2026.05.14 NEWS

効率の良い希土類イオン発光中心の選択形成で高輝度赤色発光を実現!―次世代マイクロLEDディスプレイに一歩前進―

研究成果のポイント

  • 窒化ガリウム(GaN)※1に希土類元素のユウロピウム(Eu)※2を添加した赤色発光素子において、通常より傾けた結晶面である“半極性面※3”上に結晶成長を行うことで、酸素不純物を含んだ高効率なEu発光中心が自己選択的に形成され、従来比3.6倍以上の高輝度赤色発光が得られることを実証。
  • Eu添加GaN赤色発光素子は、その極めて高い動作安定性から次世代のマイクロLEDディスプレイ用光源として注目される一方で、効率の低い発光中心も多く形成されるという課題を抱えていた。
  • 青・緑色の窒化インジウムガリウム(InGaN)系LEDとモノリシック※4に統合した素子を作製する本成果は、超高解像度かつ広色域・波長安定のフルカラーマイクロLEDディスプレイ実現に向けた重要な技術的進展。

概要

 立命館大学総合科学技術研究機構の藤原康文教授と大阪大学大学院工学研究科の市川修平准教授、博士後期課程の竹尾敦志さんらの研究グループが協力し、半極性(2021)GaN上にEu添加GaN薄膜を成長することで、極めて発光効率の高いEu発光中心が優先的に形成されることを明らかにしました。これにより、従来の極性(0001)GaNを用いた場合と比較して、赤色発光強度が3.6倍以上に増大することが実証されました。

図1 図1 赤色発光を呈すEu添加GaNは、半極性面GaN上への成膜によりさらなる高輝度化が可能。

本研究成果は、2026年3月19日(木)に米国科学誌「Applied Physics Letters」(オンライン)に掲載されました。

詳細は、以下のプレスリリースをご覧ください。
https://www.ritsumei.ac.jp/profile/pressrelease_detail/?id=1303

藤原教授のコメント

 私たちの身の回りは、半導体が生み出すさまざまな色の光で満ち溢れています。これらの光は色こそ異なるものの、いずれも同じ発光原理に基づいています。しかし、その原理に起因する避けることのできない課題が存在します。私たちは、半導体と希土類蛍光体を組み合わせたハイブリッド材料であるEu添加GaNを用いることで、従来とは異なる原理で動作する赤色発光ダイオード(LED)を実現し、これまでの課題を解決しました。本研究では、Eu添加GaN薄膜の作製に用いるサファイア基板の面方位を、従来の(0001)面から(20-21)面へ変更することで、Eu発光強度が飛躍的に増大することを見出しました。本成果は、AR/VR向け次世代小型・超高精細マイクロLEDディスプレイの実現に向け、Eu添加GaN赤色LEDの社会実装を加速するものとして、大きな注目を集めています。

用語説明

  • ※1 窒化ガリウム(GaN)
    窒化ガリウム系のLEDや半導体レーザーなど、現代の省エネ・高輝度な光デバイスを根幹から支える半導体材料です。とくに窒化インジウムガリウムは青色~緑色領域で高い発光効率を示すことで知られている一方で、赤色領域の高効率化には未だ課題がある現状です。
  • ※2 ユウロピウム(Eu)
    希土類元素の一種であり、3価のEuイオンは、4f内殻遷移に伴う赤色発光(波長約620nm)を示すことが知られています。GaN結晶中に添加することで、電流駆動可能な赤色LEDとしての応用が可能となります。
  • ※3 半極性面
    GaN系半導体がとるウルツ鉱型結晶構造において、主軸の[0001]方向に対して、斜めの角度で交わる結晶面のことを指します。半極性面上のGaN成長時には、表面の結晶構造が異なることで、不純物取り込み様式が変化します。また、InGaN LEDにおいても、従来の極性面で課題となる内部電界を低減することができ、発光効率や波長安定性が向上することでも知られています。
  • ※4 モノリシック
    フルカラーLEDのモノリシック集積とは、赤・緑・青(RGB)の3色のLEDを、単一の基板上に一体(モノリシック)として作り込む技術のこと指します。従来は、個別に製造した赤・緑・青のチップを一つずつ基板に並べる「ピック&プレイス」方式が一般的でした。これに対しモノリシック集積では、結晶成長とプロセス技術により、同一基板上にフルカラーLEDを一度に集積できるため、製造工程の大幅な効率化、デバイスの小型化・高精細化を可能にする次世代技術として注目されています。

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