戦略として位置づけ、長期的に政策を継続してきた点が大きいと強調されました。一方で、日本は大きな国内市場に支えられてきたがゆえに、国際展開への意識が相対的に弱まりやすかった面があり、COVID-19の影響によってその課題が明確になったと指摘。CBX(カルチャービジネス・トランスフォーメーション)など、今後の転換に向けた取り組みも紹介されました。

都倉俊一長官講演

【講演】日本文化をどう見るか——韓国からの視点

 元韓国文化体育観光部長官のパク・ヤンウ氏による講演では、日本文化に対する韓国からの視点を示されしました。朴氏は、日本社会に見られる公共意識や秩序感、集団としての責任感に触れ、とりわけ「職人気質(shokunin spirit)」を高く評価されました。それは単なる技術力ではなく、仕事に向き合う姿勢や、より良いものを目指し続ける姿勢そのものだと指摘をされました。また、韓国のスピード感や実行力と、日本の緻密な品質管理が組み合わされば、新たな価値が生まれる可能性があるとの見解も示されました。さらに、日本の記録・保存の文化に言及し、アーカイブの蓄積が創造性や知的財産の基盤となっている点、地域ごとの個性を大切にする姿勢が文化と地域の魅力を支えている点が紹介されました。

朴元長官講演

【ディスカッション】文化は「並んで耳を傾ける」関係をつくる

 後半のディスカッションでは、文化協力のあり方について、より踏み込んだ議論が行われました。外交が向かい合って交渉する形式になりがちであるのに対し、音楽などの文化活動は、同じ方向を向き、共通の体験を共有することで対話を生み出すという意見が出されました。文化は政治的な緊張が高まる局面においても継続し得る交流の回路であり、世代を超えて影響を及ぼします。会場からは、東北アジアの若手音楽家によるユースオーケストラ創設といった具体的な提案も出され、文化協力を将来に向けた制度的な取り組みへと発展させる可能性が示唆されました。

ディスカッション登壇者

司会:オ・スヨン・ジェニー氏(アリランTVアナウンサー)
都倉 俊一氏(作曲家 / 文化庁長官)
パク・ヤンウ氏(大韓民国前文化体育観光部長官)
ヤン・ソンウォン教授(延世大学教授/チェリスト/芸術監督)
河井 拓氏(ピアノ三重奏団 葵トリオ マネージャー/公益財団法人 日本室内楽振興財団 プロデューサー)
佐藤 治子教授(大阪大学 大学院国際公共政策研究科 特任教授)
チャダ アスタ准教授 (立命館大学 国際関係学部 准教授)

ディスカッションの様子
ディスカッションの様子
ディスカッションの様子
ディスカッションの様子
ディスカッションの様子
ディスカッションの様子
ディスカッションの様子

 本会議を通じて、文化は外交の代替ではないものの、対話と信頼を支える重要な資源であることが改めて共有されました。欧州の文化外交、日本の産業構造転換、韓国から見た日本文化の強みといった多様な視点が交差する中で、文化を分断の要因ではなく、和解と未来志向の関係構築に活かしていく必要性が確認されました。

集合写真

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